第一章 第33話 魔獣【黒コンドル】と【白飛鳥】狩り 【副団長”カイル”】視点
◇◇◇【副団長”カイル”】視点◇◇◇
ヴァンが内の拠点に来てから、僅か3日しか経っていないが、明らかに俺達の食生活及び生活習慣が激変したんだ!
何と言っても、今迄は基本焼くしか無かった肉料理を、挽き肉にしたり漬けダレに浸したり、保存方法のやり方など、食べ方を改良してくれたのだ!
そして、画期的なのが【風呂】だ!
かなり前から王侯貴族や豪商達の間では、風呂と云う風習が流行っているとは噂で聞いていたが、俺等が入る事が出来るなんて思いもしなかった!
団長達とも話し合ってるが、ヴァン達にはかなりの秘密が有ると思っている。
例えば、触れ込み通りヴァンが商人で、彼女等が護衛人だとしても、一介の商人にしては武術の腕が尋常では無いし、料理人顔負けの技術に風呂作りの手際の良さといい、とても商売人の範疇に収まる器じゃねえ!
だが、そんな技術面を抜きにしても、ヴァンと話していると俺達は凄く心が温まるんだ。
何だか、ヴァンが心から俺達との会話が楽しくて、なるべく皆で幸せになろうと心底思っているのが、溢れ出て来る様に俺達に伝わって来るんだ!
お陰で、俺達とヴァン達は昔からの友達の様に、居るだけで気分が落ち着く存在になり始めている。
そんな事を考えながら、樹海【ヘルムの森林】に着いたので、早速、例の【簡易型魔力探知レーダー】と【強化型魔力探知レーダー】を起動させる。
ヴァンが此処2日間の魔獣狩りで、幾つかの魔力反応の確認が出来たので、ゴブリンやコボルトと食肉となったグレイト・ボア、そしてアングリー・バッファローなどの個別反応を捉える事が出来る様になっている。
全く便利な魔導具だぜ! 当然俺達傭兵とヴァン達の個別マーカーも判別出来る様になっていて、誰がどの場所に居るかも判別可能になっている。
お陰でかなり広範囲に散っても、誰が何処に居るかを全員が判るし、個別マーカーを強く握ると緊急事態と云う事になっているので、直ぐに集結する事を予め取り決めている。
なので、面単位での探知網で森林を進んでいると、空中で何かが争っている反応が強化型魔力探知レーダーで判別出来た。
俺は、直ぐ様個別マーカーを握りしめて、全員を呼び集めた。
そして、全員で空中で相争う魔獣を、視認する。
それは、鳥型魔獣でも大物の【黒コンドル】と【白飛鳥】の2羽と、視認できた。
恐らくは、双方の縄張り争いかなにかなのだろうが、この2羽は大きさが半端じゃ無くて、双方翼長5メートルを越えていて、簡単に人間をその大きな鉤爪で掴み上げて、餌にされてしまうので討伐対象として、かなりの額がギルドで提示されている。
願ってもない獲物に、傭兵達も盛り上がってきたので、早速、大型の弓矢を用意して俺が引く事になった。
ギリギリと大きく引き絞って、大型の弓から槍の様な大きさの矢を引き放ち、【黒コンドル】の胴体に突き刺さる!
しかし、翼長5メートルの大きさであるが故に、その程度では怪我を負っても止めにはならないので、怒った黒コンドルは此方に向かって来て、その翼の羽根を利用した攻撃を俺達に向けて放って来た!
「【羽根吹雪】!」
そう部下の誰かが呟くのを聞きつつ、俺達は準備していた大盾で身を隠す。
その様子を見た黒コンドルは、効果が無い事に気付いたのだろう、より大きく羽ばたいて此方に向かって来て、急降下攻撃して来て、その大きな鉤爪で襲いかかって来る!
(良し! 予定通りだ!)
元々、上空に居座られてたら、此方としては有効な攻撃手段は、遠距離魔法しか無いのだが、森林内では水撃魔法くらいしか許されていないので、何処かの空き地に誘導でもしないと、強力な遠距離攻撃は行えない。
だから、危険ではあるが黒コンドルから接近攻撃してくれるのは、非常に有り難い。
「良し、皆は槍で攻撃! 俺は【歩兵用長柄武器】で戦う!」
そう宣言して、全員が支援魔法を自身に施し、強化状態となる。
黒コンドルが一人の傭兵に狙いを定めて、大きな鉤爪で襲いかかって来た瞬間、周囲に居た傭兵仲間は、鋭く槍を突き出して胴体を貫き、俺は歩兵用長柄武器を大きく振りかざして、その首に叩きつける!
「グギャギャギャガヤーーー!」
必死の叫びを上げて黒コンドルは藻掻いていたが、俺は何度も歩兵用長柄武器を首に叩きつけて、斬り落とす事に成功した。
「「やったー!!」」
との仲間達からの歓声を受けながら、もう一方の【白飛鳥】と相対していたヴァン達に目を向けると、丁度倒したタイミングの様で、俺と同じく白飛鳥の首をヴァンが斬り落とした様だ。
「やったな!」
「応!」
俺とヴァンは、ハイタッチをし合って、お互いの健闘を称え合う。
この辺の阿吽の呼吸が、俺は凄く気持ちが良い。
理屈では無く、気が合うのは仲間として遇するには、重要なポイントだと思う・・・。
大型の荷馬車2台に、黒コンドルと白飛鳥を翼を折りたたんで載せると、俺とヴァンは笑いながら帰還の途についたのだった。