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第一章 第31話 冒険者試験②

 さて、準備していた魔法力を持つと見せかける、欺瞞工作が上手く行くかの実践である。

 予め準備して置いた、ゴブリンから回収した魔石を、インナースーツに仕込んでおいて、最低限の魔力を持つと見せかける為に、タイミングを合わせて魔石から魔力を引き出す事で、俺の魔力と偽る事を目的としている。


 「さあ、その水晶玉に手を乗せて下さい」


 と審査官の女性に言われたので、左手を乗せてインナースーツ内の魔石から、タイミングを測って魔力を引き出した。

 すると、審査官の女性は暫く水晶玉の光りを見つめていたが、ある程度納得した様で。


 「はい、ありがとうございました、訓練場に向かって下さい」


 と声を掛けられたので、促されるまま訓練場に向かった・・・。



◆◆◆◆◆



 「今回の受験者は、期待薄いわね」


 審査官役の同僚の呟きに、私は「どうしたの?」と尋ねると、顔を曇らせながら答えてくれたの。


 「いえね、今の魔力審査した男の人が、先程、審査した女性3人と一緒のパーティーだと言うから、期待したんだけど、魔力量があまりにもすくなかったのよ、丁度ゴブリン程度の魔力量くらいしか・・・。

 なんといっても最近は、王都に有望な冒険者が尽く行ってしまうから、新しく強い冒険者が出てくれる事を願ってたんだけど、身体つきは凄いのに魔力量が少ないなんて、見掛け倒しもいいところだわ!」


 と、やや投げやりな感想を述べて来たの。

 私から見ても、先程の審査した筋骨隆々の身体つきだった彼には、かなり期待出来ると思ったのに、ガッカリだわ。

 冒険者という職業を目指す者は、どうやっても魔力量が多い人物の方が、筋力量がある人物の方が、強いのは定説だわ。

 何故なら、支援魔法の一つである身体強化を、自分に掛けるとレベル1以上差がある場合、その時点でかなりの差が生じてしまう、魔力量が多ければ多い程、その持続時間に違いがある為に、その魔力量が少ないと勝負にすらならないからなの。


 「じゃあ、最低限の【鉄クラス】用の試験内容にしてもらう様に指示してくるわ」


 そういう風に同僚と判断し、私は訓練場の講師に説明する為に、部屋を出ていった・・・。



◆◆◆◆◆



 訓練場に入ると、俺に講師と思われる男性が、訓練用の剣を渡して来たので受け取ると、素振りをしてみろと言われたので、素直に従う。


 ブオン! ピュン!


 とそこそこの速度で剣を振ると、「フム・・・」と言って講師は頷くと、係員に命じて用意されていた【木人形ウッドゴーレム】がやって来た。


 「ヴァンと言ったかな? 剣の素振りは中々のものだったので、実戦をやって貰おうか!」


 そう言うと、講師は木人形ウッドゴーレムを操る【ゴーレム使い】に、指示を出した。


 「下級クラスのレベルで戦わせろ!」


 その言葉を受けたゴーレム使いは、木人形ウッドゴーレムに木の棒を取り付けさせて、俺に対峙させた。


 (フム、なる程な・・・、変に人間が相手するよりもゴーレムの方が、いざ壊れたとしても命が元々無いから、被害は魔力を消耗する程度で済む、何とも合理的だな・・・)


 そう感心しながら木人形ウッドゴーレムの様子を見ていると、意外と理に適った構えをして来た。


 そして、「始め!」の合図と共に、試験が始まる・・・。


 木人形ウッドゴーレムは、何の衒いもなく俺との間を詰めてきて、木の棒を突き出して来た。


 その木の棒を中段の構えの剣で逸らして、剣を木人形ウッドゴーレムの頭に打ち下ろす!


 ガッ!


 と鈍い音が響き、簡単に木人形ウッドゴーレムは倒れ伏す。

 その様子を見て講師は、木人形ウッドゴーレムを操る【ゴーレム使い】に、新たな指示を出す。


 「それでは、中級クラスに引き上げろ!」


 その命令を受諾したらしい木人形ウッドゴーレムは、人間では無い為に頭が割れていてもアッサリと立ち上がる。

 そして取り付けられた木の棒を、頭上でグルグルと回転させ始めた。


 ブオオオオオオオーー! と唸る音を立てて、木の棒は回転力を上げて行く。

 その状態のまま、木人形ウッドゴーレムは俺に向かって来る。


 それに対して俺は剣を、木の棒の回転に合わせて回転させて、木の棒を絡め取り上空に跳ね飛ばす!


 「ホウ!」


 と感心した様子を見せて、講師は、木人形ウッドゴーレムを操る【ゴーレム使い】に、最終的な指示を出す。

 

 「それでは、上級クラスに引き上げろ!」


 その命令を受諾したらしい木人形ウッドゴーレムは、今度は木の棒を取り付け直すと、構え直して素早い動きで、木の棒の突きを繰り返して来た!


 ヒュヒュヒュッ!


 木人形ウッドゴーレムの木の棒による素早い突きは、変幻自在に俺の急所を狙って来たが、俺はその尽くを躱す。


 そして、木人形ウッドゴーレムの隙を突いて、俺は木人形ウッドゴーレムの喉元に剣を突き刺す。


 「止め!」


 との講師の言葉で、俺と木人形ウッドゴーレムは動きを止めて、最初の対峙した場所に戻り、俺は講師に向かって礼をする。


 「うむ、試験は全て終了だ、後は控え室に戻り、冒険者クラスの交付と総評を受けろ!」


 との言葉を受けて、俺は控え室に向かう。


 結局、控え室で受けた冒険者クラスの交付と総評は、アンナとミレイは【銀クラス】と判定され、アンジーはそれなりに実力を出したから【金クラス】に判定された。

 そして俺は、最低クラスの【鉄クラス】に判定された。

 ついでに俺だけ、総評で魔力の量を上げる訓練を上げる様にと、訓練方法の資料を貰った。


 まあ、4人とも冒険者ギルドに登録出来たので、クラスはどうでも良いのだけど、やはり此の世界では魔力をそれなりに持たなければ、評価されない事がはっきりと判った。

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