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第一章 第29話 魔獣狩り③

 「本当に旨い料理だったよヴァン殿! 是非、あの料理をまた味わいたいので、レシピを教えてくれないか?」


 「当然だよラング殿、俺がこんな風に料理を自由に出来たのも、場所と獲物を狩れる立場を用意してくれた傭兵団【鋼の剣】のお陰なんだから!」


 「有り難い言葉だよ、それと魔獣狩りの様子も聞いたけど、何だか面白い魔導具を使用させてくれた様で、是非、ヴァン殿からも詳しく聞きたいな」


 「構わないよ、というのも傭兵団【鋼の剣】には、【簡易型魔力探知レーダー】を幾つかプレゼントするので、詳しく説明してより良い使い方を模索して貰いたいと考えているんだ」


 「そうだったのか、ならば傭兵全員が居る此の場で、説明を受けよう!」


 そうラング殿が宣言したので、食事の後は傭兵を残して、奥様方と子供たちはそれぞれの部屋に帰らせて、俺が講師の立場で簡易型魔力探知レーダーの説明をした。


 「・・・という訳で、この簡易型魔力探知レーダーは、500メートル程の範囲を網羅していて、ある一定以上の魔力を持つ生命体を感知して、此の【液晶画面】に映し出す。

 この探知装置はある拾い物から着想を得た物で、俺と懇意にしている工場が改良した物なんだ。

 基礎はドワーフ達が使用している、坑道の酸素チェック用の魔導具に、かつて【星人ほしびと】が齎した技術の【液晶画面】を組み合わせ、酸素では無く魔力を感知出来る様にしたものだ。

 俺にとって今回の商用のメイン商材として、取引先に独占販売する予定だったのだが、取引先がどうも連絡がつかないので、事実上、商売は成り立たない。

 なので、無駄にする訳には行かないので、有効活用してくれれば幸いだよ」


 と、殆どが嘘の説明だが、所々に事実を混ぜて入るので、どうやら納得してくれた様だ。


 「とすると、此の魔導具はヴァンのオリジナル商品なんだな?」


 「そうだよ、だから気にしないで、使用してくれ!」


 そういうやり取りをして、明日から別の傭兵達と共に魔獣狩りに行き、簡易型魔力探知レーダーの使い心地を試して貰う事になった。



◆◆◆◆◆◆



 朝食は、昨日の挽き肉で作り置きしていた【ハンバーグ】をパンに挟んで、レタスと昨日買っておいた【ピクルス】を付け合わせにして、【ハンバーガー】を作り出して、傭兵達と家族の分も仲間の女性陣と共に用意していると、奥様方が参加して来たので、昨夜と同じく料理法をコツと共に教えて上げた。

 その上で、昨日も出したジャガイモを煮潰して作ったマッシュポテト、そして亜空間から野菜ジュースを取り出す。

 やがて、子どもたちと親の傭兵達が起き出して来て、挨拶しながら食堂に入ってきて、皿を並べて【ハンバーガー】などを取り分ける。

 皆、何やらワクワクした様子で席に着き、最後にラング殿がやって来たので、俺達を含んだ全員で挨拶を交わす。


 「おはよう!」

 

 「「「おはようございます!」」」


 そしてラング殿が、食卓に並べられた【ハンバーガー】と野菜ジュース、そしてマッシュポテトを見て、


 「朝から、昨日の旨い肉料理のアレンジ版が食べれるとは嬉しいね~!」


 とラング殿の言葉に、傭兵達とその家族達が頷いて応じた。


 「そんなに喜んでくれると、作った甲斐があるな。

 だけどこれはかなり手を抜いた料理法だから、奥様方は直ぐに覚えてくれたから、これからは何時でも作ってくれるさ」


 「それは有り難いな! 他のレシピも教えてくれるそうだから、母ちゃん達は良く学んでくれよ!」


 「勿論よ貴方! 期待しててね!」


 そう応じたラング殿の奥方は、力瘤を腕で作りながら、笑顔で旦那のラング殿に返事をしている。

 

 (・・・嗚呼、此れが家族の会話なのだろうな・・・、此れこそが俺の求めている、人同士の関わり合いでのみ得られる幸せの姿か・・・)


 俺はその姿を見ながら、母艦のライブラリーでのみ見る事が出来る母の遺言を思い出して、温かい気持ちになった・・・。


 朝食を終えて、昨日と同じく樹海【ヘルムの森林】に向かうのだが、今回は昨日と違いゲイル殿達5人では無く、ラング殿の率いる部隊5人である。


 なので、ラング殿に【強化型魔力探知レーダー】を貸して、部下の方々には簡易型魔力探知レーダーを持って貰い、使い心地を試して貰う事にした。


 当初は、慣れないらしくて、どういうフォーメーションを組むべきか、悩んでいる様だったが、やがて使い方が判るとかなり広範囲に散って、獲物の魔獣を探し始めた。


 やはり、魔力での足切りがあるので、弱い魔獣だと一人の傭兵でも予め来る事が判っていれば、対処は容易だ・・・。


 1時間程の間に、ゴブリンとコボルトを傭兵達は、個人で簡単に討伐していたが、ラング殿の持つ強化型魔力探知レーダーに大きな魔力反応があった。


 その魔力反応を、他の面々の持つ簡易型魔力探知レーダーも拾い、皆で対応する為に全員集結し、フォーメーションを組む。

 その際、俺達もフォーメーションに組み込まれ、俺達を中心にして外縁部を傭兵が担う。


 やがて、見えて来たのは、外見が牛に似た【アングリー・バッファロー】、それも2頭の3m程度の巨大な奴等だ!


 なので、先ずは防御を主体な支援魔法でフォーメーションを組み直し、傭兵達と俺達で分かれて対処することにする。

 何故なら、その方が連係プレーをし易いとラング殿は判断し、どちらかが先に倒すか行動不能に魔獣を制したら、もう一方のフォローに入るとする方針にしたからだ。


 「「ブロロロオオォォーー!」」


 とアングリー・バッファローは吠え猛り、此方に2方向から突進してくる。


 (・・・昨日のイノシシと同じく、此の牛も生態系的にも、人類にとってはあまり好ましい存在じゃないらしいから、気兼ねなく討伐出来るな・・・)


 そう思いながら、支援魔法をアンジー達に俺以外の仲間に掛けさせる事を頼み、俺自身は故郷【アース】の武術の一つを試す事を仲間に宣言する。


 「皆! 申し訳無いが俺だけに攻撃させてくれ、試してみたい技があるんだ!」


 アンジーは、その言葉に俺を信じているらしく、頼もしそうに頷いたが、アンナとミレイの顔はやや引き攣っていたが、アンジーの様子を見て押し黙っている。


 1頭のアングリー・バッファローが、俺に向かって突進してくる中、俺は思わず喜悦を覚えて笑い出す!


 「嬉しいな! 前の【恐獣惑星】では、最終的に俺の姿を見るだけで、【ドラグサウルス】も逃げ出すので戦えなくなってしまい、稽古相手が居なくて本当に困ったからな!

 本当に有り難いぜ!」


 そう喋りながら、真正面でアングリー・バッファローを待ち構え、右拳を引いてから一気に繰り出す!


 【正拳突き】


 フェイントなど一切なしの真っ向勝負の拳は、完全にアングリー・バッファローの頭蓋骨を陥没させた!

 その、あまりにもわかり易い勝負を見て、アンジーは”当然”といった様子で頷き、アンナとミレイは呆れた顔をしている。


 此方の方が早く勝負が着いたので、俺達はラング達のフォローに入る事にする。

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