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第一章 第28話 グレイト・ボアの解体と調理 【アンジェリカ・オリュンピアス】視点

 ◇◇◇【アンジェリカ・オリュンピアス】視点◇◇◇


 傭兵団【鋼の剣】の拠点ホームに戻り、私達は先に運んで貰っていたグレイト・ボアの解体現場に向かったの。

 其処は、直ぐに血を洗い流せる様に、小川が流れている側に設けられた場所で、大きな獲物も吊るせる様な巨大な木材で組まれた機材が有り、今は其処に血抜きをする為にグレイト・ボアが吊るされている・・・。

 

 (・・・やはり、こうして吊るされて見ると、かなり大きいわね・・・)


 普通のグレイト・ボアは、大人でも2メートルから大きくても3メートル程だが、こいつは3メートル50センチは優に越えている。

 こんな大物を、何でも無い様に一度の槍の投擲で仕留めるヴァンの凄さは、本当に凄まじいものだわ。

 そうして私とアンナそしてミレイが、吊るされたグレイト・ボアを眺めていると、団長であるラング殿の子供達が血抜きで垂れて来る血を受ける木桶を、近くの小川に捨てに行く。

 その後を、妹のリンナとリンネが付いて行き、血抜きする意味を自分より幼い子供達から教えて貰っている。

 考えてみると、妹達は食材となる動物の処理方法など、経験した事は無いだろうから、これからは生きていく上で学んでおく必要が有るだろうな・・・。

 そう思い、私達も率先して手伝う事にする。

 妹達と一緒に、小川で木桶に付いた血糊を洗い、乾かす為に倉庫の壁に掛けて、元の解体現場に戻る。

 すると、子供達は手慣れた感じで、別の木桶を持って来ていて、奥様方の指示に従っている。

 血抜きが終わりいざ解体となると、傭兵の方々が大きな刃物を持ち出して、グレイト・ボアの四肢を切り落とし、肝心の魔石を取り除くと、素早く肉片と内蔵そして骨と皮を引き剥がして行き、見事に全ての部位を食材と売り捌く為の部位に分けて行く・・・。


 「流石ね! 慣れたものだわ!」


 傭兵達とその家族の見事な連係プレーに感嘆していると、拠点ホームの表門からヴァンが諸々の食材を積んだ荷馬車で帰ってきた。

 そのタイミングで団長達も解体現場に来て、ヴァンが買い込んだらしい諸々の食材を積んだ荷馬車を見て、


 「ヴァン殿! 又、えらく買い込んだな、此の大量の香辛料や野菜類は、何に使うんだい?」


 「嗚呼、ラング殿の奥方から許可を貰い、厨房の食材と香辛料を見せて戴いたんだが、俺の故郷で使う香辛料や薬味が無かったんでな。

 帰還途中で見かけた商店に出向き、使える食材と香辛料を買い込んだんだよ!」


 と、ヴァンは答えて、厨房の裏口に食材と香辛料を搬入して行く・・・。

 興味が有るので、私達も厨房に向かいヴァンのアシスタントを買ってでたの。


 「それで、ヴァン、私達は何をすれば良いの?」


 「そうだな、先ずは目の前に有る、”にんにく”、”人参”、”ジャガイモ”の皮むきをしてくれないか?」


 「判ったわ、皮むきね!」


 そう応じて、妹達を含めて5人で野菜の皮むきに挑戦する。

 最初は私と妹達は、慣れていないので手間取ったが、アンナとミレイの指導で段々と手際良く皮むき出来る様になり、意外と直ぐに終わらせる事が出来たわ。


 その間に、ヴァンは奥様方が見守る中、徐ろに亜空間から何かの機材を取り出して、解体したグレイト・ボアの肉の塊を上部に入れて、横の穴の下に金属製の大釜を置いた。

 機材の横に付いているハンドルをゆっくりと回すと、肉が多数の穴から押し出されて来た。


 「ヴァン! それは何をしているの?」


 「此れは、肉を挽いているんだよ!

 奥様方に聞くと、日頃の肉料理は基本、焼いてステーキにするか、塩漬け肉として保存してた物を、スープに入れて食べるそうじゃないか。

 なら、別の国で食べられる料理法で食べるのも、変わってて良いと思うんだ!」


 そう言うと、大釜一杯にグレイト・ボアの肉を挽いて、次に奥様方が作ってくれていた玉ねぎの磨り潰した物と、塩、砂糖、粗びき黒こしょうを混ぜて行く・・・。

 そしてグレイト・ボアの内蔵である腸を湯掻いた物に、その挽いた肉を詰めて行き、一定の長さでクルンと回して節を作る。


 そしてまだかなりの量がある大釜内の挽いた肉に、ヴァンは大量の乾燥しているパンを粉状にして混ぜ込んだわ。

 それを丁度、手の大きさ程にした物を、真ん中を凹ませる様にしてシートの上に寝かせる。


 一通り肉の作業を終えると、次にグレイト・ボアの骨を熱湯で湯掻いて行き、何本かの骨を折って髄液を出してボウルに溜めたの。


 その初めて見る料理工程を見ながら、私と妹達以外の横顔を覗くと、やはり珍しいらしく当惑した表情でヴァンのやり方を見ている。


 (・・・やはりヴァンは、此の世界に存在しない料理法を実践しているのね・・・)


 やがてヴァンは、グレイト・ボアの骨を熱湯で湯掻いていた物から、骨を取って丁寧にアク抜きすると、私達が皮むきして水に浸けていた野菜を、一口サイズに切って鍋に放り込んだわ。


 そしてコトコトと弱火で煮ている間に、大口のフライパンにグレイト・ボアのラードを少し入れて、油が満遍なく行き渡った段階で、先程作った挽き肉の腸詰めを、節部分で切って焼き始めたの。


 すると、厨房中に何とも美味しそうな匂いが立ち込めて来て、「ぐぅ~」と幾人かのお腹の音が聞こえて来たわ。

 そして程よく焼けた挽き肉の腸詰めを、大皿に盛って行き、次に手のサイズにした挽き肉の塊を、大口のフライパンで焼き始めたの。

 此れも凄く美味しそうな匂いが、厨房に充満し始めて、先程の匂いに釣られた子供たちはヨダレを垂らしそうになっているわ。

 焼き上がった挽き肉の塊を、又も、別の大皿に盛り、野菜を煮込んだスープを、食堂に持っていく。

 最後に髄液を溜めたボウルに、フライパンに残った肉汁を入れて、よく混ぜてボウル毎食堂に運んだの。

 食堂では、団長を始めとした傭兵達とその家族、そして私以外の仲間が席に着いて、今か今かとヴァンと私を待っていたわ。


 「待たせた様だね、みんなお腹を空かせている様だし、早速食べてみてくれないか?」


 その言葉を聞いて、待ちきれなかった子供達が、早速、挽き肉の腸詰めと挽き肉の塊を、大皿から自分達の小皿に取り、頬張る様にかぶりつく!

 次の瞬間、子供たちは、


 「「「美味しい!!!」」」


 と絶叫して、次々とお替りして行ったわ。

 其の様子に大人達も、我先に各々の更に食材を取り、子供顔負けにかぶりつく!


 すると、絶叫こそしなかったが、歓声を上げた!


 「旨い! こいつは今迄食べた事の無い旨さだ!」


 ラング殿が感想を述べている間も、次々と全員が大皿から食材を取り、ある程度食欲の収まった者達が、深皿にスープを入れて、スプーンで口に運び、その美味しさに目を丸くしている・・・。


 私とヴァンも、皆が落ち着いた頃にそれぞれの料理を食べ始めたわ。


 (美味しい!)


 言葉にこそ出さなかったけど、今迄食べて来た如何なる料理よりも、このヴァンが作ってくれた料理は美味しすぎる!

 

 (【星人ほしびと】とは、此処まで万能の存在なのか!)


 と目を見張る思いで、ヴァンの表情を改めて窺うと、自分の料理の味に満足したのか、非常にご満悦な様子だ。

 私は、些かはしたないかも知れないけど、此の美味しすぎる料理に感動してしまい、3回もお替りをしてしまったわ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おお~、調理しましたね!まぁ、どこぞの先生は、凄すぎましたけど、、(笑)
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