第一章 第24話 傭兵団【鋼の剣】との契約
朝日が差し込んで来て俺の顔を照らして来て、俺はゆっくりと目を覚まして周囲を見渡し、自分がいつもの自分の部屋では無く、大部屋で男たちと雑魚寝している事に気付く・・・。
段々と昨日の記憶が蘇り、宴会の後も男共で盛り上がっていた事を思い出す。
(・・・昨日は楽しかったな・・・)
そう思いながら伸びをして起き出すと、周りの連中もぞろぞろと起き出して来て、
「おはよう!」
「おはようございます!」
「昨日は楽しかったな!」
「昨日の宴会は盛り上がったぜ!」
と挨拶と共に昨日の話しをしながら、全員で洗面所に向かい、俺は廊下を進んで玄関で靴を履き直して、外に出ると軽くストレッチをこなす。
そして、ストレッチで解れた身体でグラウンドに出て、軽くランニングを始めた。
この俺の行動が珍しかったのか、俺と同じく軽く屈伸運動をした傭兵数人が、俺に並んでランニングをし始めた。
やがて起き出して来た、アンジーとアンナにリンネ、そしてラング達とその子供達が同じ様にランニングし始め、一通り身体を温ませて水に濡らしたタオルで身体を拭う。
同じくタオルで身体を拭っているラングが、俺に質問して来た。
「ヴァンが面白い運動をしていると言うので、朝食の用意をしている女共以外の全員で参加してみたんだが、朝日が登ってすぐの早朝に、軽く運動するのは気持ちが良いな!
ヴァン! お前程の男がやる行動だから、何か意味が有るんだろう?」
「まあな、一日の始まりに身体をほぐして、軽く筋肉を動かすと健康に良いし、何よりも気持ちが良いからな、どうだいラングも運動してみて、昨日の酒が抜けて気分が爽快になっただろう?」
「確かにな、酒を飲みすぎた翌日は大抵、一日身体がダルいもんだが、今は爽快な気分だ!
これからは毎日やってみよう! なんたって俺達傭兵は身体が資本だからな! 健康でいないと稼げねえからな!」
その豪快な宣言に、周りにいた傭兵たちも賛成の声を上げる。
そしてそのまま全員で、昨日の宴会場であった食堂に向かい、昨日俺が提供した野菜類で作られたサラダと、パン類をメインにした朝食を頂くと、ラング達から誘われて話しをする事になった。
建物内の応接室に向かい、俺達とラング達は向かい合う。
「結局、昨日は宴会がメインになっちまって、話が出来なかったが、実はヴァンにお願いがあって昨日はバーに誘ったんだよ、是非聞いて貰えるかい?」
「判ったよ、その話しというのを聞かせてくれ」
「ありがとう、ヴァン。
実はな、昨日も少し触れたと思うが、俺達が出会う直前にギルドに向かい、大々的な傭兵募集の広告を出して貰いにギルドに依頼したんだよ。
ヴァンも気付いたと思うが、現在の傭兵団【鋼の剣】の人員は35人しか居ないんだよ。
理由は、大公国の首都で大量の傭兵募集があって、それに応じた奴等が鋼の剣から大量に足抜けしちまったんだよ。
それも仕方無いと云えば仕方無い話で、相手側は2倍の給与を提示した上に、手柄を上げれば正式な兵士への登用も条件に上げてるんだよ。
だから、応じた奴等の気持ちもよく判るし、足抜け代金も払ってくれたんで問題は無いんだが、此方としちゃあ傭兵稼業が出来なくなっちまう。
それで、ギルドに広告を打って貰うんだが、そんな折にヴァンが不法者を叩きのめす瞬間に立ち会ったんだ。
この男なら、傭兵にぴったりだと感じて話してみようと考えたんだが、会ってみて色々と接して行くと、あんたはそんなレベルの人間じゃないと思ったが、この出会いは大切にしたいと考えて、此処に居る副団長のカイルと参謀のミケルと相談し、是非、賓客待遇で暫くの間滞在してくれないだろうか?
出来るだけの待遇は保証するし、何時でも用事があれば出て行ってもらっても構わない、この条件ではどうだろう?」
「うーん、済まないが、皆と相談して決めたいのだが、何処か相談する部屋を借りれるだろうか?」
「そりゃあ、当然だな、下の階の隅の部屋が空いているから、是非使用してくれ!」
「ありがとう、それではアンジーとアンナにミレイ! 行こうか!」
「判ったわ、ヴァン!」
と返事を貰い、ラングの部下に案内されて、相談部屋へ向かう。
扉を閉めて、周りに盗聴している者が無いのを確認し、俺達は相談を始める・・・。
「中々、興味深い提案だったと思う・・・、アンジーはどう思う?」
「そうね、今の私達は王国に追われて寄る辺のない逃亡者に過ぎないわ。
こんな状態では、祖父の元に行き助けて貰ったとしても、結局、国同士の諍いの材料にされたり、利用されるのが落ちだわ。
それよりも、ヴァンと共に仕事に就いて、自分で独り立ち出来る地盤を固めたいわ!」
その返事に俺は頷いて、アンナとミレイにも聞いてみた。
「そうですね、現在の我々は公国と切り離されてしまい、孤立無援の状態ですし、何れ資金も尽きてしまいますから、なるべく早く仕事を見つける必要はありましたが、元々軍人の私達にとって、傭兵という仕事は選択肢として良いかも知れません」
「私もそう思います。
更に言うと、傭兵団の伝手が有るのは、今後を考えると悪く無いと思います」
と返事してくれたので、それに俺も同意して意見を取りまとめて、応接室に向かう。
そのまま待機してくれていた、ラング達に返答する。
「待たせて済まなかったなラング、俺達は暫くの間、傭兵団【鋼の剣】に所属させて貰いたいので、提案通りの内容で是非契約させて貰おう!」
「おお、こんなにすんなり契約出来るとは、大変有り難い!
それじゃあ、正式な書面で契約するので、内容を確認してサインしてくれ!」
「了解だ、書類内容を確認させてくれ」
そして、俺達と傭兵団【鋼の剣】は正式な契約を締結して、俺達は客分扱いで傭兵団【鋼の剣】の拠点に滞在する事になった。