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第一章 第22話 傭兵団【鋼の剣】団長【ラング】と云う漢

 アンナとミレイに、アンジーの妹達と共に降下艇で待って貰い、アンジーと俺は傭兵団【鋼の剣】の団長【ラング】との約束通り、国境の砦【ドラド】市街でも大きなバー【黄金酒場】に出向く。

 アンナとミレイから、アンジーの安全を心配されたが、黄金酒場の上空に降下艇を隠蔽モードで滞空させて、直ぐに駆けつけれる状態にする事を提案すると、納得してくれて、場合によっては直ぐに合流するといい始めたので、問題無いと判断したら合図を送る事を約束した。

 アンジーと共に適当な場所に隠蔽モードで降下して、かなりラフな服装でドラド市街の街路を歩く。

 アンジーにとっては、このラフな服装で街路を歩く行動が、とても新鮮な体験らしくて、俺の腕を取ってアクセサリーショップや服屋を覗きながら、黄金酒場に向かう。


 周囲の落ち着いた街並みに配慮したのか、黄金酒場と云うバーは外観からして落ち着いた雰囲気で、一見さんお断りをうかがわせた・・・。


 店舗の外に立つ、用心棒の様な雰囲気を醸している人員に、俺の名前と鋼の剣の団長ラングとの約束だと説明すると、予め聞いていたのだろう直ぐに扉を開いて、ボーイを呼んで俺とアンジーの案内を命じた。

 ボーイの先導で、かなり奥まった所に有る大部屋に案内された。

 そしてボーイが扉を叩くと、中から「開けていいぞ」と返事が有り、ゆっくりとボーイが扉を開けて俺とアンジーに「どうぞ」と促す。

 そのボーイの誘導通りに入室すると、部屋のテーブル席の片側に三人の男が陣取っている。

 三人の中央に座っていた見覚えのある男が、席を立って俺とアンジーに対面の席に座ってくれないかと促す。

 その通りに俺とアンジーは対面の席に座り、反対席の三人と顔を見合わせる。

 すると、中央に座る男が自己紹介を始めた。


 「改めて自己紹介させて頂く、私の名前は、”ラング”、この街に本拠を持つ傭兵団【鋼の剣】の団長をしている者だ。

 私の左側に座しているのは、副団長の”カイル”、右側が参謀の”ミケル”だ!」


 その紹介に、二人の男が頭を下げて来たので、俺とアンジーも頭を下げて双方ともに「「宜しく」」と挨拶した。

 俺は自分の名前とアンジーの名前、そして商人としての鑑札に書かれた身分を紹介した。

 すると、参謀のミケルと紹介された男が、俺に尋ねて来た。


 「ヴァン殿は、公国の商人と云う事ですが、ご存知ですかな?

 お国の公国が、王国軍によって侵略されて公爵夫妻は討ち取られ、公国はほぼ王国に占領された事を」


 「ええ、悲しい事ですが、以前に訪れた交易都市で、その情報に接する事が出来まして、家族や知人に手紙を送りましたが、返事が何時返って来るかどうか・・・」


 と受け答えをすると、俺の隣に座るアンジーも沈痛な表情を見せている。

 その重苦しい雰囲気を変えるつもりなのか、副団長のカイルが発言して来た。


 「団長から話しを聞いて、ヴァン殿! 貴方に会うのを楽しみにしていたのだ!

 いざ会ってみると、団長の話しもうなずける!

 お若いのに、その服を着ていても隠しきれない程の筋肉と、歩いているだけで察せられる、まるで獰猛な魔獣が動く際の靭やかな動き、とても商人とは思えないし、相当な師匠から鍛えられた武人としか思えない!」


 そのやや興奮した物言いに、思わず苦笑してしまったが、この副団長のカイル殿が何とも素直な感情で言葉を発するので、若干これから話す欺瞞に心を痛める・・・。


 「・・・実は、俺は商人と云う身分ですが、実際の処、只の放蕩息子でして、両親が共に事故で亡くなってからは、遺産を旅費として各地の有名な武人に願い出て、武術を学ぶ事に血道を上げるろくでなしですよ」


 と自嘲げに話したが、彼等からは思っていたより共感されてしまい、先ずは一献とお勧めの酒を全員で乾杯した。

 ツマミの果物と乾燥ハムを食べながら、色々な酒類を互いに飲んで暫くすると、かなり酔いが廻ったのか大柄の体躯を持つカイル殿が誘って来たので、男同士だけで腕相撲大会を始めた。


 意外な事に、この中でもかなり細い体躯のミケル殿が、結構な腕力で俺に挑んで来たので、少しばかり力を込めて負かすと、次にカイル殿がその大柄な体躯に相応しい腕力で、俺を負かそうとしてきたので、力では無く技術の小手返しと云う技で、クルンと手首だけで身体毎ひっくり返してやった。


 すると、最後の相手であるラング殿が、何やらブツブツと呟いてから、俺と対戦する。


 (うおっ!)


 思わず内心で呻いてしまって、ラング殿の体格を遥かに越えた力に、驚愕してしまった!

 思えば、俺が此の惑星に到着してから、今迄様々な敵と戦って来たが、掛け値なしに驚愕したのは、このラング殿との腕相撲が初めてである。


 正直、此の惑星の住民、全てを舐めていたのだろう・・・。

 その事を反省し、俺は久しぶりに本気を出す事にした。

 俺の身体の中枢に封印している、身体の根源力とでも表現すべき、【クンダリーニ】を丹田から呼び覚まして、【チャクラ】を急速に回転させる。

 目覚めたクンダリーニは、各々のチャクラを凄まじい速度で上り下りする事で、完全に活性化したチャクラ達は、俺の身体の隅々にまでクンダリーニを行き届かせる。

 次の瞬間、俺の筋力は日頃の数倍に達して、ラング殿が込めて入る力に拮抗して、やがてそれを上回る。

 ラング殿も驚いたらしく、先程よりも力を込め始めて来て、腕に施された入れ墨が発光し始めた。

 その両者の力に悲鳴を上げる様に、頑丈そうなテーブルは軋み音を立て始めて、やがて大きな音を立てて真っ二つに割れてしまった!

 テーブルが割れた瞬間、俺の身体は全力を出して、ラング殿を一回転させて床に倒す事に成功する。


 その大きな音に、バーの店員が駆けつけて来る中、俺とラング殿はお互いに腕を交差させて、お互いの健闘を称えてグラスに注ぎ込んだ酒を酌み交わした!


 此れが将来俺の最初の部下となる、【白虎のラング】との出会いである。

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