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第三章 第17話 【フランソワ王国】首都攻防戦⑰

 【フランシス王城】の前面に現れた大きなパネルは、どうやらプロジェクターの能力が有るらしく、何やらパネルから一定の距離の空中に投影される映像が展開された。


 「ん、此れは以前に見覚えがあるな」


 そう、以前俺とアンジーの結婚式を、【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】が妨害した際に、新生ベネチアン王国の首都に投影された映像が、此れと同じ展開方式だったので、同じ魔導具によるものだったのだろう。


 『ええ、此の魔導具は昔私が作成した物で、【シャルレ・フランク三世】に接収された魔導具です』


 通信機越しに報告して来たのは、【大和武尊ヤマトタケル】に合流した【ソロモン】である。


 「【ソロモン】、無事【大和武尊ヤマトタケル】に合流出来たのだな?」


 『はい、10日前に中型降下挺で必要な資材を、新生ベネチアン王国に有る研究所から持ち出して、【大和武尊ヤマトタケル】に合流した後は、例のあ(・)れ(・)の最終調整に掛かりっきりでした』


 「そうか、ところで【大和武尊ヤマトタケル】は戦場に到着したか?」


 「到着して居りますが、当然、敵がどの様な対応をして来るか判らないので、近くの空域にて隠蔽モードで滞空しています」


 「了解した、いつ何時れ(・)が必要になるか判らないので、準備万端にしておいてくれ」


 「了解です!」


 【ソロモン】との応対を終えても、暫くの間、空中に投影される映像は何も映らずにいたので、他の者にも注意する様に指示を出していたら、ゆっくりと映像が映りだして行った様だ。


 最初は映像が映りだしたと気付かなかったが、どうやら映像に映り込んでいる場所はやたらと暗い場所ならしく、非常に暗すぎて見難い映像が暫く流され続けていただけらしい。


 漸く目が慣れてきた頃には、何やら映像の奥の方には非常に見難いながら、随分と真っ黒な水を湛えた湖が有り、その水面には奇妙な巨大な逆十字架アンチ・クルスが浮かんで居て、その巨大な逆十字架アンチ・クルスにはどうやら人間が磔られているらしい・・・。


 らしい、というのは人間と判別するのが非常に困難だったからだ。


 何故なら、その身体には無数の小さな逆十字架アンチ・クルスが刺し貫かれていて、人間と判別し難かったからだ。


 投影される映像はやがてズームが行われていき、磔られている人物が判別出来る程ズームされた。


 「「【シャルレ・フランク三世】?!」」


 ほぼ同時、そして言葉も同じに発っしたのは、【ド・ゴール】将軍と【リッシュモン】大将である。


 通信機越しでも判る程に、二名の狼狽が伝わって来るが、無理もない事だろう・・・。


 如何に自分を守るべき軍隊は既に無く、【クライスト教団】から供与されたと思われる異次元の魔獣共も尽きた状態では、孤立無援の状態と言って良いだろうが、此の様な状態になっているとは、誰も想像して居なかった。


 『ぁぁぁぁぁぁ、ぅぅぅぅぅぅーーー』


 とくぐもった声が聞き取れて、どうやら【シャルレ・フランク三世】がまだ生きているのが判ったが、その命脈は直ぐに尽きそうなのが映像から見て取れる。


 すると、生きている事が不思議な程の【シャルレ・フランク三世】の目が、突如カッと見開かれて映像越しに、此方を睨んでくる。


 その映像は、小型ドローンを介して戦場どころか、中継映像をパネルで観察している者全てが見ているのだが、当然【シャルレ・フランク三世】側から此方の観察している全ての者を見る事は出来ない。

 

 しかし、変わり果てた姿の【シャルレ・フランク三世】は、まるで此方が見ている事を把握しているかの様に問いかけて来た。


 『其処に居るな! ヴァン!』


 思ったより元気そうな声を上げた【シャルレ・フランク三世】は、睨んでくる目から憎しみの炎が溢れて辺りを焼き尽くしかねない程の灼光を放たせながら、俺に呪いの言葉を叩きつけて来る。


 『ああああああーーー! 憎い憎い憎い憎い憎いーーー! 憎くて憎くて心が張り裂けそうだーーー!

 貴様さえ、貴様さえ存在しなければ、全ては余のモノになっていたものをををーーーー!

 貴様こそは、余にとっての不倶戴天の敵に他ならず! 余の望みを全て潰えさせた破壊神そのものだ!

 必ず! 必ず思い知らせてやるぞ!

 見ているなヴァン! 余の身体に突き刺している逆十字架アンチ・クルスには、今迄貴様達が殺してきた【旧支配者】の眷属達の恨みと憎しみの念を増幅させて、余の身に注入しているのだ!

 判るかヴァンよ! 貴様達が殺してきた【旧支配者】の眷属達数百万の恨みと憎しみの炎の凄まじさが!

 今より、【クライスト教団】の秘儀を以って、余はそれ等を糧として貴様を屠る存在に生まれ変わるのだーーーー!』


 とんでもなく身勝手な言葉を吐いた【シャルレ・フランク三世】は、磔られた巨大な逆十字架アンチ・クルスごと、浮いていた真っ黒な水を湛えた湖に沈んでいった。


 誰もが、咳き一つ立てずに映像を見つめる中、真っ黒な水を湛えた湖に波紋が拡がり、【シャルレ・フランク三世】を磔た巨大な逆十字架アンチ・クルスは、相当深いと思われる湖の底に沈んで行く。


 どれ程の時間が経ったのだろうか・・・。


 何時の間にか映像は途絶えていて、周囲は静寂に包まれたままで、皆が黙り込んでいる中、突如【フランシス王城】が振動し始める。


 (・・・何かがやって来る・・・)


 恐らく此の場に居る、ほぼ全ての者が同時に同じ感覚を覚えて、俺と同じ感想を抱いた事だろう。


 そして【フランシス王城】を取り囲む様な円形状に、亀裂が生じた地面から瘴気が吹き出す!


 予めある程度の距離を取っていた俺達は、他にも何かが起こると考えて更に距離を開けて様子を窺った。

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― 新着の感想 ―
[一言] いよいよ、新たな敵が出現しそうですね。どんな敵になるんでしょうか。こうした戦いがしばらくは続くのでしょうね。【クライスト教団】がラスボスになるのかな?
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