第三章 第16話 【フランソワ王国】首都攻防戦⑯
暫くの間、様々な攻撃を試してみて火魔法系と氷魔法系が有効との結果が出たので、量産型PS部隊と【八咫烏】部隊が前線で戦い、戦闘車両や戦闘バイクで構成されている機甲部隊が囮の役目で巨大なスライムの塊から繰り出される太い触手を引き付ける。
そして他の軍勢は、魔法部隊の指示に従い魔力を集中させて、巨大な魔法陣に魔力を注ぎ込む。
通常の戦争では人間同士の戦闘に於いて禁じ手であり、そもそも時間が掛かり過ぎるので敬遠されている魔法なのだが、此の様な化け物相手ならば非常に有効な魔法・・・・・・即ち【弩級戦術魔法】。
今回使用される其れは、クラス6魔法に相当する存在な【極氷結陣】。
首都の4つの門前に陣取っている巨大なスライムの塊4体に対し、4つに均等に配置した軍勢は魔法部隊が空中に描き出した巨大な魔法陣に向けて、己の中の全力近い魔力を注ぎ込み続ける。
その時間を稼ぎ出す為に、PS部隊と機甲部隊は己の役割を果たす為に、全開での戦闘行動を取り続ける。
(・・・此れだけの火力を浴びせても、それ程影響が及ぼせないとは、此の巨大なスライムの塊は相当厄介な存在だな・・・)
若干呆れながら、俺は全体の状況を再度確認する。
既に戦場から離れた場所に到着した【オーディン】は、【亜空間ゲート】を使用して戦場から避難民を収容しながら、周囲に【閉鎖フィールド】を張って安全圏を構築している。
近くまで到達して来ている【ドラッツェ帝国】軍は編成を4つに分けて、魔力を使い果たした元【フランソワ王国】軍と禁軍の代わりになるべく、彼等の後方で待機させている。
そして切り札である【大和武尊】は、後30分程で戦場に着く予定だ。
『準備完了しました!』
通信機を通して、各軍勢の上層部に届けられた報告を受けて、暫定の指揮官となった俺は直ちに命令した。
「良し! 【弩級戦術魔法】【極氷結陣】発動!!」
『了解!』
その応答が行われた5秒後、一斉に4個所で発動した【弩級戦術魔法】【極氷結陣】は、巨大なスライムの塊4体それぞれの頭上と地面に同一の魔法陣が出現し、その上下から凄まじいブリザードが浴びせられた!
【極氷結陣】とは、一旦全軍から収束させた魔力を使用して、魔法陣そのものをマイナス150度にまで冷やした上で、後押しに風魔法を後ろから吹付けさせる事で敵に降り注がせる魔法である!
間断なく襲い掛かるブリザードで忽ち凍りついて行く巨大なスライムの塊4体は、完全に氷魔法で動きを止めさせられて、そのまま巨大な氷の塊と化して行った。
暫くの間、巨大な氷の塊の状況を観察していたが、内部状況を探査しても何の変化も無いので、我々は次の段階の作戦行動を開始する。
魔力を全開で使用した元【フランソワ王国】軍と禁軍には、戦場から後退させて【大和武尊】が内部に設けている、魔力回復させる為の臨時施設に入るべく準備に入った
その代わりに4つの門に【ドラッツェ帝国】軍を待機させて、量産型PS部隊と【八咫烏】部隊がそれぞれ4つの門に侵入する。
未だに上空からの探査を一切受け付けない状態の首都は、侵入してみても全域で奇妙な静寂に覆われている。
先程まで、異次元の魔獣や巨大なスライムの塊によって、五月蝿い程の喧騒に満ち満ちていたというのに、今では信じられない程の静寂だ。
4つの門から侵入した我々は、そのまま首都の中心にして【フランソワ王国】の象徴でもある【フランシス王城】目指して進路を取った。
首都に侵入して直ぐ様全域探査をしてみると、生命反応が有ったのは【フランシス王城】だけで、其れ以外の地域には、一切の生命反応が無いのだ。
罠であろうが無かろうが、此方としても恐らく第一級戦犯となる【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】は、確保したい存在なので、本人が居ると思われる【フランシス王城】は是が非でも探索する必要が有った。
大道を進む訳だが当然罠の可能性が高いので、それ程スピードを出さずに進んでいくと、やがて奇妙な霧が立ち込め始めた。
(・・・以前、【オリンピア大公国】の首都決戦でも、此の奇妙な霧が立ち込めて沢山の人民が連れ去られたりしている・・・。
恐らく【ソロモン】から奪い去ったアーティファクトを利用しているな・・・)
そう判断して、侵入したPS部隊と連絡を取り合い、各機が所持するロケットランチャーに首都の全域を覆っている天蓋の様な膜を破壊するべく、強力な火魔法が封入されている弾頭を装填させて首都の上空に発射させる。
ズボボボボボオーーーー!!
奇妙にくぐもった様な音響を上げて、首都の全域を覆っている天蓋の様な膜は、強力な火魔法を受けて首都の上空に炎の花を一斉に咲かせた。
すると、【フランシス王城】を中心として立ち込めていた霧も、ゆっくりと晴れて行き、首都の状況が上空からも把握出来る様になった。
漸く小型ドローンが空から探査し始めると、見えて来た【フランシス王城】の前面に何やら大きなパネルが用意されているのが判った。