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第三章 第13話 【フランソワ王国】首都攻防戦⑬

 俺が交渉に参加すると、今迄が嘘の様に交渉が進み始めて、アッサリと首都への進軍まで決まってしまった。


 俺自身狐につままれた気分だが、【ド・ゴール】将軍は最初の頑固者らしい雰囲気は失われ、【リッシュモン】大将と共に今は俺と一緒に、首都に向かって旗下の禁軍の残存部隊を取り纏めて進軍している。


 此の状況は最も有り得ないと想定していたもので、こんなに順調な事に【ドラッツェ帝国】側としても、何か裏があるのではと疑っている程だ。


 なので【リッシュモン】大将と俺が完全監視しながら、禁軍の残存部隊凡そ5万を【リッシュモン】大将率いる10万で囲う形で進軍して行く。


 そんな進軍中は、俺と【リッシュモン】大将そして【ド・ゴール】将軍とその側近連中を、新生ベネチアン王国で開発していた、陸上を進む新造の巨大戦闘車両【三笠】に乗せて、内部にある巨大戦闘指揮所で作戦を練る。


 当初は、全長200メートルに及ぶ巨大な陸上艦船に、驚愕していた元【フランソワ王国】の面々も、1メートル半の高さでしか無いながら空中に浮いている【三笠】の中に入ってしまえば、まるで頑丈な城塞の中に居る様だし、いざ巨大戦闘指揮所で様々なパネルに映し出された現在の【フランソワ王国】全域の様子を目の当たりにして、驚きを通り越して魂を抜かれた様になってしまった。


 だが、暫くして現在の【フランソワ王国】の首都である【パロス】を映し出したパネルを見て、彼等は一気に現実に引き戻された。


 何とその映像には、【フランソワ王国】の首都である【パロス】から追い出されて行く無辜の民の姿が映し出されているのだ!

 

 然も、一切の財貨も持ち出す事が出来なかったのだろう、全くの着の身着のままの状態で城外に叩き出されている人々は、茫然自失とした様子でその場に蹲ったり、慟哭の叫びや赤ん坊や女性の悲鳴と泣き叫びが辺りに鳴り響く様が、巨大戦闘指揮所の音響を通して聞こえて来た!


 此の阿鼻叫喚の様子を愕然としながら見た、【リッシュモン】大将そして【ド・ゴール】将軍とその側近連中は、完全に気を引き締めた顔付きになって、首都の状況や周囲の街や村の様子を、各パネルに齧り付く様に群がり、それぞれの状況をつぶさに観察して行った・・・。


 それから1時間程経って、巨大戦闘指揮所の中は圧倒的に重苦しい雰囲気に包まれた。


 やがてその雰囲気のままでは話が進まないと考えたのだろう、【ボナパルト】少佐が声を上げた。


 「こんな暴挙が現在、【フランソワ王国】の首都どころか全土の街や村々で繰り広げられているとは!

 最早、現国王の【シャルレ・フランク三世】は狂気に沈んだ狂人としか思えません!

 一刻も早く、彼等平民たちを救い出して、王権を【シャルレ・フランク三世】から取り上げねば、此の国は復興を模索するどころか、直ちに滅亡の坂を転がって行って仕舞いかねない!

 既に、各地方の救済には我等とは別の者達が、救助に向かっていますので問題は少ないですが、首都の百万を越える平民達は今直ぐにでも救わなければ!」


 その鬼気迫る形相で喋る彼を見て、本当に危機感を抱いて対処しようと考えている事が読み取れる。


 その熱い言葉を聞いて、元々現国王を胡散臭いと思っていた【リッシュモン】大将は、苦々しげな顔をして吐き捨てる様に述べ始めた。


 「・・・やはり此の様な対応をして来たか・・・、ヴァン殿が示してくれた資料から現国王の【シャルレ・フランク三世】は、国民の命などどうでも良くて、ひたすらに【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】を優先して、奴等の意に沿う方向で行動している様だ。

 恐らく、奴は何らかの大規模な悍ましい儀式を、【フランソワ王国】の首都である【パロス】で行うつもりだ!

 その為には、阻害要因と成りかねない平民達は、単なる邪魔でしかないので首都から追い出したのだろう!」


 その激烈な言葉を受けて、【ド・ゴール】将軍とその側近連中は、激しい動揺に襲われていたが、直ぐに気を取り直して昨日から見せられていた、現国王の【シャルレ・フランク三世】と【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】が、各地で繰り広げていた悪行の数々を今一度読み返す。


 彼等としては突然突きつけられた真実は、まるで夢幻を示された様で、何とも実感が湧かなかったのだが、こうやって現在の映像と音響で示されてしまっては、どうしようもなく信じざるを得ない。


 そして今迄、必死に疑う事を避け続けて真実を見ようとしなかった、【ド・ゴール】将軍とその側近連中は己の不明を恥じて、俺と【リッシュモン】大将達に詫びて来た。


 「・・・大変申し訳無い・・・、確かに幾つもの噂として、【聖教】と現国王の癒着は囁かれていたし、更には理由が明かされない人狩りや、戦争捕虜の扱いが横行していたのは、我々も知る所だ。

 だが、今迄は敢えて目を瞑って、きっと現国王には深い理由が有るのだと、無理矢理信じてきた・・・。

 それこそが、現国王とその支配体制の維持に貢献してしまって居たと言うのに・・・。

 しかし、我々は真実の情報を得た以上は、現体制の打倒と新しい政権の構築を目指して、行動する事に一点の迷いも無くなった!」


 吠える様に宣言した【ド・ゴール】将軍の言葉を受けて、俺も宣言した!


 「良し! 今は一刻も早く首都から追い出された人々を救助する為に、全力を注ぐぞ!

 其の上で、首都に籠もる現国王の【シャルレ・フランク三世】と【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】と対峙する!

 皆、覚悟を決めて臨むぞ!」


 「「「応!」」」


 本来俺はあくまでもオブザーバーの立場なのだが、そんな理屈や立場などは最早どうでも良く、一つの意志に纏まった我等は、行軍の速度を上げて首都に向かい爆進して行くのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも、戦争の被害にあうのは、何の罪のない民達です。今も、どこかの国で同じようなことが起こっていると思うと心が荒みます。いつになったら、戦争のない世界が来るのでしょうか、、こうした、小説を通…
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