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第一章 第17話 交易都市で得られた情報

 かなりの量の書類が纏められている資料を受け取り、俺とアンジーは降下艇に乗る為に【商会ギルド】から出て、人目につかない路地を選びながら歩き、もし追跡者が居ても判らないコースを巡って、降下艇に乗る前にインナースーツを隠蔽モードにして、降下艇も隠蔽モードのまま交易都市の空き地に音もなく着陸させて、俺とアンジーは降下艇に乗り込んだ。


 「「おかえりなさい!!」」


 リンナとリンネが揃って迎えてくれたので、俺とアンジーも顔を綻ばせて「ただいま!」と返して、交易都市で購入したお土産の果物類を手渡すと、手を叩いて喜んでくれた。

 マンゴーに似た果物と林檎に似た果物を、降下艇に有る簡単なキッチンで備え付けの果物ナイフで切り分けて、4人でテーブルに着いて賞味してみると、ほぼマンゴーと林檎と同じ味わいで十分楽しめた。

 全員満足して紅茶で一息ついて、リンナとリンネに大公国の祖父宛に手紙を送る事が出来た事と、公国の情報を掻い摘んで教えて上げた・・・。


 「・・・父様、母様・・・」


 二人とも故郷の事を思い出すと、やはり両親の事を思い出すのか、どうしてもその死に様を想い涙してしまう・・・。

 しかし、故郷の民が苦しんでいることに話が及ぶと、非常に悔しそうな顔をして頬を紅潮させている。


 「・・・王国の兵士が私達の公国に居座っているの?!」


 その嫌な情報を喋らなければならなかったアンジーも、顔を顰めている・・・。


 「・・・今はどうしようもないから仕方が無いけど、何れ遠くない未来に必ず取り返そう!

 その為にも色々と行動する必要があるんだ。 二人とも協力してくれ!」


 そう俺が妹達に促すと、二人は覚悟を決めた顔で頷いてくれた。

 その後、資料に纏められていたこれから向かう大公国の情報を、四人で共有する事にした・・・。

 彼女等の祖父の国と云う事もあり、俺と違ってかなり大公国の地名や主な産業、そして主要な役職を担う貴族の人名を彼女等は覚えていたが、ある人名に困惑した顔を見せる。


 「? この新宰相【ヤヌコビッチ】と云う人物は誰なんでしょう?

 確か、ここ20年に渡って宰相は祖父の股肱の臣である【ミハエル】侯爵だった筈・・・、

 そもそも宰相が交代したなら、重要な事柄なので公国にも通達があって然るべきだ。

 それも無くとは・・・、もしかしてつい最近の事なのか?」


 アンジーが、自分の知識との齟齬に違和感を感じ、疑問を提示して次のページを捲ると、彼女の疑問通りに前宰相ミハエル侯爵は70台という年齢もあり、急な病でベッドから起き上がれず職務を遂行出来なくなり、1年前にいきなり届けられた養子のヤヌコビッチと云う壮年の男性を 後継者として侯爵の身分とともに職務を譲ったそうだ・・・。


 「かなり無理矢理な人事だな・・・、大公国という大陸でも中堅くらいの国家の宰相職を、ポッと出の人物が担うなど聞いたこともない。

 こんな事を、祖父は簡単に許したのか?」


 訝しむ様子を見せながらアンジーは首をひねっていたが、流石に国家の細かい内情までは資料に載っていない。

 だが、大公国が公表している情報はかなり細かく載っていて、其処にはこのヤヌコビッチ宰相という人物が主導して、新しい軍隊が急速に整備されている事が書かれている。


 「・・・ふ~む、どうやらこのヤヌコビッチ宰相と云う人物を納得させなければ、俺達の目論見である王国に対抗する為の協力を得られそうもないな・・・」


 そう締めくくって、次の資料に目を移すと王国の内容が載っている様だ。

 しかし、普通に国王の名前や各大臣の名前、有力な貴族名や豪商の名前が羅列されているのに、何故か付記されている”注意事項”の文字に違和感を覚えた。


 「〈尚、この内容は10年前と同様である〉とはどういう事だ?!

 有り得ないだろう! 如何に大国とはいえ10年間も国家の顔ぶれが変わらないなどと。

 人である以上、生きているのだから病気にもなるし、老衰して行くのだから次世代に引き継ぐ事も有る筈だ。

 まさか、それ以前も顔ぶれが変わらないのか?」


 その問いに、改めて疑問を感じたらしいアンジーが、俺に答えてくれた。


 「・・・言われてみれば確かに変だ・・・、国王の交代こそ頻繁に行われないだろうが、各大臣まで暫くの間一切交代しないなんて、他国では有り得ない・・・」


 一抹の違和感を感じながら王国の資料を読み終えて、次に先日までアンジー達が王国と共に戦っていた帝国の資料が載っているページに移った。

 だが、王国や大公国の詳細な情報と比べるとかなり簡便な内容で、大凡の地名と国王の名前以外は不明であった・・・。


 (・・・こんな物かな・・・)


 あまり期待していなかった事も有り、それ程ガッカリもせずに納得し、俺とアンジーは顔を見合わせて新しく得た情報を元に、今後の進退を改めて考え直す。


 (幾つかの、【探査ブイ】やセンサーでの情報収集で得られなかった内容が判ったな、引き続きこの資料を元に情報収集させよう)


 そう考えながら、アンジーと話し合いを進めていると、疲れたのかリンナとリンネの二人はいつの間にかスースーと寝息を上げている。

 アンジーと一緒に二人を抱えあげると、3人用に割り当てた客室に有るベッドに寝かせて上げた・・・。

 考えてみれば、2人にとっては国を出てからの環境の激変で、精神的な疲れが溜まっているのだろう・・・。

 今後は二人の負担も考えながら行動しようとアンジーと話し、俺とアンジーは応接室に戻り[ヘルメス]の齎してくれる現在の状況を確認し、今後の行動を決めた・・・。

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