表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/620

第二章 第63話 ブレエン要塞戦『水攻め作戦』顛末

 その後も様々な現場確認を行っていると、医務室から【リッシュモン】大将の意識が戻った事を告げられて、一旦会議はお開きにして【ボナパルト】少佐達に医務室に向かって貰った。


 意識を取り戻して医者から問診を受けていた【リッシュモン】大将は、入室して来た【ボナパルト】少佐達に気付いて、【リッシュモン】大将は息せき切った様に彼等に詰め寄って状況説明を求めて来た。


 「あれから、軍はどうなったのだ?

 津波は何時まで続いて、被害はどれ程の規模になったのだ?」


 その問いに【ボナパルト】少佐達は、先程【ドラッツェ帝国】側から詳細な資料込みで知らされた状況を、【リッシュモン】大将に教えた。


 「・・・そうか、全滅は免れて殆どの軍人や獣人部隊は生き残れているのだな・・・」


 「はい、恐ろしい程【ドラッツェ帝国】側はかなり綿密な作戦を練っていて、津波の後の此方の軍人達の回収方法と医療体制を整えていて、極力此方の被害を最小限に留めたいとの思いが透けて見えます。 

 恐らくは、今後の彼等の思い描く戦略に於いて、我々の力も必要なパースであり、今から行う彼等との交渉で肝心要の目的が語られるでしょう」


 「・・・そうだな、余り先入観を持たずに交渉に臨もう・・・」


 そう言って、【リッシュモン】大将は用意されていた軍服に、病院服から着替えてから【ボナパルト】少佐達を率いて、ブレエン要塞内の会議室に向かった・・・。




◆◆◆◆◆◆




 【ドラッツェ帝国】側と【フランソワ王国】側の軍人同士が、正式でこそ無いが対面しての交渉が行われる。


 【フランソワ王国】側が軍人のみなので、【ドラッツェ帝国】側も軍人のみが参加し、あくまでも現場の軍人達の何の制約も無い、意見交換の場の延長であるものだという側面がある。


 なので、交渉内容は筆記記録には残らないし、発言内容を以って双方共に国家の意見を代弁する様な事にはしない。


 そんな前提を説明されたので、肩の力が大分減った【リッシュモン】大将達は、逆にある要求を求めて来た。


 そのある要求とは即ち、オブザーバーとして交渉に参加するつもりの無かった俺との対話である。


 俺としても、此の交渉が終わったら個別に【リッシュモン】大将と話すつもりだったので、手間が省けるとの思いもあって、了承する事にした。


 そして始まった交渉は、互いの前提を確認しお互いに踏み込まない領分を見定めながら、少しづつ妥協点を探るものよなった。


 妥協点とはつまり、【フランソワ王国】軍の立場をどう規定するかという事に他ならない。


 他者から見ると、殆どの兵力が戦闘続行不可能で、然も現在指揮官達も武装解除の上で敵方のブレエン要塞内で、交渉を行っている以上は【フランソワ王国】軍が降伏交渉に臨んでいると見られても仕方がないが、完全には【リッシュモン】大将達としても、立場がある以上は簡単に降伏出来ない事情があった。


 その事情とは、首都からの出撃の際に国王とその側近たちから言われた言葉にある・・・。


 その内容とは、


 『呉れ呉れも残した家族の事を思い、後顧の憂いが無いように首都に家族を招いて生活全般を、【フランソワ王国】が面倒を見てやるよ』


 との言葉だ。


 文字通り受け取るならば、軍人の家族への当然の国家側の処置の様な話だが、顧みてあの国王絡みの話しとなると、途端に信用が無くなり胡散臭さが増す。


 つまり、実際の所は今回の戦いに於いて全力を尽くして国家の為に働く様にとの、無言の圧力なのでは無いかという疑いだ。


 どうしても、【リッシュモン】としては間近で【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】と接した時に、己の心に生じた途轍も無い違和感と、まるで人間では無いような雰囲気を醸し出す異臭を思い出し、首都にまるで人質の様に囲われている家族の身が心配でならないのだ。


 【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】の異常性と、【聖教】を隠れ蓑にしている【クライスト教団】の恐ろしさを把握している俺達新生ベネチアン王国と【ドラッツェ帝国】は、先に協力体制を築いた【カーン】大将の率いる軍の現在の状況を、【フランソワ王国】側には情報を掴ませていないし、【リッシュモン】大将達の率いる【フランソワ王国】軍の状況も【シャルレ・フランク三世】に情報が渡らない様に、処置してある。


 現在此のブレエン要塞の周囲は、半径20キロメートルに渡って【閉鎖フィールド】で囲ってしまっており、全く【フランソワ王国】側には何が起こっているか判断できずに居るだろう。


 何故此の様な処置を取ったかというと、此の後の行動として首都への電撃戦を【ドラッツェ帝国】軍と新生ベネチアン王国軍では狙っていて、此のブレエン要塞にはある程度の守備兵を残して置いて、【フランソワ王国】首都の攻防戦には、【カーン】大将の率いる軍と【リッシュモン】大将達の率いる【フランソワ王国】軍にも参加して貰いたいと考えているからだ!


 当初の作戦では、此のブレエン要塞を中核とした新しい国家体制を考えていたが、あらゆる地方の軍が既にして【リッシュモン】大将の元に集まり、現在は【ドラッツェ帝国】の国土内で治療を受けているので、首都以外の【フランソワ王国】の攻略はある意味では終わって居るに等しい。


 なので、これから行われる交渉は実際の処、今後の【フランソワ王国】の体制を話し合う場でもあるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 家族が人質ですか、やっかいですね。どう、切り抜けていくんでしょう。次回の展開が楽しみです。そして背後にある黒幕、、まだまだ話が続きますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ