第二章 第54話 【ドラッツェ帝国】対【フランソワ王国】⑲
いよいよ、元【フランソワ王国】軍の指揮官である【カーン】大将とその同僚達を中心とした、約20万人の【フランソワ王国】への反抗軍が、俺達が占拠して居る【ブレエン要塞】に近付いている。
彼等が、【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】と、その協力関係に有る【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】の残虐行為と、自軍に対してすら攻撃して来る怪物をけしかけて来た事実から、新しい指導者の元で【フランソワ王国】を再興させる事を決断したので、【ドラッツェ帝国】は手助けする為に此の【ブレエン要塞】を奪取した経緯が有る。
此の【ブレエン要塞】を拠点として周囲の地域を、現在の【フランソワ王国】から離脱させて新しい国家を立ち上げて、奪還する為にやって来るであろう【フランソワ王国】軍と対決するつもりである。
此の事態は今の所【フランソワ王国】にはバレていないらしく、問題無く【フランソワ王国】の国土に侵入しても進軍出来ている。
それとは別に、最近まで夜間に限って【ブレエン要塞】を襲っていた、【クライスト教団】の司祭等を指揮官とした異界の獣共を召喚する攻撃は、どうやら主目的である新たに編成した【フランソワ王国】軍の訓練が終わった様でピタリと止んだ。
そして新たに編成した【フランソワ王国】軍は、【フランソワ王国】首都から出陣して此方の方面に向けて進軍して来る様だ。
その新たに編成した【フランソワ王国】軍の進軍は、当然俺の持つ【探査ブイ】で四六時中探査しているので、ほぼ完璧に全ての状況が把握出来ている。
此の新たに編成した【フランソワ王国】軍の進軍と、現在【ブレエン要塞】に近付いている【カーン】大将率いる反抗軍の進軍を、【フランソワ王国】を広域に映し出した大型パネルで、戦況図にした上で全体状況を【ドラッツェ帝国】の上層部全員が参加する会議が、【ブレエン要塞】の大会議室で行われた。
当然【ドラッツェ帝国】の首脳部は、首都から回線を通して参加しており、更には今回は特別に新生ベネチアン王国からも回線を中継させていて、アンジーを筆頭とした新生ベネチアン王国軍の上層部も参加している。
つまり今回の会議は、【フランソワ王国】を全面的に追い詰める為の全勢力の指揮官が参加する、初めての戦略会議となるので有る。
「それでは、此れから対【フランソワ王国】の全体戦略会議を開催します」
【ドラッツェ帝国】の首都から中継された宰相からの開催宣言を受けて、各勢力と各軍団の指導者がそれぞれのモニター越しに頷いた。
「今回の全体戦略会議は、以前までの【フランソワ王国】軍を我が【ドラッツェ帝国】国土から追い出す為の戦略会議とは違い、【フランソワ王国】と国王の【シャルレ・フランク三世】を幇助する【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】を倒す事を目的とした戦略会議だ。
是非、様々な方向からの意見を忌憚無く述べて頂きたい!」
俺はそれぞれの立場を考えて意見を述べる事を控えかねない者の事を考え、敢えて責任がそれ程無いと考えられる自分から発言して皆の闊達な意見が飛び交う事を促した。
[実際の処は、「貴方が思っているより貴方の立場は、影響が大き過ぎる存在だし誰も無視できない存在なのよ!」とアンジーから後にクスクスと笑いながら誂われてしまった]
「それでは、吾から述べさせて頂こう!」
そう宣言して【ゲルト】元帥が、私見を述べ始めた。
「現在、新たに編成された【フランソワ王国】軍は首都から出陣して、各地方に配備していた獣人部隊等も糾合して行き、凡そ50万人を越える大軍勢となりながら【ブレエン要塞】に近付いている。
此の軍勢と正面から平野等で正対して戦うと、例え今の生まれ変わった【ドラッツェ帝国】軍であっても被害が尋常では無いものとなるだろう!
ならば、現在様々な改修を行った【ブレエン要塞】で迎え討つのが道理だろう。
しかし、此れだけでは戦力としては足りないので、是非にでも【カーン】大将が率いて【ブレエン要塞】に向かっている軍約20万人は、現在の進路を迂回して新たに編成された【フランソワ王国】軍の後背に廻って貰い、奴等が【ブレエン要塞】を攻撃して来たタイミングで、背後からの奴等への攻撃をお願いしたい!」
そう【ゲルト】元帥は私見を述べてから、【カーン】大将とその同僚達に徐ろに頭を下げる。
それに対して、【カーン】大将とその同僚達は直ぐに頭を下げて、【ゲルト】元帥の要請に【カーン】大将は答えを返した。
「頭をお上げ下さい【ゲルト】元帥!
当然此処まで我々を支援してくれた【ドラッツェ帝国】の為にも、現在の【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】とそれを幇助する【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】を倒す事は、将来の新しい【フランソワ王国】を建国する為にも絶対に必要な事なので、我々は【ゲルト】元帥の提案通りに奴等の後背を討つべく現在の進路を迂回して、背後から効果的な攻撃を加えるべく埋伏しましょう!」
そう答えてくれたので、此の時点で大まかな戦略構想は決まったと言って良いだろう。