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第二章 第51話 【ドラッツェ帝国】対【フランソワ王国】⑯

 起伏の少ない穀倉地帯でも、なだらかながら丘の様になっている地形に陣を張り、其処から俺は【ブレエン要塞】を眼下に見渡す・・・。


 (・・・本当に地上から見ると規模もそれ程大きく無いし、只の兵站中継基地にしか見えないな・・・。

 [ヘルメス]が全然注意を向けなかったのも頷けるな・・・)


 だがその正体は、広大な地下鍾乳洞を利用した膨大な地下倉庫を保持していて、場合によっては何年でも籠城出来る程の規模を誇る大要塞、【フランソワ王国】の元国境線でも最大の要塞である【ブレエン要塞】、それが【フランソワ王国】軍の指揮官である【カーン】大将が説明してくれた正体である。


 なので事前に【探査ブイ】や【ランドジグ】を駆使して、地下の広大な地下鍾乳洞を探査すべく隠蔽モードのまま、周囲の離れた地下道から侵入させて見た。


 すると【ブレエン要塞】の地下には、確かに広大な地下鍾乳洞を利用した地下倉庫が存在し、膨大な軍需物資や食糧等の兵站に必須な代物が、地下倉庫に積み上がっていた。


 だが、それよりも不可思議な事実が判明した。


 何と、【探査ブイ】や【ランドジグ】での探査では、【ブレエン要塞】には兵士どころか人間が一人も存在して居なかったのである・・・。


 確かに此処までの【フランソワ王国】内の行軍で、只の一人も【フランソワ王国】国民を発見する事が出来て居なかった。


 恐らくは、【フランソワ王国】上層部の判断で、我々の軍隊が【マジノ線】を越えて【フランソワ王国】国内に侵攻を開始する前から、国民を戦争に巻き込まない様に避難させているのだろう。


 だが、まさか膨大な軍需物資や食糧等のある【ブレエン要塞】の兵士も、避難させているとは想定していなかった。


 俺の知り得た情報を【ドラッツェ帝国】軍の上層部に明かし、臨時の会議を開きながらその間にも小型ドローンを付けた部隊を【ブレエン要塞】に派遣した。


 するとやはり、【ブレエン要塞】には人っ子一人居ないのが確認され、その状態も動画中継されたので、【ドラッツェ帝国】軍を【ブレエン要塞】に近付けて行き、慎重に確認しながら先ずは調査隊入場させた。


 「・・・どう考える【バルト】大尉?」


 「どうとは、もしかして【フランソワ王国】上層部の意図を、どう考えるか? と言うことですかヴァン殿・・・」


 「嗚呼、その通りだよ、もしかすると我々にアッサリと【ブレエン要塞】の占拠を許したのは、我々の油断を誘いつつ雪隠詰めにする事で、此の要塞毎叩き潰す手段を【フランソワ王国】軍は所持していて、我々は罠に掛かっているのでは無いか?」


 「・・・その辺りの策を警戒して、周囲の【フランソワ王国】軍の位置関係を、貴方と上層部は把握しているのでしょう?」


 「当然把握していて、一番近い【フランソワ王国】軍は50キロメートル程離れた、城を改装した駐屯地に居るのも把握していて、他の【フランソワ王国】軍の動向も掴んでいる」


 「という事は、軍では無くテロリズムに似た方法で、此方に被害を与えて来るつもりでしょうか?」


 「・・・その可能性も考慮しているが、正直、俺の探査を潜り抜けるテロリストが居るとなると、お手上げでどうしようも無いな・・・」


 正にお手上げだと、両手をお手上げのジェスチャーをさせながら俺が戯けて見せると、【バルト】大尉も致し方無しと行った感じで肩をすくめて見せる。


 だが、俺も万能では無い以上、特に未だに情報不足な魔法面での警戒をする為に、今回も【ソロモン】との連絡を密にしているのだが、流石に現在は使い魔達を動員出来ない【ソロモン】は、敵からの攻撃を警戒して首都に居る【ドラッツェ帝国】皇帝と宰相の近くに待機して貰っている。


 何故なら、元の国境線である【マジノ線】まで押し返された【フランソワ王国】としては、大逆転する選択肢として【ドラッツェ帝国】の上層部へのテロリズムが有るからだ。


 一応、俺の持つ様々な物理的なセキュリティは、【ドラッツェ帝国】の上層部全員に施しているが、こと魔法による急襲にはもしかすると無力かも知れないので、【ソロモン】に臨機応変で対処して貰う。


 そういう考慮をしながらも、【ブレエン要塞】に入場した調査隊からの報告を確認した。


 調査隊に持たせていた様々なセンサーの結果で、【ブレエン要塞】内には動体反応は一切無く、集積されていた膨大な軍需物資や食糧にも一切の異常や毒等による食用不可も検出されなかった。


 (・・・此処まで問題が無さ過ぎると、逆に簡単に奪い返せるから兵站物資をそのままにしたのかも知れないな・・・)


 そういう疑惑を覚えた俺は、【ドラッツェ帝国】軍の上層部に具申した。


 「・・・此処まで見事に【フランソワ王国】軍が退却したという事は、【フランソワ王国】軍人達も上からの命令に抵抗する事無く行動したのだろう。

 とすると納得できる方策を上から説明されたと推測出来る。

 それは恐らく、現在我々が居る【ブレエン要塞】を利用した作戦と考えられる。

 なので、身動きが取り難い要塞内にはあまり兵士を入場させず、要塞外で駐屯して置きもし敵がやって来たら、当初は気が付いていない様に粧いながら、敵が逃げようが無い程近付いてから一網打尽にしてやりましょう!」


 そう述べて、俺はまるで悪人の様に人の悪い笑みを浮かべた。

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