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第二章 第47話 【ドラッツェ帝国】対【フランソワ王国】⑫

 暫くの間、戦場だった筈の広大な平野には痛い程の静寂が立ち込め、言葉を紡ぐべき口はまるで縫い付けられた様に閉じたままだ・・・。


 先程の出来事はあまりにも現実の話しとは思えず、更には生物としての本能であの存在がこの世の者では無い事を、否応なく認識させられているのである。


 そんな中、俺は母艦の【天鳥船アメノトリフネ】に命じて、【ドラッツェ帝国】軍の兵士達が全員飲んでいる【命水アムリタ】を介して服用させているナノマシーンに命じて、外部から無理矢理だが精神安定させた上で意識を覚醒させた。


 そのお陰で徐々に目を覚ました様な面持ちで、【ドラッツェ帝国】軍の兵士達は頭を振りながら行動w開始する。


 だが、【フランソワ王国】軍の兵士達はそういう訳には行かず、殆どが立ったまま気絶していたり人事不省に陥っている。


 (・・・此れはどうにもならないな・・・)


 俺は此の状況を整理し【ドラッツェ帝国】の上層部と相談する為にも、戦場に残存している【フランソワ王国】軍の兵士達を速やかに全員空間毎【時間凍結】して【亜空間収納】した。


 但し、一旦【亜空間収納】した【フランソワ王国】軍の兵士の中でも、上層部の指揮官クラスの人物でも重要だと判断した者は、いち早く【時間凍結】を解除した上で【オーディン】の医療室で精神治療を受けさせた。


 【ドラッツェ帝国】軍も、一旦全軍要塞の付近に集結させて、全員精神治療を受けさせる事となった。


 基本的に【ドラッツェ帝国】軍の兵士全員は、ナノマシーンによる神経節の強化と血流の調整が行われているので、【命水アムリタ】の再接種とナノマシーンの補給でほぼ全快出来た。


 しかし、【フランソワ王国】軍の指揮官である【カーン】大将とその同僚達は、その様な措置はされていなかったので、一旦、繭状のコクーンと呼ばれる医療器具に全身入って貰い、3日間の集中治療を行う事になった。


 正直、【ドラッツェ帝国】軍としても今回が激戦になるのを覚悟していたので、様々な準備をしていたのだが、全く予想外の結末を迎えてしまったので、仕切り直す為にも籠城戦を戦い抜いた各戦線の部隊には、休養と補給を受けて貰う為に、要塞の周辺に幾つもの野戦病院と、要塞内に設けた大浴場とリフレッシュルームを順番に使用出来る状態にする。


 お陰で兵士達は、緊張しっぱなしだった数ヶ月間から解放されて、休養状態に入る事が出来た・・・。


 そんな兵士達とは裏腹に、上層部の指揮官達は深刻な表情を浮かべながら、【オーディン】の大会議室で顔を突き合わせる事になった。


 「・・・それでは、【聖教】とはその様なとんでもない”闇”を内包している宗教なのか・・・」


 「その通りです・・・、厳密に言いますと【聖教】の皮を被る【クライスト教団】という組織が、世界に対して引き起こしている”闇”が今回の異常事態の原因ですよ」


 大型パネルに映し出され回線を通して会議に参加している【ドラッツェ帝国】皇帝の疑問に、此の場にいる【ソロモン】がはっきりと答える。


 俺としては、此の【クライスト教団】と云う人類にとってとんでもない被害を与えかねない組織との闘争に、【ドラッツェ帝国】を巻き込むつもりは一切無かったのだが、そんな事を言ってられない形で出現して来たのが今回の異常事態である。


 まさかとは思ったが、【クライスト教団】は【旧支配者】が此の世界に接触して来る為の、足掛かりに過ぎないと俺は考えていたのだが、【旧支配者】の眷属が直々にやって来るとは想像もして居なかったのだ。


 大体、【旧支配者】の眷属が直々にやって来る為には、幾つもの条件が有る事を俺は故郷のデータベースから知っていて、少なくても数百年は出現出来ないと判断していた・・・。


 つまり、【フランソワ王国】国王である【シャルレ・フランク三世】は、数百年の積み重ねを帳消しにする程の貢ぎ物を、【旧支配者】の教えを広め様としている【聖教】を隠れ蓑にした【クライスト教団】に与えたのだろう。


 (そうでもしないと、あんな【旧支配者】の眷属は此の世界に出現しようがない)


 そう思いながら、俺は【ソロモン】に指示して先日の新生ベネチアン王国の首都で俺とアンジーの結婚式を、取りやめにせざるを得なかった動画を大型パネルに流す。


 その動画には、堂々と【フランソワ王国】国王である【シャルレ・フランク三世】が、【クライスト教団】から提供された怪物を新生ベネチアン王国の首都に送り込んで来たのが、本人の言葉で喋っているので証明されている。


 此の動画を見た【ゲルト】元帥が、唸りながら呟く。


 「・・・此れは不味いな・・・、つまり条件を整えれば【フランソワ王国】側は、何時なりとこんな怪物を【ドラッツェ帝国】に送り込めるという事か・・・」


 「はい、その様な事を出来ない様に、私の使い魔達を利用できない様にして送り込めないように手を打ったのですが、どうやら何らかの方法でそれを出来る様にしたようです」


 それに答えた【ソロモン】も沈痛な様子だ。


 解決策も無いまま会議は閉会して、次回は回復した【フランソワ王国】軍の指揮官である【カーン】大将とその同僚達を交えて行う事が決定した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 新たな敵が、さらに、宗教がらみですか。今の世を反映しているんですね。そのほとんどが宗教戦争ですからね。胸が痛みます。
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