第二章 第42話 【ドラッツェ帝国】対【フランソワ王国】⑦
度々の【フランソワ王国】本国方面からの増援軍である大型ストーン・ゴーレム達を迎撃し、短い休養に入っていた我々機甲部隊は、要塞内のシャワールームでシャワーを浴びて気分をリフレッシュさせてから、各々の愛機に向かい次回の戦いの為に、様々なオプショナル・パーツの中からより自分のスタイルに合う物を選択し、整備士に換装と補給を依頼する。
要塞内の整備士も、ここ一ヶ月の多忙極まる仕事量を熟して来たので、すっかりベテランの整備員に育っている。
「ヴァン殿! 例の【飛行ユニット】は次回も装備しないで宜しいですか?」
俺の愛機を整備している要塞内の整備士班長は、俺のPSである【八咫烏】初号機のコックピットのチェックをしながら、俺に確認の為に声を掛けて来たので、俺は近くのハンガーに牽引されている【飛行ユニット】を眺めて答えた。
「嗚呼、問題が改善しない限り無理に使う理由は無いし、機甲部隊と共に行動した方が現在は打撃力を有効に運用出来るから、陸戦仕様の今のままが良いな」
「判りました、若干ローラーダッシュの回転比率が左右誤差が有るので、調整しておきますね」
「頼んだよ」
そう返答しながら、整備士班長の頼もしい姿を見て、感慨深く感動していた。
(・・・本当に彼等【人類同胞】に会えて良かったよ、もし会えずに此の銀河をずっと放浪し続けていたら、今俺が味わっている感動や頼もしさも全て得られずにいたのだろうから・・・)
此の惑星に降り立ち、彼等の生きる逞しさと未知の物にも怯えずに取り組む姿を見て、俺は本当に滅びゆく故郷から俺を脱出させてくれた母に感謝した。
(・・・母上・・・、俺に仲間となる【人類同胞】との出会いをくれて、本当に有り難う・・・。
俺は彼等が正当な道を歩み、俺と共に生きて行こうとしてくれるのであれば、全力で協力して行くよ。
もし、あの世と言うものが有って、其処から俺を見てくれているなら、息子の生き様を応援して欲しいな・・・)
そう考えながら要塞内の格納庫から出て、格納庫で合流した別の機甲部隊を率いる【バルト】大尉と共に、プリーフィングルームに向かう。
「【バルト】大尉も【飛行ユニット】は取り外して、陸戦仕様の状態で次回も戦闘に出る予定かな?」
「はい、正直な処、如何に空を飛べても単独で戦うよりも、部隊として皆と同じ目線で攻撃出来た方が効率は良いし、避けたり防御する際も迅速に皆と行動すれば部隊として被害を減らす事が出来ます!」
「・・・そうだな、此の要塞近くで戦う限りは、空を飛ばずに戦った方が効率は良いな・・・」
「そうですね、逆に【フランソワ王国】へ侵攻する場合は、【飛行ユニット】は必要不可欠です!」
「その通りだな、何と言っても敵の国土で制空権を得る為にも、【飛行ユニット】は必要だ」
「その際は、存分に空を駆け巡って敵の飛行する魔獣等を蹴散らして見せましょう!」
「期待しているよ」
「了解です!」
丁度会話が終わったタイミングで、俺達は目的のプリーフィングルームのドア前に着いた。
プリーフィングルームには、現在の【フランソワ王国】軍が編成して最前線だ戦って来た、各方面軍の撤退している進路が大型パネルに表示されている。
その中でも、最前線の両端で戦闘していた【フランソワ王国】軍の二つの方面軍は、明らかに他の各方面軍よりも動きが鈍く、此の分では相当な時間を掛けないと奴等は合流出来ず、期限を定めた大軍での一致した要塞攻めは不可能だろう・・・。
しかし、こんなのんびりとした対応では補給も出来ないのに、いずれはジリ貧となってしまい撤退も出来なくなるだろうに、どうするつもりなのだろうか?
どうも【探査ブイ】と【ランドジグ】による細かいデータ取りを行い解析して行くと、ある共通の行動が此の両端の方面軍には存在する事が判明した。
それは【フランソワ王国】軍で日常的に行われていた略奪行為。
何と、此の二つの方面軍は他の方面軍と比べて、圧倒的に周辺の村や街に対しての略奪行為が凄まじく、【ドラッツェ帝国】が国土の【フランソワ王国】方面に有る半分の地域に対して、首都に疎開させる英断を下した後から、人間が居なくなった事を把握した二つの方面軍は、最前線での【ドラッツェ帝国】軍との戦いそっちのけで、略奪行為に明け暮れていた様だ。
つまり、此の二つの方面軍の動きが鈍いのは、諸々に収奪した大量の略奪品を抱えて、如何に撤退するかを模索していて、更には他の方面軍と合流すると収奪した大量の略奪品が見られてしまい、分け前を取っれてしまうと懸念しているらしい。
何とも間抜けな話しだが、こういう愚かな行為に明け暮れていた奴等には、当然報いを受けさせるべきだろう。
直ちに俺とプリーフィングルームに居た情報将官で、首都に有る元帥府に詰めている【ゲルト】元帥に報告し、此の二つの方面軍へ最前線で両端の籠城戦をしていた部隊に、新たな増援を派遣して追撃戦を掛けて欲しいと陳情した。
そうすれば、此の間抜けな動きの鈍い二つの方面軍を、上手く行けば殲滅する事が出来る筈だ。