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第二章 第36話 【ドラッツェ帝国】対【フランソワ王国】①

 「何の冗談だ、此の報告書は?」


 【フランソワ王国】軍第一方面軍指揮官【カーン】大将は、朝のミーティング中に飛び込んできた報告書を受け取り、思わず漏らしてしまった感想は朝のミーティングに参加している全ての幕僚に聞こえた。


 「何事ですか、閣下?」


 「どの様な内容の報告書なのですか?」


 次々に疑問符付きで質問を受けた【カーン】大将は、近くに居た兵士に報告書を渡し幕僚たちに渡す様に命じ、渡って来た報告書を一斉に覗き込む様に読んで行った。


 全員が読んだと判断した【カーン】大将は、


 「読んでの通りだが、第四方面軍の輸送部隊が【バイエル】の兵站集積場に、定期便での補給を受け取りに行ったらしいのだが、何故か【バイエル】の兵站集積場は無くなっていて、代わりに【ドラッツェ帝国】の軍旗がはためく巨大な要塞が存在しているそうで、直ちに斥候部隊を派遣して詳細な状況を把握しようとした処、強烈な魔法による砲撃を受けて追い返されたそうだ」


 「・・・確かにその様に書かれた報告書でしたが、此の様な有り得ない状況を報告して来るなど、第四方面軍は敵の欺瞞工作にでも踊らされているのでしょうか?」


 「・・・その可能性も有るな・・・、良し、第一方面軍からも斥候を【バイエル】の兵站集積場に派遣し、第四方面軍へも確認の為の部隊を派遣せよ!」


 「了解しました、閣下!」


 その様にして朝のミーティングは、【バイエル】の兵站集積場の状況確認と第四方面軍への報告確認を行う事を決定して解散した。


 ただ、此のミーティングに参加した面子は、その日の夕方に顔を険しくして再度集まる事になった。



◆◆◆◆◆◆




 「それで、第四方面軍に向かわせた部隊からは連絡は有ったのか?」


 「いえ、それが途中までは魔導具を使用した魔法通信である、【メッセージ】で連絡は取れていたのですが、まだ魔法通信が届かなくなる距離までは到達して無い筈なのに、【メッセージ】が途絶してしまって居ります」


 「それでは、【バイエル】の兵站集積に向かわせた斥候部隊からは連絡は有ったのか?」


 「いえ、此方も同様に【メッセージ】が途絶してしまって居ります」


 「・・・そうか、派遣した部隊も【メッセージ】が出来なくなった事は判っているだろうから、全部隊が帰還するなり部隊を分けて連絡させる部隊と探査する部隊にするなりして、行動を開始するだろう・・・」


 そう感想めいた言葉を【カーン】大将は発し、不機嫌な様子で黙り込んだ・・・。


 そんな【カーン】大将の雰囲気は集まった幕僚達にも伝染して、重苦しい雰囲気が集合している大部屋に充満して行った・・・。


 その大部屋の雰囲気を無視する様に、新たな報告書を携えた兵士が飛び込んできた。


 「報告です! 隣接する第二方面軍から前線の【ドラッツェ帝国】軍から、大規模な攻勢が始まったとの報告が!」


 いきなりの報告に、幕僚達はざわめきながら各々の意見を言い合い始める。


 「何だと?! 此れまでひたすらに撤退戦を繰り返して、漸く最後の砦に籠城しているだけの奴等が、反撃して来ただと!」


 「何故だ?! そんな予備戦力が【ドラッツェ帝国】軍に有るとは聞いて居ないぞ!」


 「そもそも、第二方面軍には獣人部隊でも強力な、巨象部隊と巨犀部隊が配備されているだろうに、どうやって此の二大部隊を突破出来たのだ!」


 「その通りだ! 大体、先週まで第二方面軍は【ドラッツェ帝国】軍が籠城している砦に、此の二大部隊を活用した破城槌はじょうつい攻城槌こうじょうついによる攻勢で、もうすぐ大穴を穿てそうだという話しだった筈だろう?」


 そんな喧々諤々とした意見の言い合いが始まっている間に、【カーン】大将は兵士から報告書を受け取って細かい報告書内容を読み込んだ。


 読み終わった【カーン】大将は幕僚達に報告書を渡しながら、部屋の壁に掲げられた付近の地図と、自軍である第一方面軍が対峙している【ドラッツェ帝国】軍の方向に視線を向ける。


 次の瞬間、第一方面軍でも最前線の辺りから轟音が轟いて来て、直ぐ後に衝撃波が此の天幕で作られた司令室にも届き、集合していた幕僚達も一斉に尻餅をついたり蹲って、床に這い蹲る姿勢になった。


 突然の事態に、此の場にいる全員が呆然とする中、ガヤガヤと聞こえてきた周囲からの喧騒に、何人かが自我を取り戻して様子を見に天幕から出ていく。


 5分程経過して、漸くほぼ全員が落ち着いて来たので、【カーン】大将は状況を確認する為に天幕から幕僚達と共に出て来て、先程退出して行った者達の後ろ姿を直ぐに確認する事となった。


 彼等は、何故か最前線の方向に視線を漂わせたまま呆然としている様に見える。


 疑問に思いながら、【カーン】大将と幕僚達は彼等と同じ方向に視線を向けた。


 「一体、何が起こったのだ?」


 そんな呟きを誰かが呻くように言うのを聞きながら、【カーン】大将と幕僚達は倒れ伏しながらも自分の耳を抑えて藻掻き苦しむ最前線の兵士達を見せられる。


 そんな状況になった原因も把握出来ていないのに、望遠鏡で【ドラッツェ帝国】軍が籠城している砦を窺っていた幕僚が声を上げた。


 「敵が、敵が門を開けて突進して来ます!」

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― 新着の感想 ―
[一言] またもや、辞書片手に「巨犀」(きょさい)ロシアの民間伝承に登場する巨大な伝説上の動物とありました。すごいですねぇ~、ほんま、知りませんがな(笑)、まぁ、戦いがあっという間に終わりそうですが、…
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