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第二章 第31話 新規部隊の特訓③ (【バルト】大尉との試合①)

 俺は呼吸を整える為の息吹を行い、身体の中を駆け巡る螺旋力クンダリーニを落ち着かせながら、ゆっくりと試合場に登壇して来る【バルト】大尉を待つ・・・。


 【バルト】大尉は、先程までの俺の試合を見ながらも、かなり落ち着いた態度を取っていて、精神面の成熟を感じさせる佇まいを見せている。


 そして【バルト】大尉は、瞑想していたらしい閉じていた眼を開き、俺に声を掛けて来た。


 「・・・ヴァン殿・・・、私は今から己の持つ最大限の能力を全開にする為に、魔力を用いた或る秘術を使用する。

 ヴァン殿も、ご自身の能力を最大限使用出来る手法を取って頂きたい!」


 その明らかに今の俺の状態よりも、此れから己自身に施す技術が上だという自信を【バルト】大尉から感じ、その特に気負っている様子も見せない様子に、一切のハッタリは無いと判断した俺は、その場に座り込むと【結跏趺坐】に足を組み直すと、【小周天の法】を越える、現在の俺が到達している最高の法を使用する覚悟を決めた。


 その法とは、本来は外法と呼ばれるモノを昇華発展させたモノで、とても普通の人間には進められない技術である・・・。


 何故なら、此の技術は【アース】に於いて大昔から書物等には記載されず、ある一定の能力を備えている者達にしか口伝という形で伝えられていた技術で、【アース】に於いても【ナノマシーン】が発展した事によって初めて理論が完成した程の代物である。


 その名は、【月の法】或いは【月の雫】と呼ばれる技術。


 本来人体には、チャクラは7つしか存在しない・・・。


 しかし、人類の祖と言って良い類人猿の類は短いが恐らく尻尾を備えていて、その付け根には8つ目のチャクラが有ったらしい。


 【アース】の【ナノマシーン】研究者達は、人類の人体を精査する事でその痕跡を見つけて、その8つ目のチャクラに【獣のチャクラ】と名付けた。


 更に様々な検証を得る事で、その【獣のチャクラ】の能力と力の総体を調べる事で、ある別の方法論も成り立った。


 それこそが、【月の法】或いは【月の雫】と呼ばれる技術。


 つまり人体の中心線上にしかチャクラの配列にしか無いのであれば、人体から離れた部分でもチャクラと同じ性質と中心線上の延長線上にさえあれば、恐らく【小周天の法】を活用出来ると想定出来た。


 ならば頭上の位置に両手でプラーナを回転させながら、【念玉】とでも呼べるチャクラを擬似的に作成し、8つ目の【獣のチャクラ】に対抗し得る9つ目の【月のチャクラ】とでも呼ぶべき能力を持たせる。


 概算ではあるが、【獣のチャクラ】を発動させた段階で、螺旋力クンダリーニは凡そ通常の【小周天の法】を用いた場合に比べると16倍に達し、【月のチャクラ】を発動させると単純計算で32倍に到達する。


 当然、メリットだけが存在する訳では無く、実際に以前【月のチャクラ】を発動させた【月の法】を行った場合は、その後に同等の【小周天の法】を始めとした呼吸法での能力向上は、3日間出来なくなる。


 だが、そのデメリットなどは【バルト】大尉の望む全力での闘いという、漢の言葉の前には霧散してしまった。


 (始動! 【月の法】!)


 そう心の中で呟きながら、俺は頭頂部の直上で両手の手の平を合わせると、両手の間にプラーナを回転させながら、【念玉】とでも呼べるチャクラを擬似的に作成し、9つ目の【月のチャクラ】を目覚めさせる。


 そして計8つのチャクラで生み出した螺旋力クンダリーニを、【獣のチャクラ】が有るとされる部位に叩きつける!


 瞬間、本来存在しない筈の【獣のチャクラ】が発動し、まるでマグマの様な螺旋力クンダリーニが、身体の中心線を貫きながら他のチャクラ全てを励起させる!


 その本来ならば、有り得ない2つのチャクラを加えた、計9つのチャクラは最早、人の限界など軽く凌駕した謂わば神の領域まで俺を引き上げた・・・。


 恐らくは、傍目から見たら空間すら歪んで見えているだろう俺に対して、【バルト】大尉も信じられないレベルで俺の螺旋力クンダリーニに対し、魔力を凝集して己の身体を覆い尽くし、俺と同等に空間が歪む程のレベルまで達していた。


 最早、訓練の範疇を完全に逸脱した二人の間には、試合という概念すら存在せず、二人の間の空間が軋みを上げているのを、離れた場所から見ている全員が固唾を呑んで見守る。


 何方からともなく近付いた俺達二人は、共に同じモーションで拳を振り上げると、同時に相手に対して叩き込んだ!


 ズドムッ!


 とても人間同士のぶつかり合いで生まれるとは思えない音が鳴り、そのまま拳での殴り合いが二人の間で交差する!


 ズガガガガガガガガーーーーーー!!


 それぞれの打ち込む拳は炎の様なモノを纏っていて、凄まじい威力を秘めているのは傍からでも想像がつくのだが、、実際の処、双方の肉体には届いていない。


 何故なら拳を纏っている炎の様なモノは、それぞれの身体にも纏い付いていて、其の表面をお互いに突破しようとしているのだが、お互いに突破する事は達せていない。


 (・・・驚いたぞ・・・、此の段階まで引き上げた俺に、此処まで付いて来れるとはな・・・

 だが、それはあくまでも身体能力の話しだ。

 【アース】で培われた集大成の武術を受けて貰おうか!)


 次の瞬間、俺は殴り合いを止めて、まるで止まったかの様にその場に立ち尽くす。


 いきなりの俺の行動に、訝しんだ【バルト】大尉も一旦身体能力の確認をする為の殴り合いを止めて、恐らく自前で習得している武術の構えを取った。


 その構えは、両手を手刀の形で揃えて相手に対して構える、双刃の構えにも似ていた。


 その構えに対して俺はまるで無警戒な感じで無造作に歩み寄って行ったので、【バルト】大尉は警戒しながらも間合いに入った瞬間にジャブを放って来た!


 そのジャブを捌く様子も見せずに、俺が摺り抜ける様に【バルト】大尉の懐にスルリと入ったので、顔を引き攣らせながら膝で迎え打って来たが、何故か過程も判らずに空中に放り投げられていた。


 困惑の度合いを増した顔をして、【バルト】大尉は必死に距離を取って再度別の構えを取り、俺に対して来た。

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