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第二章 第21話 ベネチアン城上空の戦い④

 背中と腹部に穴を穿たれた怪物は、怒り狂った形相で両腕と残った触手を振り回し、俺と【魔人ブレスト】の特別製PSパワードスーツを振り払おうとして来た。


 ブオーーーーン


 と唸りを上げて振り回される怪物の両腕と残った触手を掻い潜り、それなりの距離を取って俺と【魔人ブレスト】は怪物の様子を窺う。


 怪物の背中と腹部に穿たれた穴は凡そ1メートル程で、体長130メートルの巨体からしたら余りにも小さな穴だが、硬質な外骨格を貫いた事で怪物自身は相当驚いている様だ。


 怪物は俺と【魔人ブレスト】の特別製PSパワードスーツを睨みつけると、徐ろに身を竦めて縮こまると、いきなり体表に纏い付く触手を逆立てて剣山の様にすると、そのまま回転し始めて怪物は俺と【魔人ブレスト】の特別製PSパワードスーツ、そしてアンジーと【ゲイリー】の部隊に向かって突進して来た。


 ある程度、そういう攻撃も有り得ると考慮して置いた我々は、かなりの余裕を持って退避しながら遠距離攻撃を仕掛ける。


 だが、その牽制程度の遠距離攻撃ではやはり全然効かないらしく、怪物は段々と速度を増して行きながら我々を追い詰めるべく、動きをランダムにする事で退避する場所を徐々に削り始めた。


 ならばっ!


 「【魔人ブレスト】よ!

 再度俺達による突貫攻撃で、奴の動きを止めて更に外骨格への穴を生じさせて、切り札たるアンジーの乗る守護機士【アテナス】の【ブレスト・キャノン】で奴の内部に攻撃を届かせるぞ!」


 「判ったぞヴァンよ!

 今度は二人で真正面から貫こう!」


 そう声を掛け合って、俺と【魔人ブレスト】は共に愛機を怪物のやって来る正面に向かわせ、小型ドローンによるバリアーを機体前面に何十にも張らせた!


 予想通り怪物は俺と【魔人ブレスト】の意図を見透かした様で、それでも自信が有るらしく更に回転数を上げながら、凄まじい速度で突っ込んで来る!


 「行くぞぉぉーーー!」


 「雄々雄々々々ーーーー!」


 俺と【魔人ブレスト】は雄叫びを上げて、その凄まじいばかりの怪物の特攻を真正面から迎え討つ!


 ドガガガガガッ!


 とても戦いで上がる音のレベルを越え、天変地異の際に上がる音が鳴り響き、二つの塊はぶつかったまま停止していた。


 怪物の回転は急停止して、その外骨格の胸部には俺と【魔人ブレスト】の特別製PSパワードスーツがそれぞれ持つ、斬艦刀と大剣がものの見事に突き刺さっていて、目論見が達成された事が窺えた。


 しかし、その為の代償として払ったものはかなりの物となった。


 先ず、俺の特別製PSパワードスーツは下半身が失われているし、【魔人ブレスト】の特別製PSパワードスーツは両腕が失われている。


 つまり、相打ちに近い形となってしまったのだが、我々にはまだ戦力が残っている!


 「今だ! アンジー! 俺の側に来い!」


 「判ったわ! ヴァン!」


 俺の意図を理解したアンジーが、守護機士【アテナス】とお供を連れて怪物の胸部に向かって殺到する。


 それを血走らせた眼球で捉えた怪物は、剣山の様に立たせた触手を投擲武器の様に射出して、邪魔しようとするが当然【ゲイリー】の部隊がその剣山の様になった触手を迎撃する。


 問題が解決されて無傷で辿り着いたアンジーの守護機士【アテナス】は、俺と【魔人ブレスト】が開けた怪物の胸部に有る大穴に、最強武器の【ブレスト・キャノン】の発射口を密接させた。


 「喰らいなさい! 此れが守護機士【アテナス】の最強武器【ブレスト・キャノン】の威力よ!」


 ズガガガガガガガガーーーーーーー!!!


 次の瞬間に発生した凄まじいエネルギーの奔流は、怪物の外骨格の内部に叩き込まれて、アッサリと怪物の身体を爆発四散させてしまった!


 完全に決着が着いたので、【閉鎖フィールド】は解除されて通常次元に戻ってきた我々を出迎えたのは、割れんばかりの歓声の嵐だった。


 小型ドローンによる次元を越えた中継映像は、全国各地にも置かれた大型パネルや立体フォノグラフィーとして、随時国民と周辺各国の来賓に映像として中継され、全ての状況がリアルタイムで把握出来ていたのだ。


 「・・・ば、馬鹿な・・・、あの怪物は、【クライスト教団】の奴等が、一国を屠るには十分過ぎて周辺各国も更地に出来ると太鼓判を押した程の、怪物である【ガガ】なのだぞ・・・、然も念入りに奴の【狂乱】を起こす為の装置まで用意したのに、新生ベネチアンに被害を少しも与えずに滅ぶとは・・・」


 未だに映像を投影している【シャルレ・フランク三世】は、映像内で茫然自失しながら何やら口走っていたが、暫くして気が付いたらしく、慌てて映像を打ち消してしまった。


 まあ、あれだけ威勢良く登場したのに、繰り出した怪物共も全て討ち取られた上に、殆んど我々に被害を与えられなかった事実に、恥ずかしくなったのだろう。


 こうして俺達は【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】の結婚式への妨害という、国家レベルでの嫌がらせを完全に終結させたが、此の変転を機に状況の変わった国際情勢を、我が国に有利に運ぶ為の周辺各国と諸外国との外交は今夜から始まるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 出来れば、もっと敵が悔しがる様を、見たかったですけど、まぁ、今後も色々仕込んでいそうですから、爽快な一撃を期待しています!
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