第二章 第17話 【フランソワ王国】国王【シャルレ・フランク三世】の妨害
曇天を切り裂くように、ベネチアン城の遥か上空の空間に、凄まじい稲光りが轟音と共に鳴り響く!
【ソロモン】の72柱の使い魔の内、此方側の36柱以外の残りのあちら側の36柱には、表向き【フランソワ王国】側の味方のままだが、心情的には既に此方側に寝返っている存在が多く、表立って味方は出来ないが情報面で【ソロモン】に重要な情報を事前に教えてくれている者が居る。
今回の結婚式当日を狙った妨害工作も、彼等からかなり以前から教えて貰っていたので、準備と対策を十分に用意出来た。
しかし、逆に言うと結婚式を狙っているのは判ったが、結婚式を取りやめにしてしまうと、どんなタイミングで奇襲されるか此方としても困ってしまう。
なので敢えて結婚式を行って、敵の奇襲なり妨害工作をさせてからそれ自体を打ち砕き、敵側の計画した目的を無駄な努力だと打破する必要が、今後の俺達の望む国家運営にはいるのだ。
案の定、気付いていない振りをしながら、様々な公式行事をこなしていたのだが、正直な処、ひたすら敵の行動に対応しなければならない、と待ちの状態を強いられる時間は、俺にとって鬱憤がひたすら
貯まる精神的に辛い状態だった。
漸く、奴等が行動を起こした事で、実のところ一番喜んでいるのは自分だろうと、やや自覚しながら俺は適切な対応を各部署が取る様に指示し確認していった。
遥かな軌道上には、母艦たる【天鳥船】が陣取って、宙域及び大陸の地域全体の監視を行いつつ、各【探査ブイ】とその傘下に有る小型ドローン数千機が、一帯の警戒と安全の保持を司る。
そしてベネチアン城の直上には【大型揚陸艦】が鎮座していて、隠蔽モードを行う事で敵に存在を隠して行動に移させる事を意図し、且つ、周辺各国の来賓やベネチアンの国民と一般民衆を守護する為に、母艦たる【天鳥船】のエネルギー支援を受けながら、バリアーや閉鎖フィールドを直ぐに構築出来る様にしている。
当然地上と海上には、【白虎軍団】と【青龍軍団】が配備されていて、あらゆる軍事行動への対処をするべく待機している。
其れ等の準備状況と確認を行い、準備万端と成った我等に対し、ある意味堂々と空間を割って映像がベネチアン城の上空に映し出された!
その映像には、非常に荘厳な背景が浮かび上がり、その中央にはやたらと巨大な玉座が存在していた。
巨大な玉座には、一人の男が座っていて、その衣服は何かの宗教の意匠をあしらった、非常に豪奢な代物なのが見て取れる。
「【シャルレ・フランク三世】!」
かなり大声で通信機を通し、【ソロモン】がその玉座に座る人物を教えてくれた。
(此奴が【フランソワ王国】の代表にして、アンジーの故郷である【オリュンピアス公国】と、今現在俺達が統める元【オリンピア大公国】に侵略戦争を仕掛けた元凶か!)
よくよく【シャルレ・フランク三世】と言われた人物を確認すると、特徴的な宗教衣装にかなり大き目の王冠を被り、手に持っている王錫は明らかに魔導具かアーティファクトらしく、強力な魔力を宿した状態である証に強烈な存在感を放っている。
そしてその映像内の【シャルレ・フランク三世】は、その特徴的な衣装のまま玉座から立ち上がると、徐ろに王錫を振りかざすと映像を通して語りかけて来た。
「【フランソワ王国】に逆らう不逞の輩に告ぐ!
余は、畏くも神聖なる【聖教】の神々から王権を神授された、此の世界に於ける王である!
そんな世界に於ける王である余に、愚かしくも逆らう不逞の輩に対し、余は自らの偉大さを示す為に神々に代わり神罰を与えてやろう!
精々惨めったらしく這いずり回り、苦しんで死んで行け!」
そう威嚇する様に宣言して来たが、その余りの傲慢な物言いに、我慢できなくなった俺は[ヘルメス]に命じて、俺の姿を奴の映像の対面に映し出してやった。
いきなりほぼ同じ高さに映像が映し出され、戸惑った顔をしている【シャルレ・フランク三世】に対し、PSの肩口に片足を乗せて立った姿を対面の上空に映しながら、奴に対抗するように演説してやった。
「お前が【フランソワ王国】の国王【シャルレ・フランク三世】か!
思った通り随分と傲慢そうな顔つきだな。
俺は、新生ベネチアン王国の親衛隊隊長にして此の国の守護を司る、【ヴァン・ヴォルフィード】だ!
お前が此れまでに行って来た数々の所業は、余りにも【フランソワ王国】周りの周辺各国や諸外国にとって迷惑極まりなく、民衆に塗炭の苦しみを強いるものだ!
俺の方こそ、お前とお前に味方する者達に対し、天罰を下してやろう。
楽しみに待っていろ!」
堂々とそう宣言してやると、奴は目を血走らせてワナワナと肩を震わせながら、此方を睨んでくる。