第二章 幕間 ある市井の少女の暮らしの変化⑤
寮に入り、様々なルールや【学校】との兼ね合いを寮長から教わり、結構深夜まで就寝出来ず、眠い目をこすりながら早朝に起き出して、冷たい水を洗顔に敢えて使用し、完全に眠気を飛ばして朝食までの行動である寮の周りの掃除を他の寮生と共に始めたの。
寮の周りの掃除を他の寮生と済ませてから、身体をシャワーで良く汚れを落として、寮にある食堂に寮生が全員集まり同時に朝食を済ませ、隣接する【学校】に登校する。 此れが朝の寮生活のルーチンなので今後も毎朝同じ事をする事になるわ。
【学校】ではそれぞれ30人程の同年齢で纏められた人数が一緒になり、一つのクラスを形成することで、同じ行動をする事になったわ。
でも当分の間は、睡眠学習プログラムを行う【コクーン】といった凄い装置に、30人が一斉に寝そべる様に入り6時間後に目覚めた後は、【命水】と呼ばれる身体の調整水を飲まされて一日のカリキュラムは終わり、その後はそのまま寮に戻り、催眠学習の成果を確認する小テストを自主的に行ってから、朝と同じく一斉に夕食を摂ってそのまま交代交代で大風呂に入り就寝するのが、夜のルーチンワークになるわ。
あまり自由も無くて、生徒から凄く不満が出そうだけど、実際は非常に生徒たちは満足していて、此の毎日のルーチンワークを喜んで受け入れているわ。
理由は簡単で、毎日行っている睡眠学習プログラムは、着実に自分の頭脳に良い影響を与えていて、今迄は全く知らなかった様々な知識が完全に自分のものと成っていたり、例えば物を数える時には直ぐに頭の中で数式が構築されて、暗算する事で大凡の数値が簡単にはじき出せたり、全然使用出来なかった【生活魔法】の類が当たり前の様に自然に使用出来る様に成っていたの。
朝に行う寮の周りの掃除の時、身体が寒いと感じたら新陳代謝レベルをアップして体温調節したり、疲れたと感じたら疲労回復の【初期魔法】を自身に掛けたりと、ごく自然に寮生皆が行っているわ。
然も、【命水】のお陰と思われるんだけど、身体が弱いと自己申告していた寮生や朝に弱いと言っていた寮生も、日に日に活力を増した顔つきに成っていき、一週間経った今ではまるで別人の様に元気溌剌と言った感じに成っちゃったわ!
だから皆、日々進化して行く自分自身に驚いていて、然もそのお陰で病気にも罹らずに、健康が保持される現状を物凄く喜んでるわ。
かくいう私も、元のスラム生活では直ぐにお腹を下してしまい、寝込む事が多かったのに、今ではそんな予兆を感じる事も無くて非常に健康なお腹に改善されたわ。
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それから2週間後、規定の睡眠学習プログラムのカリキュラムを終えた私達は、実践として各インフラ整備の現場での様々な人形の使われ方を見に行ったの。
人形は、ヴァン様が【星人】として所持して来た超技術の産物で、ありとあらゆる人がするには危険な場所や、あまりにも人が行うには負担の大きい仕事を、人の代わりに請け負って仕事をする一種のゴーレムなの。
人形には幾つかの種類が有って、巨石や壊れた家屋を撤去する巨大で非常に力強い【重機タイプ人形(パペット】、新たに敷設された道路を走る様々な車両を運転する【操縦者タイプ人形】、様々な高層建築物の建造及びそのメンテナスを一手に引き受ける【高度建築物専用タイプ人形】、これらの人形を統括しそれぞれの状況を常に監視するコントロール・ルーム等が、今回の私達の視察だったの。
「・・・ヴァン様が齎してくれた人形群は、本当に凄いものですね!」
近くで同様に視察している私達のクラス担任に、同意を求めた物言いで私が話すと、私達のクラス担任は頷きながらも、こんな事を言ってきたの。
「確かに凄いわね、 だけど留意しておかなくちゃいけないのだけど、此の人形群を自由自在に指揮したり、人形群をどの様に配置した街造りや計画を立案する事を、貴方方に将来的に担って貰うのよ!」
愕然とした想いでクラス担任に私達全員が向き直ると、この際だと言わんばかりにクラス担任は改めて私達を見渡して説明して来たわ。
「何を驚いているのかしら?
何故貴方方に催眠学習を施し、【命水】を毎日飲料することで、従来の此の世界の民を遥かに越える精鋭中の精鋭を育てている理由は、全て今後のベネチアンを中心とした生まれ変わる世界を担って貰う為なのよ!
皆さんは、その事を常に意識して学びを進めて、行動はその事を意識して行いなさいね!」
そんなとんでもない事を説明と言うより、宣言をされて私は半年前とはまるっきり変化した人生に、目眩を覚えながらもある種の覚悟を決めている自分の変化に驚いてしまったわ・・・。