第二章 第2話 【オリュンピアス公国】捕虜解放作戦②
新進の幕僚達と俺で練り上げた作戦を実行すべく、俺は直接作戦を遂行する部隊を招集した。
招集した部隊は、俺の親衛隊の中でも精鋭中の精鋭の5人と、【白虎軍団】の中から3人、【青龍軍団】の中から2人と云う合計10人で構成されていて、かなりの強者が揃っている。
此の面子を俺は目の前にして、俺は頷きながら彼等の目の前に立ち、早速にこやかに笑いながら彼等に語りかけた。
「皆、中々の面構えで俺としては非常に期待している、さあ早速手合わせをしようじゃないか!」
彼等は俺のとんでもなく武闘派の性格を良く判っているので、若干苦笑しながらも直ぐ隣に有る道場に向かい、己の得意な練習用の得物を選ぶと整列した。
「さあ、やろうか!」
俺が練習用の道着にインナースーツを変化させて、整列している端の者から指名して試合を始めた。
「押忍!」
最初の相手の者は、俺と同じく徒手空拳で向かって来て、こめかみを護るかの様に両腕を畳んで頭をカバーしつつ、ジャブを放ちながら俺に向かって来たので、俺も両手を手刀の形で揃えながら両爪の構えを取り、ジャブを捌きつつ裏をかいて繰り出された裏拳を、手刀の形にしていた手で巻き込みながら右肩を背中側から極めて、うつ伏せに組み伏せた。
「次!」
二番手は、オーソドックスな剣が得物らしく、標準的な木剣で斬り掛かって来た。
それに対し俺は同じく木剣で相手をした。
二合三合と木剣で打ち合うと大体の彼の剣の質が判ったので、勝負を着けるべく彼の懐に飛び込んだ。
顔を引き攣らせた彼の胸元に木剣を差し込む様に入れ込み、手首を絡める様にして木剣を手放させてそのまま仰向けに引き倒した。
「次!」
今度は、1メートル半程の棒を得手として扱うらしく、棒を旋回させながら俺を迎え撃つ待ちの構えを取った。
棒を旋回させている事で、ある種の結界を作って来て俺の打ち込みを警戒している。
スルスルと俺はその旋回し続ける棒が届かないギリギリの線まで歩み寄り、ピタリと足を止めて彼と同じ木製の棒を扱きながら中段構えを取ると、その体勢のまま棒を貫く様に繰り出す。
それを後退することで避けた彼は、旋回させていた棒を上段から叩き付けて来たので、俺は半身で避けて棒を下段に構え、道場の地面を叩くかと思われた彼の棒が、地面を叩かずに横に跳ね上がって来たので、それを下段に構えた棒で防ぐとそのまま棒の軸をクルリと回転させて、彼の手から棒を奪い取り、棒を彼の首筋に添える形で流れ作業の様に、彼を地面に引き倒した。
そんな形で、残りの7人とも次々とそれぞれの得物に合わせて試合を終えてから、俺は講評を全員に与えた。
「君等の実力は、通常の武闘家レベルで考えれば、相当上位なレベルに達しているが、知っての通り我々が挑む事になる相手は、もしかすると人間の枠を越えた存在の可能性が高い。
なので、通常の人間が相手の対応に固執せずに、臨機応変の対応を取れる自然体からの技を幾つか準備しておいて欲しい。
当然君等からの相談に俺は積極的に応じるつもりだ。
必ず此の潜入作戦を成功裏に終わらせて、仲間を救い出すぞ!」
「「判りました!」」
す答えてくれた彼等は、直ぐに俺の周りに集まると、一人ずつが自身の構えや技を見せて、その問題点や改良点を全員で指摘しあい、より良い技術に進化させるべく努力し合う。
彼等には出発までの短い1日半という時間を、修練に明け暮れて貰い。
その間にも、俺は旗下の親衛隊員をサポート要員として編成し、合計100名のサポートチームを編成し終えると、まだ明確な指揮官の居ない空軍から50名の軍人を抽出して、各々が操縦する小型ドローンで恐らくやって来る【フランソワ王国】の空中からの迎撃部隊への対抗を指示した。
杞憂に過ぎなければ良いのだが、どう考えても俺としては【フランソワ王国】が【ドラッツェ帝国】に侵攻するに辺り、空軍戦力を一つも投入していない事が気掛かりだった・・・。
【オリアス】と【ビフロンス】が明かしてくれたのだが、敵方の元同僚の使い魔達の中でも10人程が空を飛べる上に、空戦に特化した軍団を所有しているらしい。
しかし、【フランソワ王国】は我々との戦争や【ドラッツェ帝国】への侵攻戦でも、其れ等の部隊を投入していない。
とすると、恐らくは自国内の空域防御にしか使えない数しか用意が出来ていないか、まだ戦力としての訓練や質が達していないかの二つでは無いかと予想した。
此の考えが正しければ、【フランソワ王国】にとってはある意味に於いて、最重要な拠点と言える【ソロモン】の研究所がある山脈と、連絡が取れなくなる事態になれば、惜しみなくその空戦戦力を投入して来るのではないだろうか・・・。
その対策の為の空軍による小型ドローン部隊だが、十分な戦力とは自信が持てず、俺は近い将来に空軍の戦力拡充を図るべきだと、思いを進めるのだった・・・。