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第一章 第95話 大公国首都決戦後始末

 対【ヤヌコビッチ】戦も終わり、我々はとんでもなく膨大な後始末の為の作業が有る事に、正直目眩すら感じながらも少しづつでも解決する為に、緊急性の有無で順序を着けて物事を進めて行く事に決めた。


 先ずは、全く人の居ない都市となってしまった首都をどうするかと云う話しなのだが、正直な処【ヤヌコビッチ】が後から【MMマイクロ・マシーン】を補充する様に、首都の地面から供給を受けたので、未だに植物の根の様な形で首都には【MMマイクロ・マシーン】が多く存在する可能性が高い。


 なので、一旦は首都には手を着けずに放棄してしまい、後で【MMマイクロ・マシーン】を無害化するか、完全に除去してから住民が住める様に復興する事にして暫くは棚上げ状態にする事にした。


 かと言ってこのままの状態で首都を放置して置くと、王国や他の国によって無人化してしまった首都を乗っ取られかねない。


 その懸念を解消する為に、結局例の【オリュンピアス公国】と同じく、首都のみと云う形ではあるが【閉鎖スペース】という名の、超科学の空間断絶処理を行う事に決めた。


 【閉鎖スペース】とは、【亜空間スペース】の一部の技術を使用した亜流の手段で、実体を亜空間に移動させずに現状のままで空間を固定した上で【時間凍結】させる、俺の故郷である【アース】の超技術である。


 そのままの状態で【閉鎖スペース】を保持する為に、母艦【天鳥船アメノトリフネ】が軌道上からその状態を維持出来る様に、1基の【探査ブイ】を【オリュンピアス公国】の軌道上に専用で割り当てて固定化させた経緯がある。


 同じ処置をした【オリンピア大公国】首都は、向こう少なくとも3ヶ月は閉鎖する事になり、首都の港湾施設と主街道を利用する中継的な物流は、代わりとしてベネチアンがその全てを一手に担う事になった。


 取り敢えず、何時までも【亜空間スペース】に大公国の首都住民や徴集された民衆は、入れたままでは非常に問題なので、少しづつではあるがベネチアンの郊外に建設している、野戦病院の様な臨時医療施設で療養して行く事にした。


 実際の処彼等を詳しく診察してみると、どうやら彼等は精神的な催眠術だったり、魔法的な催眠魔法で操られていた訳では無い事が直ぐに判明した。


 彼等の身体には脳下垂体の部分にある物体が寄生させられていた。

 此の寄生体は奇妙な事に神経細胞に良く似ていて、既存の植物とほぼ同じの物体であり、恐るべき事にかなり高度な神経細胞と同じ働きをする事が出来る様であった。


 つまり、此の寄生体を植え付けられる事で、まるでゾンビの様に大公国の首都住民や徴集された民衆は、【ヤヌコビッチ】によって操られていた訳だ。


 逆に言えばその寄生体を取り除いた上で、元の神経細胞を復活させて体力を回復させれば、彼等は簡単に元の身体に戻る事が出来る。


 此の手順を大型パネルを使用して、細かく彼等を担当する医者や医療に携わる看護員に教える事で、迅速に彼等が理解してくれたお陰で、流れ作業の様に彼等はドンドン回復して行った・・・。


 だが大きすぎる問題が俺達には大きく横たわっていた。

 流石に未だ【オリュンピアス公国】の住民に、全ての住居を用意出来ないベネチアンでは、彼等を受け入れる事が出来そうに無いのだ。

 其処でアンジーは【オリンピア大公国】の全ての地方都市や街、そして村々に協力を願い出る事になった。


 当初は各地方都市を領する、地方貴族の家族達はあまり協力的では無かったが、俺達が回収した例の木製の棺に入れられて居た地方貴族の当主達が、しっかりとした医療施設で療養させて居る実態と、他の貴族や知識人達も同様に回復させている姿を見てもらう事で、協力体制を築く事に成功した。


 そんな風に地方貴族達と良好な関係を築けたので、ある程度の数の大公国の首都住民や徴集された民衆達を、地方都市でそれぞれの規模に応じて難民となった彼等を、家族ごとに分配して受け入れてくれる事になった・・・。


 まだまだ俺達の拠点であるベネチアンを始め大公国の全域は、今回の内乱が余りにも深刻な傷となってしまい、此の傷は今後数年間に渡って頑張って癒やすしかない。


 そんな事を考えながら、俺達は諸々の庶務を[ヘルメス]が統括するコンピューターや、人形パペットが操る各種のデバイスの手を借りながら、ドンドンと処理して行き漸く一息つけたのは大公国首都決戦から一週間経った頃である。


 その日は、穏やかな日差しが俺の執務室に差し込み、アンジーとリンナそしてリンネの姉妹と、アンナにミレイが久しぶりの休日という事で、お茶を喫する為に俺の執務室まで来てベネチアンで最近流行って来た、【オリュンピアス公国】の郷土で有名なお菓子である【バウムクーヘン】を持参して来た。


 当然の様に執務室に常備している紅茶セットを、アンジーとリンナ・リンネの姉妹が使用して林檎の風味の効いた【アップル・ティー】を人数分用意してくれた。


 「・・・素晴らしい香りの【アップル・ティー】と、美味しそうな【バウムクーヘン】だね。

 大分【オリュンピアス公国】の人々は落ち着いて来たのかな?

 郷土のお菓子を作る店を出店して、繁盛してるそうじゃないか・・・」


 「そうね、当座の出店費用も低利で貸し出した上に、生活する分のクレジットも家族分まで与えているから、非常に生活にゆとりが有るらしくて、結構良い材料でお菓子を作れているらしいわ」


 「本当に美味しいから、私達の通う【学校】でも此の新しいお菓子屋さんは大人気よ!」


 「そうなのよ! それに此の【アップル・ティー】も隣に出来た喫茶店で買った茶葉なの!」


 「やっぱり! 中々手に入らなくて大人気のお茶だって聞いてますよ!」


 「そうなんですよ~、私も以前に並んで買おうとしたんですけど、買えなかったんですよね~」


 そんな風に、平和的な会話をする皆を見て、漸く落ち着けて来た現状に俺は心穏やかに【アップル・ティー】を飲みながら、【バウムクーヘン】を美味しく頂いた・・・。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何故か、お菓子や飲み物に【】?一瞬技名や、特別な名かと思った。まぁ確かに、お菓子の名も特別かも(笑)
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