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 狩りを始めて3ヶ月経過した。


 僕はようやく自力で魔物を仕留めれるようになった。俊敏魔法で素早く距離を詰めて、剣で斬るという程度のレベルだが……八歳にしては上々だろう。


 ジェイは気配を殺す素質を持っているらしく、相手に悟られないように弓で殺すのが得意らしい。

 実際に気配を殺して狩りをする様子を見せてもらったが、自然と一体化してると言えばいいのか? 全然気づけない。目を離したら見失いそうだ。


 誘拐や暗殺が楽に出来そうな素質で羨ましいな……


 やはりジェイに教わるようにしたのは正解だった、彼は動物や魔物の習性を熟知している。

 そしてジェイ、かなり扱いやすい。狩りが好きだとか良さについて語ると、すぐに上機嫌になって色々喋ってくれる。


 魔物は目が赤い、好戦的、という部分を除けばかなり動物に近かった。特別な魔物以外は魔法を使ってこないらしい。

 そして心臓部分には「核」というものがあり、これが魔物生命活動を支えている。


 核から出るオーラが集まるとアンデットになるというのは常識だと言っていたが、前世の記憶がある俺にとっては大変興味深い。不老不死の研究に使えそうな気がする。

 ただ、かなり強いらしいので、今は発生しないように気を遣わなくては。




 そして大きな発見が一つ

 この世界では絆創膏何てものが無いため、切り傷が脅威だった。切り傷から病気を患って死ぬだなんて可能性も無くはない。

 だが木の枝に引っかかってもあまり傷が付かない。仮についたとしてもすぐに治る……これは『超強壮』と言ったか、その素質を手に入れてる可能性が高い。


 確かに当人の感情が影響与えてそうだな……不老不死への願いが、この素質を与えてくれたのかもしれない。体が丈夫ならば多少の無茶も出来るようになる。


 今はもっと狩りの腕を上げて、行動範囲が広がるように頑張ろう。薬草も欲しいし、まだまだ学ばなくては。



――――――――――――――――――――



 今日も狩りの練習をするためにジェイの所に行こうとすると、何やら商人の周りが騒がしい。


 珍しいものがあるのだろうか、覗き込んで見ると、そこには首輪を嵌められた子供の数人並んで居た。奴隷だ。


 奴隷自体は珍しいものでは無い。

 この世界には魔法があるが、前の世界ほど文明が発達している訳では無い。

 そのため、この世界では病気が大きな脅威なのだ。病気を患った時、体を休めないと簡単に死んでしまう。当然貧しい家庭では大人は働き詰めなので、早死しやすく、孤児が生まれ易い。

 自力では生き延びられない孤児が奴隷となり、農家の村人などに買われ、労働力を対価に養って貰う訳だ。


 そして首輪には、買取主には逆らえなくなるような特別な魔法が込められているらしい。


 奴隷を殺しても罪に問われることはなく、一部の貴族は暴力の捌け口にしたりしてるのだとか、怖いなぁ。


 では何が珍しいのだろうか。

 奴隷を注意深く見ていると、一人だけ全身傷だらけで目が赤い。


「忌み子か……」


 この世界には様々な目の色をした人が居る。

 僕や父さんは黒目で、母さんは碧眼だ。


 だが赤目は例外だ、魔物と同じ色をしている。

 更には身体能力が高い代わりに、獰猛な性格の人が多いと言われている。暴れられると厄介なのだとか。

 女神を信仰する一部の人からは、女神様に見捨てられた者、なんて呼ばれていて忌み嫌われている。


 『鑑定』の素質を使うと、普通の人は人間、と出るのだが忌み子は場合は、何やら黒塗りのような解読できない文字が出るのも拍車を掛けている。


 子供だと捨てられ冒険者になるか、奴隷として売られ、引き取られるのを待つ日々になる。


 村人も一目見てみようと集まってくるが、皆蔑むような目を向けて立ち去っていく。嫌悪感を隠そうともしない。

 商人も苦い顔をしている。売れ残ってるのかな……

 

 そんな冷たい視線に囲まれる忌み子は、俯いて微動だにしない。


「うーむ……」


 将来、研究の為に人体実験をしようと思っており、奴隷を買うことは視野に入れてた。

 でも今はまだ早いんだよなー、力も研究場所もない。

 首輪の魔法も完全には信用出来ないし、人体実験される事を悟って暴れられると面倒だ。


 だが忌み子は珍しい、それに優しくされたことが殆どないだろう。優しく接してやれば懐柔出来る……はずだ。

 忌み子は安くなっており、研究資金の為にコツコツ貯めているお小遣いでギリギリ買える。


 だが買えば間違いなく母さんの信用を失うだろう。子供達と遊ばず、本を読み狩りをして、仕舞いには忌み子を買うのだ。

 あまり良好な家庭環境を壊したくはない。

 迷う。非常に迷う。


 


「やあマークス君、元気だったかい?」


 商品の前で考え込んでいる僕に、商人が朗らかな声を掛けてきた。狩りを始めてからは図書館に行く頻度も減ったが、こうして時折雑談に付き合っている。

 彼の商売の様子も見てきたが、笑顔で優しいイメージがあるがお金にはしっかりしている。常連客の名前も覚えていて商魂たくましい人だ。

 商人は様々な立場の人と繋がっているはず、是非とも良い関係を維持しておきたい。


「はい、元気ですよ、狩りも楽しんでいます」


 後々研究に必要なものも買わなきゃいけない。

 ここで買って変人の上客として印象付けるのも手か?






「すいません、これ買ってもいいですか?」

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