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 俺はジェイ、とある村の狩人をやっている。

 狩人と聞くと、「動物や魔物をとにかく殺す人」なんて思われがちだが、実はそうじゃねぇんだ。


 森の中には傷を治してくれる薬草が生えている。それを収穫するのだって仕事の一つだ。

 魔物は人に害をなす存在だから、村の近くに居たら当然殺す、だが動物は無意味に殺したりはしねぇ。


 動物は人間じゃないだけで、俺らと同じ自然の中で必死に生きる生き物だ、それに動物には動物だけの世界がある。

 そこに人間が不用意に介入してしまえば、何が起こるか分からない。捕食される動物が減って飢えた肉食動物が村を襲いに来るかもしれねぇ。


 生息地から離れすぎた動物や、必要最低限の食料の確保の為として、感謝の思いを込めて殺している。


 ガキの頃は親父に無理やり狩りに連れ回されて、最初は嫌だったさ……こっちの都合も考えない親父が嫌いだった。

 だが、親父と動物の行動を観察したり、生きるために必死に他の動物を襲う姿を見て、何故か美しいと感じたんだ。


 どうやら素質も狩人に向いている、気配を殺すもの『気配遮断 』だったらしい。その事を親父に言ったら涙が出るほど泣いてやがったぜ、狩人やるなんて一言も言ってないのにな……


 今はもう親父は歳で動けなくなっちまった。

 俺が代わりに狩人をやっていて、この仕事に誇りを持ってやっている。


 ただ、たまに返り血を浴びて帰るからか、子供たちに恐れられるんだよな……悲しいぜ俺は。




 そんなある日、家に帰るとそこにはラースの家族が居た。

 ……奥さんはマーシャで子供がマークスだったか?


 話を聞くと、どうやらマークスが狩りに興味があるらしい。

 村から離れすぎないとはいえ八歳のガキには危ないんじゃねぇか? マーシャにそう言ったが、マークスが言って聞かないらしい。

 それにマークスの噂も聞いている。

 まだ小さいのに熱心に本を読んで勉強していると。少し変だが賢いんではあるんだろな。


「ジェイさんの言うことはちゃんと聞きます、よろしくお願いします」


 律儀に頭を下げてお願いしてくるマークス。

 おいおい流石に子供に頭を下げられちゃ断れねぇぜ!

 それにあのラースの息子だ。きっと大丈夫だろう。

 久々に子供に話しかけられた。嬉しいぜ……


「いいぜ! 狩りの良さを教えてやるぜ!」


 そう快諾したのだった。


 親父に上機嫌でその事を報告すると親父も喜んでくれた。子供だから目を離さないように、なんて繰り返し言い聞かされたがな……



――――――――――――――――――――



 今日辺りでマークスと狩りを始めて三ヶ月か?


 今、マークスは初めて一人の力で魔物を仕留めた、剣と魔法を器用に使いこなして。まぁかなり弱い方のやつだが、三ヶ月でこのペースは相当だろう。

 にしてもこいつ、殺すときに躊躇しなかったな……弱いとはいえおぞましい赤目をした魔物だ。俺は最初はビビってたんだがな……


 狩りを始める時にまず、どこまで早く走れるのか、魔法はどれくらい使えるのか、色々試してみたんだが……こいつは最初から優秀だった。

 子供なのに俊敏魔法を使って、足場の悪い森の中を平気で走りやがる。体が小さいのが功を奏してるのか? 怪我も全然しねぇ。最近の子供はこんな凄いのか?

 



「ジェイさん! 殺れましたよ!」


「あぁ見ていたぞ、よくやった!」


 教えたことは直ぐに覚えるし、言うこともちゃんと聞くし、丁寧な言葉を使ってくる。こいつ実は大人なんじゃねぇの? なんて思った時もあったが、素直に喜んでいるマークスを見て、そんな思いは吹き飛ぶ。


「これが魔物の核ですか」


 マークスが魔物の斬られた胸から、禍々しいオーラを出した赤く脈動する物体を取り出す。


「あぁそうだ、こいつを魔法で攻撃したり、剣で斬ったり、足で踏み潰せば動かなくなる、それで完全に死ぬ訳だ」


 踏み潰すのは靴が汚れるからオススメしないがな、と付け加える。

 へぇ……とマークスが唱え、赤く脈動する物体を剣で斬る。脈動が止まった。


「核を潰さないとダメなんですか?」


「あぁ、禍々しいオーラが出ているだろ、これが集まり過ぎるとアンデッドが生まれちまう」


 こいつは分からないことがあると、すぐ質問をしてくる。俺にとっては常識だろ、ってことも聞いてくるから面白いぜ。賢すぎるのかたまに考え込んじまうけどよ。


 ……狩人の後継になってくれるかもな。

 いや、そんなレベルに収まるか?

 こいつは将来ラースのような大物になるかもしれねぇ。


 魔物を殺せて上機嫌なマークスの後ろ姿を見て、ジェイはそう思うのだった。

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