転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [2面]
死後の世界で神様に転生を希望したら、未来の地球に転生してきた。
そこは宇宙人に支配されたディストピア、起死回生の作戦は、こどものころに熱中し、真横から見ていたシューティングゲームの世界だった!
数機で出撃し、大気圏を脱出できた僚機は右城という女性の乗る一機のみ。
人類の命運を賭けた2Pプレイが始まった……
『 たった5秒で、す、凄いっ! 』
「知ってたら、なんてことないから」
■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 1面 ]
□ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 2面 ]
■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 最終面 ]
■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ エピローグ ]
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2面ボスは多数の大出力レーザー砲を正面に向けて盛大に乱射してくる強襲機、画面右端へ移動して背後に回れば攻撃に当たらない。後方への攻撃手段があれば、武器を切り替えて弱点の『コア』を攻撃するのが一般的な攻略方法だった。
奪取したのは、僚機に譲った1つだけ。
後ろに撃てる、右城に任せた。
『 やった~、やりましたっ!! 』
「だろうな」
スピーカー越しに嬌声が響く。
一点を除けば予定通りの戦果。
『 でも、砲台が私を狙ってましたよ 』
「だから落としたろ、テンカセになった」
『 テンカセ……ですか? 』
「点数稼ぎの略」
『 ええ、鮮やかなお手並みでした! 』
やけに声が弾んでるな?
鼻歌まで……どうした。
『 ピンチに颯爽と! さてはお主? 』
「好感度UPとかハートを射抜く、そういうたぐいの点数稼ぎじゃない」
前世では文字通り砲台に点数があった。
全損にして稼いでから、無防備なコアを攻撃。それが高得点を狙うならセオリーだったから、全面クリアしていなくても咄嗟に対応できた。
2面ボスそのものの外見、不安は的中する。
画面端という概念が無かったのは不幸中の幸い。ゲーム画面のように目に見えない壁があったら、右城は近距離から攻撃されて一溜まりもなかっただろう。
固定式の砲台が回転した、これは決定的だ。
前世のゲーム知識と、転生先は似てるだけ。
それでもだ、こちらの優位性は揺らがない。
なんの情報も無く初見で挑むわけじゃない。
「敵は見えるか?」
『 静かですね 』
「予定通りなら、巨大戦艦だな」
『 予定通り、なんの予定? 』
「オレには前世の記憶がある。ここは、子供のころにプレイしていた横スクロールシューティングゲームそのもの、同じ展開をなぞってるから攻略法がそのまま通用するんだ。敵キャラが多いのは協力プレイだから難易度調整だと思う」
『 ……オカルト談義? 』
けらけらと高い笑い声がスピーカーを振動させる。
未来の世界で、この内容だもんなぁ。
うまく説明しようにも根拠がないし。
『 地獄から蘇えって、ゲームの続きですかぁ! 』
「善良な市民を勝手に地獄に落とすなって。コロニャって怖い病気が大流行して、医療機器メーカーで働いていたから、増産体制に対応しろって設計から工場勤務に移動を命じられて、2年ほどで過労死したと……」
『 お? 9.11ですねぇ 』
ここで「神様に聞いた」と言ったら、オカルトどころかラノベ好きの厨二病患者と酷いレッテルを貼られてしまったろう、前世なら。
オギャーから再スタートして年齢も14歳になったばかり。この時代はラノベを読むほど余裕が無いし、そんな心配はなくなったから女性相手に話してみたけど、信じろってほうが無理がある。
それにしても、9.11とは。
右城は歴史が苦手なのか。
「9.11は同時多発テロだろ」
『 11年間、生物兵器が変異を繰り返して、宇宙人に提供された薬で終息した。9%まで人口が減少していたらしいですよ? 最初の攻撃です 』
「宇宙人の、最初の攻撃?」
『 ぐっとリアリティが増しましたね 』
「その説明でガタ減りだろ、陰謀論かよ」
ビーッ ビーッ ビーッ ビーッ
溜息を掻き消す警報音、モニター類が一斉に現宙域からの離脱を告げる、慌てて操縦桿を握り反応炉を叩き起こす、一拍遅れて右城機も加速を始める、その眼下に広がるのは異常すぎる光景だった……
空虚な宇宙空間に突如として発生したプラズマの発光現象、直径何キロか見当もつかない真円、それが立体的に変形していき、ナニカを具現化していく!
『 転移してきましたね 』
「空間自体を歪めてか!?」
知らない演出だ。
知っていれば、事前に警告できた。
演出は知らなくても、コイツは記憶にある。
ゴクリと喉が鳴った、これほどデカいとは ――
「 巨 大 、 戦 艦 ッ 」
『 納得です。貴方は敵を知ってるようだと、博士が 』
トリガーを引いて射出した弾が、強固な船体にパチパチ当たり、それで消えた。武器を切り替えて撃つ、また切り替えて撃つ、結果は同じ、攻撃を受け付けない。ひととおり敵から奪い取った武器を試すほど、手持ちの燃料はない。
チャチな戦闘機に比べて、質量が桁違いだ。
たった2機でどうにかできる相手じゃない。
山かなにかのようだ ――――
『 どうやって倒すんですか? 』
「知らない。こんなの、知らない」
『 ゲームの続きなんでしょ? 』
「ゲームじゃない、知らない……」
溜息のひとつも聞こえてきそうな、怖い沈黙があった。
右城は子供に言い聞かせるように、静かに、ゆっくり。
話し始めた。
『 3面。 どうしてました? 』
「さん、めん?」
『 3面です 』
「さんめん……」
『 最初の巨大生物を1面ボス、先程の光線兵器主体の長距離強襲機を2面ボスと呼称して、後ろを攻撃できる私にグル~ッと迂回して倒してこいと言ったでしょ。それならここは3面。 ……ですよね? 』
「ま、待ってくれ!」
『 敵さんに言ってください 』
これだけの戦力を投入してきた、番狂わせを起こすには奇手を放つ必要がある。その奇抜な戦術が、あえて狭い空間を無理して進むゲームの画面だったとしたら、どうだ?
3面は、画面に収まりきらない巨大戦艦。
船体は破壊不可能、その理由は単純明快。
地 形 扱 い だったから。
時計回りに砲台を潰しながら進んでいく。
これは、続編などでも定番の流れだった。
……何故だ?
2面ボスは距離を取れたから、予定調和を崩されても助かった。
こ い つ は 、 違 う 。
瞼を閉じて、深く深く息を吸い込む。
沁み込むように、すっと腑に落ちた。
巨大戦艦は、御約束。
予定調和は崩れない。
「空間座標を巨大戦艦に固定しろ」
『 はい? 』
「接近戦だ。ギリギリまで接近すれば、射線は頭の上を通る。一発も当たらない。砲台を全部潰しながら一周して戻ってくる」
『 この巨体を相手に? 相当数の砲台が配置されてますけど? 』
「デカブツだからだ。全砲門一斉射でも喰らえば、避けようがない」
『 弱点狙い、ではなく? 』
「主砲の奥なんだ。硬くて、時間がかかる」
チャージを終えた敵巨大戦艦の荷電粒子砲が太さ数百mの強烈な一発を放った。威力に反して速度は遅く、身軽な戦闘機相手に有効な兵器とは言いがたい。余裕で回避しながら、置かれた状況を呑み込むように右城が唸った。
『 あれが主砲、その奥にあるんですか 』
「ゲームと同じなら、と注釈は付くけどな」
入手した兵器をチェックしながら、壊せるところを目視で探す。
特徴的な形状、色、キャプチャーした画像データに次々マークして送信すると、スピーカー越しに『 了解っ! 』と元気な声が聞こえた。
船体の舳先を目指して、一気に加速する。
右城機は、やや右側を並走飛行してきた。
また、不安が過ぎる。
「ゲームの2面ボスは、砲台が旋回しなかった」
『 ……でしょうねぇ 』
「全く同じじゃないんだ」
『 協力プレイだからですよ、貴方は敵を知っています 』
声が弾んでいる。
もうやめてくれ。
「頼む、期待しないでくれ」
『 宇宙人と戦ったんでしょ? 工場勤務で、死ぬほど 』
「なにを証拠に……」
『 ずっと予定通り。前世の記憶を信じてます 』
「しくじったら死ぬんだぞ」
『 また助けてくれますよ、きっと、颯爽と! 』
根拠が薄弱すぎるだろ。
思わず涙が滲んできた。
オレが転生してきた先は、至って普通に、未来の地球。
子供のころ熱中した横スクロールシューティングゲームの続きをしているのに、前世で覚えた攻略法が通用しない、安全地帯もない。残機ゼロ、1UPアイテムは出ない、失敗したらマジで死ぬ。
ままならない状況にある。
なのに、どうだ ――――
「ウシロのくせに、前向きなことしか言わねぇし」
『 ……点数稼ぎになりました? 』
「言ってろ」
初めて見る、この荒涼とした景色。
真横からしか見たことがなかった。
デカい、まさに巨大戦艦。
「ったく、これじゃ苦手な縦シューだよ」
あまりの広大さに思わず苦笑する。
とても独りで攻略できそうにない。
が。
「3面を攻略する」
『 お供します 』
「右城……右半分、任せるぞッ!!」
『 ほいな! 任されました~♪ 』
でも、心強い相棒がいる。
初めての、協力プレイだ。
こんな人生も、悪くない。
振り返ってる暇はない、前だけ向いて……
「あ、うしろ」
『 はい! 』
「じゃなくて」
『 はい? 』
「後方から、巨大ロボ1つ」
『 キ ャ ―― ッ !! 』
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■ 転生先が『 残機:ゼロ 』の世界なんですけど?! [ 最終面 ]
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