第十五話 君の街まで
ものすごいイケメンにキスされた気がした。
朝のにおいがして、彼女はベッドから体を起こす。一階に下りてリビングに入るが、誰もいない。時刻は一一時を回っていた。
ベーコンエッグトーストをささっと作り、食べながら支度を始める。ショートカットの柔らかい髪にワックスをつけて固め、ジーンズを履いて、白シャツに男物の年季の入った渋いジャケットを身にまとうと、彼女は街へと繰り出した。
街の雑踏や喧噪は、今日も街を色づかせ、何かいいことが起きそうな予感がして、足がはずむ。灰色の空模様だが、彼女はむしろそっちの方が好きだ。ショウウィンドウに映る自分の姿を、回転しながら全身くまなくチェックする。
「よし、今日もキマッてるな。どうだい?くま太郎」
背中に背負ったくま太郎に話しかける。テディベアは相変わらず何も語らない。虚ろな目と不気味な笑みを浮かべているだけだ。
「さぁて、待ち合わせは十二時。急がなきゃ」
彼女の姿は人ごみに紛れて、もう誰にも見えなかった。
この小説、知り合いに見せたら、「はぁ?意味分からん」って言われてけっこう不評だったんですよね。
ちょっと落ち込みましたけど、この小説を書いたことで得るものもあったので、自分的には満足してます。(俺はミステリーとかは書けないんだなってわかったし)
評価は作家の栄養源!