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1話 親友らしき人

10の月1日目の朝、西校舎前。

俺は一人の友人を待っていた。他の新入生は続々と校舎内に入っていく。中で張り出された紙で自分のクラスを確認するのだ。クラスは毎年変わる。皆この瞬間をとても大切にしているようで、中からは歓声やら落胆やらのざわめきが聞こえてくる。

この一年が楽しいものになるのかそうでないのかがかかっているらしい。

俺には関係ない。誰と一緒でも卒なくこなすだけだ。幸いにも程々に仲の良い友人は何人もいる。それに別に一人になったとしても問題はない。学校には勉強と剣の稽古をするために来ているのだから。


そんな俺でも特に気にかけているやつがいる。



「リットー、おはよー!」

それがこの、眩しいほどの笑顔を向けてくる友人フォルカー・シュヴァンである。

ダークゴールドの癖毛、オレンジに緑が交じる不思議な瞳を持つ少し小柄な彼はリズニア御三家の一つシュヴァンの本家次男である。性格は明るく人懐こく、そして思ったことがすぐ口に出てしまういわゆる"脳筋"である。

「おはよう、フォルカー」

「ついに今日から僕らも高等部生だね!」

「そうだな。何かが変わればいいのに」

「またそんなこと言って。だったら僕が変えてあげるって」

そう言うとフォルカーは俺の左腕に自分の右腕を絡めようとした。

そうはさせない。

俺は素早く腕を払い距離を保った。

「遠慮する」

「えー。刺激がほしいなら僕と付き合おう?」

「ないない。なんでお前と付き合わなくちゃいけないんだよ」

「だって、リットも僕のこと好きでしょ?僕もリットが好き。ほら、ばっちりでしょ?」

「お前の好きと俺の好きは違うだろ。俺は同性に興味はない」

「女にも興味ないくせに」

「ないわけじゃない」

「ほんとに?」

「そう言うお前はむしろ両方好きなんだろ?」

「そう、困っちゃうよね。でも、誰でもかんでも好きになるわけじゃないから。リットだから好きなんだよ」

「やめろ、周りからまた生暖かい目で見られる」

「いいじゃん。いい刺激でしょ?」

「そんな刺激は求めてないから」


フォルカーは初等部生2年の時から仲の良い友人だった。一番長く続いている友人である。そんな彼は一年程前に俺に告白してきた。俺はどう頑張っても友人としか見れないというのを伝え続けているものの、ヤツのアプローチは止まらない。


いい加減距離を置こうかとも考えた時期も、実際に距離を置いた時期もあったけれど逆効果で公衆の面前でも堂々と愛を語るようになってしまったのだ。


幸いなことに、周りは"フォルカーの愛は犬がご主人様を愛してるのと同じような感覚"だと思っているらしく、本気にしていないようだ。それは彼の置かれている"特殊な環境"と、俺が本気で嫌がっている素振りも受け入れてる素振りもしないかららしい。

世の中は同性同士の恋愛に対して否定的だというところも大きい。

フォルカーが普通の感性の持ち主であればとっくに潰れているところだけれど、彼のメンタルは鋼並みなのだ。


正直、俺はフォルカーを嫌いにはなれなかった。もちろん恋愛的な意味で好きにはなれないけれど。

彼は俺にないものをたくさん持っている。だから彼と居れば何かが変わるかもしれないと期待している自分がいるのだ。

彼の好意に漬け込んでいると言われればその通りだが、彼との関係が壊れないうちはこうしていたいとも思っている。



もしかして、俺はフォルカーに執着しているのか?



「リットって、ほんとに僕のこと好きだよね」

「いや違う」

「友人としてだよ」

「そう、なのか?」

「そうだよ。だって、普通なら告白された段階でもっと拒絶するでしょ、きっと。でも君はそうしない」

「拒絶してもお前は追いかけてくるじゃないか」

「それは本気で拒絶してないからだよ。もう、僕のこと弄ぶのが好きなんだから。そういうプレイなんでしょ?」

「なんだろう。そうか、これが殺意か」

「やだ、そっちに目覚めたの?そういう方向はちょっと守備範囲外なんだよね」

「やっぱり、お前キライだ」

「そんな?!」



うん、やっぱり違う。いなくても大丈夫。


気のせいだったようだ。



俺とフォルカーは隣のクラスになった。



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