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ゆっくり投稿していきたいと思っています
俺の名前は開沼三田。幼いころはこの名前のせいでよくからかわれた。
あれは小学校の入学式のとき、新入生の名前を呼ばれるあの通行儀礼。
『1年2組6番、開沼三田くん』
「はい!」
元気よく椅子から立ち上がり返事をすると、ざわっと会場がどよめいた。後ろのほうからひそひそ話しが止まらない。
「あらまぁ、かわいそうに・・・・・」
「親はどうしてあんな名前をつけたのかしら・・・・・」
などと保護者の観覧席から話し声が聞こえる。もちろん俺の両親もそこに座っていたのだが。俺はこのとき何で自分がかわいそうなんだろうと思った。
三田、という名前は俗に言うきらきらネームだろう。例えれば光宙、茶彩羅などがある。さすがに自分の子でなくともそんな名前をつけられたら同情せざるを得ないだろう。
『・・・ごほん。』
とざわめく会場を咳払いで鎮める司会者。「みなさん、静粛に」などと言葉に出さなかったのは、俺と俺の両親への配慮であったと最近気づいた。
―ちらっと両親のいる方を見ると、両親は周りの反応を気にもせず俺に向かって微笑んでいた。
親が気にしてないなら俺も気にしないでいっか、などと思っていたら右隣に座っている女の子がマイクで名前を呼ばれた。
『1年2組7番、北見寧々(きたみねね)さん』
「はい!!」
と元気よく返事をする。北見寧々が着席すると、急に体をこっちに向けて声をかけてきた。
「三田君ていうんだね」
「そうだよ」
「実はサンタさんの生まれ変わり?」
「え・・・」
何を素っ頓狂なことを言っているんだこの餓鬼は。
―もちろんのこと俺が小学一年生のときからこんなに口が悪いわけはなく、最近になって思うようになったことを話している。
「わかんない」
「きっと生まれ変わりだよ、だって名前同じだもん」
サンタさんだと信じて疑わない彼女。決め付ける感じが一年生って感じ。
昔から俺は人と同じものを嫌った。服が偶然お揃いだったり、小学・中学ともに、学年ごとに上履きの色が統一されているのもすごい嫌だった。だからこっそり上履きを違う色で塗りつぶしたりしたが、先生にばれて怒られた。
もちろんサンタさんと同じ名前だからといって、生まれ変わりと決め付けられるのも嫌だった。
「サンタさんは髭が生えてるでしょ?僕にはないもん」
たしかに、と彼女は納得したように見えたのだが、
「あ!じゃあ、クリスマスのときはよろしくね!」
と言っていたのでまったく理解していないようだった。俺はこの北見寧々という女の子が自分のことをからかっていると思い、少し不機嫌になった。俺のことをサンタの生まれ変わりと信じて疑わない。
それから俺はその子に話しかけられても完全に無視し、入学式が終わるまでふくれっ面でいた。
しばらくして入学式が終わった。
明日から新しい学校生活が待っている。帰ったら明日の準備をしなくては。
そして俺は機嫌が悪いまま、学校の帰り道を両親とともに歩いていくのであった。