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「あ、ゼロさん!お待ちしておりました。ギルドマスターが、二階でお待ちです」


昨日の報酬を貰うために冒険者ギルドに入ると、ゼロ達に気づいたアリーがそう言った。


「わかった。勝手に行っていいのか?」


「私が案内いたしましょう」


声が聞こえて振り返ると、前に会った先輩受付嬢のシャインが立っていた。


「御三方とも、どうぞこちらへ」


シャインに誘導されて二階へ上がると、明らかに他とは違う、剣の形が掘られた豪華な扉の前に案内された。


__コンコン


「ギルドマスター、ゼロさん達がお見えです」


中から、入ってくれ、という声が聞こえた。


「失礼します」


シャインが扉を開けると、部屋の奥で書類に目を通しているレヴェルの姿があった。


そんなレヴェルの姿に、昨日レヴェルの仕事を増やしてしまったことにさらに罪悪感を感じながら、部屋へと入る。


「よく来てくれた、ゼロくん。さ、そこのソファに座ってくれ」


レヴェルが示したのは、高そうな、艶のある黒色のソファだった。


「ああ、じゃあ失礼する」


「「失礼いたします」」


ゼロ達はそれぞれそう言ってから、ソファに座った。


「悪いな。手を進めないと、仕事が今日中に終わらないんだ」


レヴェルは書類の乗った机でペンを動かしたまま、話す。


「いや、気にしなくていい」


ゼロはレヴェルのその姿に、昔の自分に重ねて懐かしく感じていた。


「助かる。じゃあ、手短に話すが、今回、君達を呼んだのは、今回の報酬の件と、頼みたいことがあったからだ」


「報酬についてはわかるが、頼み?」


ゼロが不思議そうに訊く。


「ああ。しかし、まずは報酬についてから話したいと思う。君達が今回の件に大きく貢献してくれたことは、他の冒険者からも聞いているし、私も理解している。そのため、君達には特別に魔物の数に対する報酬の他に、金貨一枚を追加することにした。報酬も金貨一枚も下の受付で受け取ってくれ」


「それはありがたいが、いいのか?」


ゼロが気にしているのは、ギルドの資金のことだった。ゼロは今回参加した冒険者達が一斉に魔物を換金すれば、ギルドの資金が尽きるのではないかと懸念していた。ゼロはそんな時にさらに追加で金貨一枚も渡して大丈夫なのかと考えていた。


「ああ、それは大丈夫だ。昨日のうちに近くの支部から資金を事補助してもらったからな。代わりに近くの支部にギルドで換金された魔物を送ることで契約をしたんだ。そのおかげで魔物の価値も下げなくてよくなった。まあ、ギルドという組織はこれくらいで揺らぎはしないさ」


まあ、借りは出来たがな…。と、レヴェルは苦笑を浮かべる。


「そうか。なら、ありがたく貰っておこう」


「そうしてくれ。それで、頼みなんだがな…」


「ああ…」


ゼロは真剣な面持ちでレヴェルを見た。


「ゼロくん、そんなに緊張しなくても大丈夫だ。頼みとは言ったがあくまでもし、何か情報を掴んだら教えて欲しいという程度だ。頭の片隅にでも、置いといてくれればいいさ」


「わかった」


ゼロが頷いたのを見ると、レヴェルは話し始めた。


「実は昨日の件だが調べたところによると、どうやら自然には起きないことらしい。といっても、まだ全て調べれた訳でないから、詳しくはまだ何も判明していない…。まあ、誰かによって仕組まれたもの、という可能性もある、という程度だ。で、ゼロくんには似たようなことがあったり、今回の一件について何か情報が手に入ったら、知らせて欲しいんだ」


「それだけでいいのか?」


ゼロは早く調べなければ、またこんなことが起こるのではと心配していた。


「…君の言いたいことは分かる。もちろん、現在すでに専門の機関に調査はしてもらっている。この町の領主も快く協力してくれているしな」


だからあまり重く捕えなくてもいいし、心配もしなくていい、と言い、レヴェルは笑みを見せた。


「わかった。何か情報が掴めたら、知らせる」


「ああ、頼んだ。もちろん、情報を持ってきて貰えれば、報酬も出そう。話はそれだけだ」


レヴェルは書類を書く手を進めながら、そう言った。


「わかった。情報が掴めたら直ぐに知らせよう。じゃあ、またな」


「「失礼します」」


ゼロはレヴェルに手を上げて部屋を出るとそれに続いて、レオとリオも一礼して部屋を出ていった。


「本当に、無事に解決してくれればいいんだがな…」


レヴェルはゼロが出ていった扉を見つめて、小さくそう呟くのだった。




「さて、報酬も無事貰えたし、これからどうしようか?」


ゼロは受付で受け取った重たい皮袋に嬉しく感じながら、そう訊いた。


「僕はどこでもいいよ。ゼロさんについて行く」


「俺も、ゼロさんが決めたところでいい」


重たい皮袋にニヤつきを隠せないゼロを見て、二人はそう言った。


ゼロは、皮袋を見つめながらふと思う。

そういえば二人に、俺が転生者だってこと言い忘れたな…。

ま、今度でいいか。


「じゃあ、ギルドで何枚か依頼受けて、レベル上げにでも行くか」


金貨三枚と銀貨十枚か…。


これだけあれば、取り置きしている奴隷の二人も普通に買えるな…。


この世界のお金の価値は、銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚、金貨百枚で白銀貨一枚、白銀貨十枚で白金貨一枚となっている。


いや、先に冒険者のランクを上げるか。それに装備品の新調もしないと。


俺の双剣もだいぶ錆びてるからな…。まあ、あれだけオーク斬りまくればそうなるか。治すか、新しいのを買うかどっちかしないとな。それに、俺の武器が錆びてきてるってことは、リオとレオの武器も同じことになっているかもしれないしな…。昨日のオーク戦で俺の武器と同じくらい消耗してるだろうからな。

まあ、もう少しくらいはこの武器でも戦えそうだし、とりあえず新しい依頼見とくか。


あ。あと、二人の防具ももっと丈夫な奴を買わないと…。


やっぱり、普通の依頼だけで生活が出来るくらいのお金が稼げるように、ランクを早く上げないとな。

いつあるか分からない緊急依頼に頼る生活じゃ、そのうち追い込まれるのは目に見えてるし…。

今ある金だって、こんだけあっても三人分の装備を全部良い奴で揃えようと思ったら、ほとんど無くなるだろうからな。


そんなことを考えて、ゼロが依頼が貼ってある掲示板を見ていると、Sランク冒険者のブラットが声をかけてきた。


「確か、ゼロといったか?また、会ったな」


ゼロは振り向いて、ブラッドに向き合う。


「ブラットか。昨日ぶりだな」


「「ブラットさん!」」


リオとレオが声を合わせて、そう言った。


「ああ。お前達も、しっかり身体の疲れは取れたか?」


ブラットが、リオとレオに顔を向けた。


「はい!ブラットさんに選んでもらった武器、すごく使いやすくて」


「俺もです!初めて使った気がしないくらい、使いやすかったです!」


リオとレオは眩しいくらいの笑顔で、そう言う。


「そうか。それは良かった。そういえばお前達、昨日は大手柄だったそうじゃないか。レヴェルが昨日、自慢げに話していたぞ」


「「ほんとですか!?」」


「ブラッドさんが武器を選んでくれたおかげです!!」


「うん!!ほんとに使いやすかったです!!」


ブラッドってレヴェルと仲良いのか。意外だな。どっちもあんまり、よく話すタイプには見えないが。

てか、二人ともブラッドに懐きすぎじゃないか?

ゼロは心の中でそんなことを愚痴りながら、ブラットに話しかける。


「なあ、ブラットは今日、何か予定あるか?」


「今日は何も無い。流石に、昨日の今日で依頼は疲れるからな」


「そうか。なら、もし良かったら、一日付き合ってくれないか?」


「別にいいぞ。…何をするんだ?」


ブラットは、欠伸をしながらゼロを見た。


「助かる。俺達に、助言して欲しいんだ」


「助言?それは戦闘のか?」


ブラットは嫌そうに言った。


「ああ。もちろん、戦闘には入らなくて構わない。後ろで俺達の戦い方を見て、助言してくれればそれでいい」


「まあ、それくらいなら、やるのは構わないが…。私は基本ソロだ」


ブラットはパーティでの戦闘は数える程しか、した事がなかったため、いい助言が出来る自信がなかった。


「それでもいい。Sランク冒険者のブラットだったら、どう動くかを教えてくれ」


「わかった。お前達がそれでいいなら、付き合おう」


ブラットが頷いたのを確認したゼロは、一度に受けれる限度である五枚の依頼書を持って、受付へと向かった。



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