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二人の戦い方は、それぞれの性格がとても現れていた。
レオは一撃で魔物を倒していく。その表情からは楽しんでいる様子が読み取れる。
レオの倒す手順は単純で、一手目に剣を構え、二手目に首を落として倒す。
そのため、一瞬で決着が着き、レオが通った後には魔物の死体だけが折り重なって倒れていた。
一方リオは、自分に強化魔法をかけた後、ナイフで確実に魔物の弱点を突いていき、徐々に弱らせて倒すという堅実な方法をとっていた。
「リオ、そんな戦い方してたら、俺に追いつけないぞ!!」
笑みを浮かべたレオのその言葉に、リオが口を尖らせ、ムッとした表情を浮かべる。
「じゃあ、僕、これから本気を出すから」
そう言ったリオは、ナイフで魔物の弱点を攻撃すると同時に、一際身体が大きい別の魔物に向けて、ナイフを持っていないもう一つの手をかざし、魔法を放つ。
『ダークホール』
すると次の瞬間、リオが手をかざした魔物が、黒い渦のようなものに吸い込まれ、消えた。
「やるな、リオ!だったら俺も本気でいくぞ!」
「いいよ!僕だって、もっと頑張るから!」
二人とも、戦闘狂だったんだな……。
ゼロは二人を見てそんなことを思いつつ、剣を抜き、自分も魔物へと向かっていくのだった。
「どうしたっ!!もう終わりか!?」
ゼロは二本の剣で二体同時に倒していく。魔物の血を浴びながら、バタバタと魔物を倒していく姿はまるで悪魔のようだ。
そんな光景が延々と続いていた、ある時、一匹の魔物がゼロの攻撃を逃れ、ゼロのいる反対方向へと逃げ出した。魔物が逃げた方向にはレオとリオの二人がいた。
「二人とも、頼んだ!!」
それを確認したゼロは、二人に声をかける。
「うん!」
「わかった!」
リオとレオはそう返事をすると、走っていた魔物を挟み込み、逃げようとしていた魔物の動きを止めておく。そして、その間に魔物に追いついたゼロがトドメを刺す。
最初はぎこちなかったこの連携も、今ではスムーズに出来るようになっていた。
一方、その様子を見ていたブラットは三人の異常性を感じていた。
「三人とも先程より動きが良くなっている。……しかし、これは…」
ブラットは顎に手を当てて、一人で考え込む。
しばらくして、ブラッドが顎に当てていた手を下ろした。
「ゼロ、少しいいか?」
そしてブラットは、自然と口元を緩ませて魔物へと向かっていくゼロを呼び止めた。
「はぁはぁ…なんだ?」
ゼロは息を整えながら、ブラットのところに向かう。
「楽しんでいるところ、悪い。少し、お前のステータスを見させて欲しい」
魔物と戦っているリオとレオを一瞬見つめ、名残惜しそうにこちらを向いたゼロに、ブラットがそう言った。
「いや、それは全然いいんだが…ステータス?」
「ああ。先程も見せてもらったが、今度は私の魔法で見させて欲しい」
ブラットのその言葉に、自分が転生者だということがバレたのかと思ったゼロだったが、そんな訳はないと思い直す。
「別にいいが、何でだ?」
なるべく、自然な感じになるようにしてブラットにそう尋ねる。
「ああ、先程から見ていて思ったのだが、お前には何らかの加護がついているのかもしれない…」
ブラットにそう言われ、ゼロはその可能性を考える。
加護か…。確か、リオとレオのステータスを『鑑定』した時には、称号に加護を受けしものってやつがあったな。
それとはまた違うのか?まあ、それがあったのは称号の欄だったし、俺のステータスの称号の欄にあったのも、転生者だけだからな。
やっぱり、加護と称号は別物なのか?
だとすれば気になるし、俺からも是非頼みたいくらいだが、俺の『鑑定』で調べても分からなかったものを調べれるってことは、『偽証』を使っていることもブラットが調べたらバレる可能性があるんだよな……。
とりあえず、スキルPtで『偽証』のレベルを最大まで上げておくか。
スキルPtというのは、レベルが上がるごとに溜まっていき、スキルのレベルをあげる時に使うものだ。
しかし、スキル自体『鑑定』を使えなければ、見ることも出来ないため、鑑定を持っていない人はほとんどが一度も使うことなく、一生を終えるだろう。
ゼロはスキルPtの存在に『鑑定』を初めて使った時に気づいたが本当に必要なスキルが手に入った時の為に、使わずに取っておいていたのだった。そのため、ゼロのスキルPtは今は1000近く溜まっていた。
名前:ゼロ
種族:人族
性別:男
Lv:50
HP 3500
MP 1650
力 3500
防御力 2700
俊敏力 2850
得意武器:双剣
無属性
スキルPt:1100
鑑定 Lv1
偽証 Lv1
称号
転生者
『偽証』のついでに『鑑定』も最大まで上げとくか。
名前:ゼロ
種族:人族
性別:男
Lv:50
HP 3500
MP 1650
力 3500
防御力 2700
俊敏力 2850
得意武器:双剣
無属性
スキルPt:900
鑑定 Lv MAX
偽証 Lv MAX
称号
なし (偽証中)
スキルPtの減りは200Pt。ということは一つを最大まで上げるのに100Pt使ったのか。
二つとも最大はLv5だな。スキルは全部Lv5が最大なのか?
まあ、それは後から調べてみるか。
「わかった。じゃあ、見てくれ」
しばらく経ってから、ゼロはブラットにそう言った。
「ああ。じゃあ、失礼する」
ブラットは一言そう言うと、何かを呟いた。
『เหจวเ』
『鑑定』じゃないのか?明らかに違う言葉、というかそもそも言語自体が違うような…。
「ふむ。どうやら、お前の称号が原因のようだな」
何!?レベル最大の『偽証』だぞ…。見破られたのか…?
「…原因ってどういうことだ?」
ゼロは驚きを隠して、冷静にそう訊いた。
「ああ。調べてみたところ、どうやらお前についている加護に、経験値三倍の効果があるようだ。普通は加護も称号として表示される。だが、お前の加護は称号の欄ではなく、加護として表示されているようだ。これはとても珍しいな」
俺に加護があるのか。だが、何の加護だ?てか、『偽証』は見破られてるのか…?
まあとりあえず、俺のレベルがいきなり凄い上がったのは、経験値三倍があったからか。
でも俺の『鑑定』じゃ、この加護は見れなかった。やっぱり、ブラットが使ったのは、『鑑定』じゃないってことか?
いや、俺が前に『鑑定』でステータスを見た時は、まだレベルが最大じゃなかった。それが見れなかった原因か?
「そうか…。ちなみに俺には何の加護がついてるんだ?」
ゼロは疑問が尽きない中、表面上は冷静を装って、そう尋ねる。
「ああ、それは、……ここで言っていいのか?」
ブラットは周りを見渡してから、言った。
「……一応、小声で言ってくれ」
ゼロは『偽証』が見破られている可能性を覚悟して、ブラッドにそう言った。
「わかった。加護の表記は、女神エリーシャの愛し子だ。効果は先程も言った通り、経験値三倍。それと、これは俺の想像だが、称号として表示されなかったのは、加護の効果がとても強いことが原因だと思う」
ブラットは淡々とした様子で、そう言うのだった。