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異世界召喚物語-世界守護者と終末の使徒-

作者: copu

 終わりは始まりであって、終わりではない。

 

 世界は平等ではなく、善悪もない。


 故に、信じるのは己のみである。


 汝、隣人を信じるな。世界を信じるな。


 寮に残された唯一の証拠品。机の上には、走り書きされたメモにそう書かれていた。

 




 それは、唐突に起こる。いや、前触れはあった。予想はされていた。そして、そのために異例のセント王立騎士団を随行させて外縁実習を行ったのだ。しかし、敵の強さが予想以上であった。


 世界を脅かす終末の使徒。今まで単独行動しかしていなかった使徒たちだが、歴史上初二人の使徒が手を組みこの事件を起こしたと確認された。そして、それらに対抗する世界の守護者。異世界から招かれた勇者に聖女。各国から集った才能ある若者たち。

 後に、黄昏の一刻と歴史に残す事件となる。



 周辺6カ国から若者たちが集い、競い、力を高める総合育成機関。セントラルヘキサーー通称ヘキサ。今は年間に数回組まれる外縁での実習演習が行われていた。各5人から6人でチームが組まれ、課題をクリアしていく。今回のカリキュラムは、魔物が多く住む千年樹の森の探索。日程は五日間で組まれ、夜営も含まれていた。緊張感を保つため、学生たちには隠していたが、念のためセント王立騎士団が配備され、もしものために備えていた。



 黄昏時が始まる。すでに、夜営の準備はほとんどのチームが完了したのだろう。初日の夕飯時という、気が緩みやすい時に、それは起こった。


 一番最初に気づいたのは、誰だったのだろうか。それは、一人の少年。茶髪の冴えない顔立ちをした学生であった。腰には何の変哲もない剣を帯びている。その剣は、何があったときのために肌身隠さず持っているよう厳命されていた。その少年に遅れること数瞬、聖女と賢者と呼ばれる少女たちが気づいた。森に先程までいなかった異形の気配に。


 あとは、連鎖的に森の異変に皆が気づき始める。唐突に現れるスケルトンやグール、ゴーストといったアンデット。インプやガーゴイルといった悪魔。どれも、低位の魔物だが、異様に数が多く、軽く千体を越えていた。そんな状況に学生たちは演習の一つだと勘違いを起こす。しかし、これが演習ではないと気づくものたちがいた。低位の魔物なかに明らかに中位以上の気配を感じていた。一般の学生たちが相手をするには厳しすぎる敵。その狙いは一つ。

 それは、未だ成長段階の勇者と聖女たちを殺すこと。それに気づくのは、勇者たち本人が率いるチームの面々。そして、機関の講師陣、騎士団上層部。大人たちは敵の狙いが分かっていたが、救援に動こうとした矢先、森に周囲には結界が張られ、転移などの移動魔法を阻害していた。また、そんな大人たちの元には、中位以上のアンデット、悪魔が迫っていたのだ。




「行くなっ!」


 ハルトは少女に手を伸ばすが、空をつかんだ。

 少年の目の前からスッと消える黒髪と緑色の髪をした二人の少女。

 黒髪の少女、メグが転移魔法に掛かったことに気づき、シルファはメグに駆け寄った。風の大精霊の加護を受けているシルファは、目に追えない早さでメグに近寄ったものの転移魔法自体は作動し、一緒に転移されてしまった。


「クソッ!」


「・・・・・・申し訳ない。転移阻害が出来なかった」


 とんがり帽子を被った青髪の少女ムゥは帽子の柄で目を隠した。それは、魔法を阻害できなかった不甲斐なさからであろう。図書館の魔女とも呼ばれる彼女は、大陸でも指折りの魔法使い、三大賢者の一人でもある。ムゥは森に張られた結界の解析に入る。使われている魔法は今現在廃れている古語魔法。それだけで、この魔法のレベルの高さがわかる。


 ハルトは少し息を吐き、冷静さを取り戻す。

 強制転移魔法によるチームの分断。勇者ハルト率いるチームは三分割されてしまったのだ。真っ先に異変に気づいた茶髪の少年は有無を言わず瞬時に飛ばされ、チームで合流しようとしたところで、また、二つに分断されてしまった。

 唯一良かった点は、他者に危害をあまり加えることを得意としない聖女メグと近接戦闘を得意とする剣士シルファの二人組であったこと。


「とりあえず、合流はあとだな。来るぞ」


 三人の中で一際、背が高く体つきも逞しい少年、ダグラスは森の中から発せられる気配に気づきは戦闘体制に入る。


「終えるか?」


「追跡中。大丈夫。転移阻害も無効化するよう術式を生成中。任せて」


 ハルトは聖剣を構える。白く輝く聖なる剣。世界を作ったとされる至高の一振り。異世界から召喚された勇者と共にに現れた聖剣である。

 素早く陣形を構成する三人。勇者含む五人の実力はすでに学生のレベルを遥かに越えている。それでも、未だ学園に所属するのはこの世界を知り、少しでも実力を伸ばすため。実践だけでは得られない経験を得るためである。


「あいつは一人で大丈夫なのか?」


「・・・・・・どうだろうな」


「問題ないと思われる」


 そんななかはハヤトは一人だけ転移されてしまった少年のことを考える。6人目のチームメンバーであるが、その実力は勇者以上。謎が謎を呼ぶ少年である。下手したらこれも、その少年の仕業ではないかと考えられるほど。


「中位・・・・・・上位の悪魔もいる。気を付けて、私は癒しの術は不出来」


「攻撃を食らう前に殺ればいいんだろう」


「油断せずに・・・・・・最短で倒すぞ」


 森の中から現れるのは、グレーター・デーモンと呼ばれる発達した両腕を持つ上位悪魔そして、その悪魔に従っているガーゴイルやデビル・アイと呼ばれる中位悪魔。森では、アンデットの気配を感じたものの、アンデットの姿はここにはいなかった。




「うーん、ここはどこかな。いや、俺もこうなるとはなあ。ミスったなあ。護衛任務失敗したら怒られるぞ」


 屈強な悪魔に囲まれながら茶髪の少年、アルは刃渡り三十センチほどの短剣を腰から引き抜く。その様子はさほど慌てた様子は見えない。どこか、飄々としており、優に30体以上を越える悪魔に囲まれてるとは思えない。


「斬るか」


 その言葉と共に鞘から剣を引き抜く。一閃、たかが短剣の一振り。そもそも、剣の間合いさえ入っていない周囲の悪魔たちが横一線に切断される。その一撃だけで20体以上を軽く屠った。


「・・・・・・強いのもいるな」


 しかし、その中で数体生き残った悪魔がいた。紅く脈動する体躯。鋭く尖った二本の角が頭部から天高く映えている。灼熱を発する上位悪魔イフリート。また、その上位の魔物の中にも順列が存在する。特に名付けと呼ばれる個体名を持つ魔物たちは最上位の一角。


「我ナ名ハ、ア・・・・・・」


「いや、興味はねえよ」


 悪魔は自身の名を名乗ろうとした瞬間、その顔に短剣が突き刺す。そして、短剣が地面に落ちて鈍金属音が響く。イフリートがいた痕跡は何もない悪魔が死ぬときは実体が残らない。


「何ヲシタ?」


 残った悪魔はその光景に驚愕する。単純な物理攻撃を無効化できるはずの悪魔をいとも簡単に倒すことができる存在。そんな存在がいてもいいのだろうか。


「斬った。それだけだ。急いでるんで、次いくぞ」


 アルの手にはいつのまにか落ちていた短剣が収まっていた。どうからどうみても、ただの短剣にしか見えない。それも、魔法すら掛かっていない鋼である。悪魔はたちは自身の運命を悟る。悪魔の中でも、順列が高く、実力もある。しかし、それでも、目の前の人間には勝てないということを。


「おいおい、まだまだ続くのか。これ?」


 悪魔を倒したあとには、アンデットの第二陣が続く。これも、御丁寧に斬撃が効きにくい、効かないアンデットの群れである。しかし、それでも、アルの刃からは逃れることは出来なかった。




「こんばんは、こんなところで奇遇ですね」


 転移されたメグとシルファの前には二人の人影がいた。

 金髪に穏和そうな笑みを浮かべる小柄な少年。その少年の後ろに控える赤髪の青年。少年の服装は、メグたちがよく知る白を基調としたヘクサの学生服。


「シャルル君?」


 少女たちは目の前の少年のことを知っていた。シャルル・アンデルセン。ヘキサの中でも上位者だけが受けられる講義があり、その中のメンバーの一人。比較的、付き合いが狭いメグでも知っている少年・・・・・・所属する学科も同じで、席次の上位にいる少年。その穏和そうな雰囲気は、実際の性格も同様で、平日休日問わずに、時間があれば教会や孤児院を訪れ、メグもその姿を見たことがある。

 しかし、この異様な状況でその表情を見るとただただ、不気味さしか感じられない。その少年の後ろには、端正な顔立ちをした赤髪の青年がどこか不機嫌そうな顔をしながら控えていた。

 

「後ろに下がって」


 シルファはメグを自身の後ろに下げた。少年の背後から二体の異形が現れる。人の姿のようで、人ではない二足歩行した悪魔。顔は目も口もない、のっぺりとした凹凸がない顔。そして、特徴的なのが、右手が剣、左手が盾と両腕自体が武器となっている近接型の中位悪魔、ポーンである。


「あっ、こっちがほしいのは聖女だけなので、お引き取りお願いしても良いですか」


「ハッ? 何をいっているの?」


 フィルルは曇りがない笑みを浮かべてそういったとたん、ポーンたちが動き出す。悪魔たちは連携しながら、メグたちに駆け寄る。その中で、シルファは剣を構えた。メグと離れすぎるのは悪手。巻きこまない程度の距離感。剣を振るうなら、少しは離れた方がいいはずだが、シルファはその場から一歩も動かない。悪魔が剣の間合いに入った瞬間、シルファの剣に風が纏う。


疾風の一撃(エア・ブレイク)


 悪魔たちは左腕の盾を構えながらの、シールドラッシュで攻めてきた。しかし、シルファの剣は盾もろとも悪魔を切り伏せた。


「中位の悪魔を一撃・・・・・・強いですね」


 一撃で伏せられた悪魔を見て、シャルルはそういったのだ。しかし、その表情は特には変わらず焦った雰囲気も感じられない。

 通常、中位の魔物を倒すには、中級の冒険者がチームを率い戦うことが強いられる。それを、一撃で倒したその力は風神と異名として呼ばれるふさわしい力を持つ。シルファ・グランドール。グランドール王国の第二王女。風の大精霊の加護を持つ彼女の実力が、すでに一級。


「では、次はこちらです・・・・・・インペリアル・シャドー・デーモン」


 少年の影から実体化する漆黒を形取った異形。影から影へと移動する異能を持つ中位悪魔であるシャドー・デーモン。その、上位種のインペリアル。その実力は、上位の冒険者たちが束になってようやく勝てる悪魔。


「おまけにこの子もどうぞ」


 インペリアル・シャドー・デーモンの中から道化の仮面が現れ、そのまま仮面だけが宙に浮かぶ。そして、仮面の後ろから真っ白な手袋一組。これまた宙に浮かんだ状態で現れた。


「フィスト・フェイスですね。上位悪魔の中でも魔法に長けた悪魔です」


 メグはその悪魔の姿を見た瞬間、そう告げた。聖女との教育を受けているメグにとって、悪魔は天敵。その知識量も多い。フィスト・フェイスは上位悪魔の中でもあまり姿を見せることが少ない悪魔である。近接と後衛の組み合わせである。


『ヴァイス・ウェポン、ヴァイス・シールド、ブレス、シールド、マジック・ウェポン』


 インペリアル・シャドー・デーモンのからだが仄かに光始めた。宙に浮かぶ仮面から、どこか耳障りな甲高い詠唱が聞こえる。フィスト・フェイスは、インペリアル・シャドー・デーモンの後ろに下がり、支援魔法をかけているようだ。邪神に仕える暗黒魔法に、魔法使いが使う新代魔法。二つの魔法技術を会得しているようだ。


『セイクリッド・ウェポン、セイクリッド・シールド、ブレス・・・・・・デビルスレイヤー』


 メグも相手が魔法を唱えるとほぼ同時に、自身も魔法を使ったのだ。神聖魔法しか使えない、メグだが対悪魔につかえるスレイヤー魔法は強力で、単純な支援効果はほぼ五分となる。

 すると、残りは・・・・・・シルファの力次第。


 影が揺らぐ。その瞬間、二者の距離がなくなった。影を使った転移。シャドー・デーモンのスキルである。また、物理攻撃自体を無効化する力も持つ。


「行かせないよっ!」


 シルファと接敵した瞬間、影が実体化した。シルファの剣を影で形取った漆黒の剣で受け止めのだ。インペリアル・シャドー・デーモンは、シルファを無視してメグに近寄ろうとしたのだが、シルファの風が悪魔をとらえたのだ。

 影が剣、槍、斧と無数に形を変え、シルファを襲うが、その全てをシルファは受け止め、弾き返した。


「・・・・・・こっちの方が分が悪いかな」


 そんな中、メグはシルファを見ながらも、シャルルの動向が気になった。自身は特に魔法は使わず、二者の戦いを見守るシャルル。


「手伝おうか、悪魔使い?」


 どこからか反響しながら聞こえる女性の声。どこか楽しげに聞こえる場違いなその声。


「大丈夫です。そちらはそちらの仕事をしてください。死霊使いさん」


「ふーん、まあいいや。それよりも、彼すごいね。こっちも少し本気だそうかな」


「お任せしますよ」


「・・・・・・ふーん」


 シャルルは返事をしながら、ため息をついた。森の動向は、シャルル自身も把握している。勇者たちと教官、騎士たちはまだ来ない。しかし、最大要注意人物であるアルフォートについては、何とも言えない状況になっている。連れてきた上位悪魔の八割以上を向かわせているが、あまり効果が出ていない。強いて言うなら、足止めにもなっていない。向こうは、剣を一振りするだけで、悪魔たちが簡単に消えていくのだ。


「彼が来ると面倒なので、もう少し本気を出しますか」


「あ、あんたって、もしかして、終末の使徒? あの”契約者”悪魔使い?」


 シルファは風の力でインペリアル・シャドー・デーモンを吹き飛ばし、驚きで目を見開いた。メグも驚いた様子だが、少し納得がいった表情を見せたが、すぐに気を引き締めたように見える。

 そんな二人の様子に気づいたのが、シャルルは今一度二人のほうに、視線を向けた。


「ご紹介が遅れました。終末の使徒の一人、悪魔使い、シャルル・アンデルセンです。以後お見知りおきを・・・・・・”契約者”っていう二つ名は好きじゃないんですけどね」


 頭を軽く下げ、ニッコリと笑みを浮かべシャルルはそう告げる。その瞬間、シャルルの背後から無数の悪魔が召喚される。全て中位以上の悪魔である。


 悪魔使い。終末の使徒の一人。

 そもそも、終末の使徒とは、世界各地で事件を起こす謎の集団。その歴史は古く、前時代の魔導文明時代から存在していたことが書物に残っている。その中でも悪魔使い、死霊使い、人形使いの三人は、個々で軍勢。一人で国を落とすことができ、実際に悪魔使いは3年前に小国を落としていた。

 二つ名”契約者”は、数多の悪魔を召喚することから名付けられた。通常一体、一体、契約することで悪魔を縛っている。過去の魔導文明時代から見ても、異常すぎるほどの悪魔召喚スキル。それも、召喚後、悪魔の手綱を握り制御していることからはあり得ないとも言えた。多数魔導学会でも、その力の解明が急がれているが、未だ究明には至っていない。謎の契約技術。悪魔使いなら、世界一とも言えるだろう。そこから、”契約者”と呼ばれるようになった。


神聖なる神殿セイクリッド・サンクチュアリ


 聖なる光がメグから発せられ、周囲に投影される。周囲数十メートルを覆う球体上の結界。上位魔法に一つ、神殿を構築する魔法である。結界内の悪魔の動きが鈍くなり、中位程度の悪魔たちの体がだんだんと透けて消えていっている。悪魔を浄化する聖なる光を発しているのだ。


「神殿の模倣魔法。それも、このレベルは大都市の神殿レベルですね」


「・・・・・・殺るか」


 今までシャルルの後ろに下がっていた赤髪の青年が一歩前に出ようとしたが、シャルルが首を横に振った。一瞬だが、青年から発せられた殺気は本物で、メグたち二人の体は硬直した。


「物騒なこと言わないでください。別にこのぐらい、問題ないです・・・・・・」


『ワード・ブレイク』


 シャルルは一言、そう言ったのだ。その瞬間、結界に亀裂が入り、崩れていく。魔法を無効化する魔法だが、それは、術者の技能次第で色々と変わっていく。


「そ、そんな・・・・・・」


「簡易結界の中でも上位魔法の一つですが、対処方法は、いくつもあるんですよ。神聖魔法なら、僕も使えますし、このぐらい出来ますよ」


 風がざわつく。シルファは、一つのことに気づいたのだ。


「メグ、離れて!」


 吹き飛ばしたインペリアル・シャドー・デーモンの姿がいないのだ。無数に召喚された悪魔は、ダミー。本命は、シャドー・デーモンを紛れ込ますこと。上位悪魔であるインペリアル・シャドー・デーモンは、結界内でも最低限の行動制限だけで済むということに。


「えっ!?」


 メグの足元にある影がまるで生き物のように動き出す。そして、そこから一本の腕が生え、メグの足を掴もうとした瞬間ーー空から一本の剣が落ちてきたのだ。

 白銀に輝く一振りの大剣。そこから、発せられる聖なる輝きで、影に潜む悪魔が悶え苦しんでいることがわかる。


神聖なる力セイクリッド・フォース』 


 メグはすぐさま、足元目掛け退魔の光を放った。そして、視線を頭上に向けたのだ。そこには、地面に降りてくる三つの影がみえる。


「みんなっ!?」


「遅いんだから!」


 メグたちは一斉に歓声を上げた。そこには、勇者ハヤトたちの姿があったのだ。地面に刺さった聖剣を抜くハヤトは、無事な二人を見て安堵した。


「なるほど・・・・・・さっきの結界はダミー。勇者たちがこちらに来るのを察知されないためのものだったんですね」


 シャルルはメグが張った結界の意味に気づいた。結界を張ったことで一時的に外と中を遮断したのだ。そうすることで、勇者たちが移動していることを感づかれないようにした。


「それでも、すごいですね。森に張った転移遮断の魔法を無効化するなんて」


 感心するところは他にもある。勇者たちがいた場所からここまで軽く数十キロは離れている。森に張られた結界は転移阻害や場所を察知させないための偽装魔法も数多に含まれている。それなのに、ピンポイントでこちらを見つけ、来ることが出来るとは。感心、感心っとシャルルは嬉しいそうに、勇者たち5人を見た。


「お前は・・・・・・シャルルか?」


「シャルル・アンデルセン。神聖魔法学科の現、三席。今現在、二席と席次の争いをしている。得意系統は、回復魔法」


 ハヤトはシャルルの姿を見て、目を見開いた。その横で、ムゥは自身が知っている情報を告げたのだ。

 

「気を付けて、そいつ、終末の使徒の一人。悪魔使いよ!」


 大声でシルファはシャルルを指差した。シャルルがいたこと、そして、終末の使徒だと言われ、ハヤトたちは二度の衝撃を受けることになる。少し前までは普通に一緒に抗議を受けていたクラスメートの一人が敵だと言うことに。


「お前の目的はなんだ?」


「聖女を連れてくることです」


「連れていってどうするんだ?」


「さぁ? そこまでは僕はしりませんよ」


 ハヤトの問いかけに、すんなり答えるシャルル。その様子を見て、ハヤトは剣を構えた。話してどうにかなるような相手ではないとわかったのだ。


「行くぞっ!」


 剣の輝きが増し、刀身が眩い光に包まれる。創生の光、始まりの光である。全てを、無に返す、力。剣から流れる力は、所持者であるハヤトの身体能力自体も上げる。初速自体は、シルファに負けるが、その一撃はまさに神速。一つの光となり、シャルルに斬りかかったのだ。


「・・・・・・殺していいか?」


 だが、その一撃を軽く受け止める男がいた。聖剣を受け止めた衝撃で、周囲の木々が激しく揺れる。

 その男は、シャルルの隣にいた赤髪の青年。青年は素手で、勇者の剣を受け止めたのだ。


「なっ!?」


 自身の一撃を受け止められ、ハヤトは動揺する。少なからず、この一撃には思いが込められ、自身最大の威力を誇っていた。


「物騒ですよ、ラーク。勇者は殺すつもりはありません。適当にいなしてください」


「面倒だな」


 ラークと呼ばれた青年は、眉をひそませながら、渋々シャルルに従ったようにみえる。そのまま、聖剣をつかみ、一振り。剣毎、ハヤトを投げ飛びしたのだ。メグたち後方に勢いよく吹き飛ばされたハヤトは木々にぶつかりながら、その勢いを殺した。


「クッ・・・・・・」


「ハヤトッ!? 今、回復魔法を」


 メグはすぐさま、回復魔法を使い、ハヤトの傷を治す。怪我自体は大きくはないが、それ以上の今の状況のインパクトが大きい。仲間の支援がないものの、最大級の技が全然効かないという状況に、ハヤトの心に大きな傷を残している。

 そもそも、この状況を打破できるのだろうか。


「ん? 何かあったのか?」


 この状況に似つかわしくない、そんな一言が響き渡った。まるで、右も左も分からないという風に現れた茶髪の少年。少し前までは、上位悪魔とアンデッドと戦っていた少年。ここにいないはずの要注意人物。


「・・・・・・アルフォース」


「ヨッ! たしか、シャルルだよな・・・・・・うん。この状況から見えると、お前が主犯か?」


 アルは短剣をシャルルに向けた。両者の視線がぶつかり合う。


「こ、この人が無理矢理・・・・・・」


 シャルルは声を絞りながら、赤髪の青年、ラークを襲る襲る指差した。まるで、脅迫をされ、嫌々されていたという風に。


「なるほ・・・・・・」


 アルがなにか言おうとする前に、真っ先に動いたのはラークであった。右手をあげ、手の側面でシャルルの額目掛け一閃。小刻み良い音が響く。俗に言う空手チョップです。


「な、何をするんですかっ!?」


 シャルルは若干、涙目ながら額をさすり、抗議するようにラークを見上げた。


「俺の主は誰だ?」


「・・・・・・僕です」


「それで良い」


 有無を言わない雰囲気をラークが醸し出し、シャルルは答えたのだ。


「なに、この茶番? 平気か?」


「・・・・・・ああ」


 そのなか、アルも若干困惑しながら首をかしげた。ふと、後ろを見ると、回復魔法を受けて傷を治したハヤトが近寄った。


「今度は一人で突っ込むなよ」


「タイミングは合わせる」


「任せて!」


 アルを含め陣形を整える6人。聖剣に再び光を宿す勇者アルト。短剣を逆手で持つアル。大剣に風を纏わせるシルファ。精神を集中し、拳を構えるダグラス。その後ろには、幾何学模様の杖を構えるムゥ。そして、皆の無事を願う聖女メグ。彼らこそ、機関最強のチーム。世界を救うために集められた少年少女。

 ハヤトとメグは視線を合わせ互いに頷きあった。


「私も戦うよ」


「後ろは任せた」


「はぁー、青春しているなあ」


 そんな二人を見て、アルは大袈裟にそういったのだ。その様子を見て、苦笑するのは他の面々。相手の実力は未知数。だが、闘志は消えていない。


「強いのはあの男だな。シャルルはどうなんだ?」


「悪魔を召喚できるみたいだけど・・・・・・」


「私が張った結界を簡単に壊したことから、実力は隠してたみたいです。実際の実力は未知。そして、終末の使徒の一人、”契約者”悪魔使いです」


 アルは状況を把握するために、シャルルとラークの力がどんなものか訊ねるが、判断材料には遠い。この感じからすると、まだ本気を出してはいないようだ。


「終末の使徒か・・・・・・」


 思い出すのは、この機関に行く前に受けた助言。

 たしか、晴れた良い日だったような気がする。


 


「アルはさあ、強いやつと会ったことないんでしょ?」


「えっ? いるじゃん」


 アルは目の前の、女性を怪訝に見るのだ。凛々しくも美しい金髪の女性は、アルの返答をきき、腹を抱えて大袈裟に笑ったのだ。あまり上品ではない、その女性がするには似つかわしくはない振る舞いだが、その様子は、生き生きとした生命力溢れるといっても過言ではなかった。笑いすぎて、出てしまった涙を拭いながら女性はアルに再び視線を向けた。


「私たちのことじゃないよ」


「えー、そんなやつがいるのか?」


 と言われたものの、アルの中にも強者については心当たりがある。例えば、この前戦った竜王の一角テラ・ドラゴンはとても強かった。竜王と呼ばれる竜種の最上位。または、名付けの大精霊クラスなら、強者と言えるだろう。


「人外ばっかり考えちゃって。人間にも強いのがいるのよ。名前をあげるとしたら、終末の使徒とかね。あいつらは私たち並みに強いよ。きっと、これからどこかで戦うと思うから、覚えておきなさい」


「へいへい」


 空返事をするアルを見て、女性は面白そうに笑みを浮かべた。そのあと、自分なりに終末の使徒については、一通り調べたアルである。

 確認されている使徒の数は、五人。二つ名も付けられており、”契約者”悪魔使い、”不夜”死霊使い、”劇団”人形使い、”黒剣”魔剣使い、”断罪”死神。特に魔剣使いは最強の一角で、アルがよく知る人物と戦って、痛み分け。その代償として、どこかの国の首都が壊滅したとか。


 世界守護者の一員であるアル。そして、その世界守護者が危険視する終末の使徒。その実力は・・・・・・。




「みんな元気かな。さて、始めるか」


 アルが持つ短剣。いつもは、何の変哲もなく鈍く光るその剣だが、今はどこか、名剣の一振りのように見えた。

 

魔法二重化(デュアルマジック)千なる雷サウザンド・サンダーボルト


聖なる加護(セイクリッド・オーラ)


 天高く掲げるムゥの杖から激しい雷鳴が生まれる。また、メグはタイミングを合わせ味方の支援と共に、ムゥの魔法にも影響を与えた。神聖魔法化。強いて言うなら、セイクリッド・サウザンド・サンダーボルトと言えばいいのだろうか。悪魔に有効な、神聖魔法を帯びた魔法である。


熾天使の球体(セラフ・スフィア)


 3対の光の翼が折り重なる様に、シャルルとラークを覆い隠し、ムゥの雷撃を守りきった。しかし、守ったのは自身から数メートル範囲まで。ムゥの魔法によって、召喚されていた数多の悪魔たちは消えていく。


「無傷・・・・・・」


 ムゥの魔法はかなりの高威力。三大賢者の一角は伊達ではないことをアルは知っている。この中で、自身を除けば今のところ一番強いのはムゥであろう。そんなことを一瞬でも考えていたアルの目の前に、紅い一撃が飛んできた。高速で振るわれる拳である。シャルルの横にいたラークが音も無く、アルに接近した。


「お前の相手をしろとご指名だ」


「そりゃあ、どうも」


 寸でのところで、ラークの拳を短剣で受け止めるアル。普通なら、アルの短剣で拳が切り裂かれてもいいところなのだが、何も起きていないようにみえる。下手したらシャルル以上に目の前の男は規格外ではないかとアルは考えてしまう。


「そこだっ!」


 ラークの隙をつき、聖剣を振るうハヤトだったが、一歩遅く空振ってしまう。


「勇者も来るか。いいのか? シャルルを甘く見てないか?」


 ラークは不思議そうに勇者を見たのだ。自分を止めるだけなら、アルだけで良いのではないかといった風に。そして、お前たちは、力を読み間違えているのではないのかと。


「何を・・・・・・っ!?」


「この光はっ!?」


 眩く祝福された光が辺りを照らし出す。光の源は・・・・・・シャルルからであった。暖かく清く、何もかも浄化するその光。神に祝福された光である。それは、決して悪魔を使役する悪魔使いからは決して発せられてはいけないものだ。それは、アルがよく知る光と酷似していた。どうにか、メグたちの元に行こうとするが、それを、目の前の男が邪魔をする。いるところにはいるということをアルは知る。自身と同等の力を持つものが。



疾風の一撃(エア・ブレイク)


『真空極波』


 空気を切り裂く、速さ重視の技。距離を詰めるための初撃をシルファとダグラスは放ったのだ。しかし、それがシャルルにもとに届くことはなかった。


次元・障壁ディメイション・ウォール


 シャルルの背後からチラリと姿を見せる、仮面。フェスト・フェイスある。どうやら、先程のムゥの魔法に巻き込まれずに生き残っていたようだ。


『|聖なる熾天使の羽ばたき《セイクリッド・セラフ・フェザー》』


 一瞬、シャルルの背後に3対、6枚のの翼が具現化される。まるで、実際に生えているかのように見えるほど。そして、翼が羽ばたくと共に、光輝く羽根が、メグたちを一斉に襲い始める。


風精障壁(エアリアル・バリア)


 シルファは大剣に纏わせていた風を解き放ち、暴風の壁を作り上げる。


幻想なる帳ファンタジック・オーロラ

 

 ムゥが内部に幾重にもオーロラを張り、


神聖なる障壁場セイクリッド・フィールド・バリア


 最後に、メグが中心部に障壁を張る三段構え。まず突破することは、不可能そう考えられのだが。

 祝福を受けた輝く羽根は、一段、二段、三段と障壁を貫通し、四人を襲う。


「きゃあっ!」


 予想外の一撃にメグは悲鳴をあげるものの、すぐに回復魔法を皆に掛ける。さすがに、三重に張られた障壁のお陰で威力は削がれていた。しかし、あの攻撃を受けてからこそ分かる。メグ以上の神聖力の高さ。


「何で・・・・・・あなたはそこにいるの?」


 ふとそうメグの口から漏れてしまう。それは、シャルルの力の源に気づいてしまったのだ。あの3対の翼は魔法によるただの幻ではないということに。シャルルにも届いたであろうその呟きにシャルルは魔法で応対した。


「悪魔使いは、悪魔を使役するのではない。悪魔の力を使役する。その違いはご存じで?」


 シャルルは両手を天高くあげる。そして、シャルルの背後に浮かび上がる半透明の純白の天使。3対6枚の翼。迸る神聖なる光を発する存在。熾天使の姿がそこにはあった。


「天使の加護・・・・・・それも、熾天使クラス」


「おいおい、それって、あの世界守護者(ワールドガーディアン)のアリソンと同じ加護か?」


「間違いありません。あれは熾天使の加護です」


 ムゥがシャルルの背後に浮かぶ天使を推測すると、ダグラスは驚きながらメグに視線を向けた。メグは小さく頷く。シャルルの力の正体。それは、熾天使の加護。風の大精霊の加護を持つシルファと同等以上の力を秘めた数少ない加護のひとつ。確認されている保持者は一人。世界守護者(ワールドガーディアン)の”女神転生”アリソン・フォートレスが熾天使の加護を得ていることで有名である。強いていうなら、彼女の場合は、その力を体に纏うことで力を発揮するらしい。


 シャルルの背後にいる熾天使にひとつの変化が起こる。純白の中に不純物・・・・・・漆黒が生まれた。漆黒は、全身を侵食するように純白とだんだんと混じり合う。白でも黒でもないーー人はそれを混沌という。


混沌の魔弾(カオス・ブリッド)


 混沌の天使とかした、熾天使の周囲に無数の魔弾が生成される。それは、人間では行使することができない混沌属性の魔法。賢者として数多の魔法知識を得ているムゥでも、知識でしから知らず、生きてきた中で見たことがない魔法であった。先程放った|聖なる熾天使の羽ばたき《セイクリッド・セラフ・フェザー》よりも威力が劣る可能性はないだろう。そして、肌で感じる嫌な感じ。受けていい魔法ではない。


限定解除(リミットブレイク)四元素の砲弾(エレメンタル・シェル)


 模様のムゥの杖が変形される。複雑だった模様・・・・・・外縁部分が一本の線に戻り、杖本体に巻き付くように形が変わったのだ。杖に掛けられた封印魔法によって、ムゥは実力を発揮出来ずにいた。それは、自身の魔法力が高いせいで、体が耐えられないからである。

 世界がムゥの詠唱に答える。火、水、風、土。本来全部が一気に混じることはないだろう。その緻密な制御技術。四元素魔法は、現存する魔法使いの中ならばムゥしか使えない魔法だろう。


 混沌と四元素がぶつかり合う。そして、魔弾を飲み込み、激流はシャルルの元へと向かったのだ。


次元・障壁ディメイション・ウォール


 そこに向かって、フェイスがシャルルの前に空間を遮断する障壁魔法を使う。混沌を制したムゥの魔法だったが、威力が削がれ、障壁魔法を貫通するまでには至らない。しかし、それを見逃す四人出はなかった。


「縮地」


 瞬時に障壁前まで移動したダグラスはそのまま拳を突きだした。ただの生身では、耐えきれない空間の歪みに手を入れるというのは自殺行為なのだが、限界まで身体を強化したダグラスだからこそ出来る芸当。そして、障壁に亀裂が入り粉々に壊れていく。


(テンペスト)


 シルファの剣先に風が集い、球体が出来上がる。本来なら、都市一つを飲み込む暴風が、拳一つ分圧縮される。


強制転移(トランジション)


 シャルルを守るものが何もなくなった。その瞬間、フィスト・フェイスは自分の位置とシャルルを交換する魔法を発動させた。それは、緊急用の魔法である。


 嵐が仮面に当たると、人一人覆い隠すことが出来るほどまで球体大きくなり、仮面を内部に閉じ込めた。激しい暴風。その中、ピキっと何かが割れるような音が聞こえてきた。

 嵐が静まると、そこにはひび割れた仮面の姿。そして、仮面から何かが落ちる。それは割れた仮面の欠片に見えるが、宙に浮かぶ仮面を見ると、そこには真新しい仮面が宙に浮かんでいた。三日月を模した一つ目の仮面。仮面の中から新しい仮面が現れたと言えばいいのだろうか。


 三日月模様の仮面。その仮面にムゥは心当たりがあった。

 

「仮面の悪魔。侯爵級メフェスト・フェレス」


「こ、侯爵級? そ、そんなのって、伝説のレベルじゃない。そんな悪魔が人間にしたがっているっていうの?」


「間違いない。私は見たことがある」


 シルファは戸惑いながら、ムゥに視線を向ける。すると、ムゥは断言するように頷いて見せたのだ。


 侯爵級。悪魔の中でも一握りしか存在せず、歴史書でしかその存在は残されてはいない。また、その力は大陸を滅ぼすことが出来るとも言われる。

 その中でも有名なのが、仮面の悪魔メフェスト・フェレス。かの魔導文明が滅びる切っ掛けとなった侯爵級悪魔。


「見たことがある・・・・・・? ああ、貴女があの、残骸の主でしたか」


 仮面から見える眼は細められ、何かを考えるような素振りが見えた。魔導文明時代の遺跡である魔導図書館の司書・・・・・・管理人であるムゥは、魔導文明について大陸随一の知識を持っている。持っているからこそ、管理人になれたといった方が正解である。


「私があいつを押さえる」


四元素の柱(エレメンタル・コルム)


 四つの力が混じり合い、仮面の悪魔、メフェスト・フェレスに向かって放たれた。

 そして、


次元城壁ディメイション・キャッスルウォール


 メフェスト・フェレスが使う次元魔法。古代魔法に属する空間を操る魔法。


「よそ見を」


 シャルルの左右から挟撃するようにダグラスとシルファが接近する。


熾天使の障壁場(セラフ・フィールド)


 迫り来るを障壁で防ぐシャルル。

 障壁によって、身を守られているシャルルだが、二人の猛攻で身動きは出来ない。ということは・・・・・・。


次元の狭間ディメイション・ミッドワールド


 シャルルと相対することで、ダグラスとシルファは行動できない。また、ムゥは大技を使った影響ですぐに対処は出来なかった。

 ハヤトとアルはラークと戦いこちらに視線を向けることさえできていない。最初から、タイミングを図られていたのだ。


 唐突にメグの足元あった地面が消え、異空間へと通じるワームホールが現れた。そして、吸い込まれるようにメグの姿が、異空間へ消えていく。

 ムゥと戦いながらも別の魔法を発動させるだけの余力がメフェスト・フェレスにはあったのだ。


「退き時ですね」


 シャルルの合図と共に、シャルルの背後にもワームホールが現れ、その中に身を放り投げた。


「それでは、皆さん。また、何処かで。それと、世界守護者(ワールドガーディアン)の君にはもう会いたくはないので」


 シャルルとアルの視線が合う。

 シャルルは苦笑するかのように、笑みを浮かべた。 


 ワームホールの閉じかけようとしたする。


「・・・・・・届かなかったな。悪い」


 黄昏の一刻。それは、聖女は終末の使徒に奪われるという一大事件となった。



 

「ここはどこ? 私をどうするの?」


 ワームホールの先は、どこかの屋敷のエントランスだった。薄暗いが、それなりに調度品が揃った立派な屋敷の様に見える。


「今は好きにしていいですよ。この屋敷内なら好きにしていいので」


 場所の問いには答えなかったがシャルルだったが、そのあとに続いた言葉はどこか拍子抜けするものだった。


「それでよろしいので?」


「いいんですよ。そこまで、言われてないし・・・・・・」


「仰せのままに、我らの姫君」


 自身を移動させてきた仮面の悪魔メフェストフェレスはメグの処遇を聞くと、敬いしく、頭を下げた。残念ながら、宙に浮かぶ仮面だけだが。その様子は、小馬鹿にするような様子は感じられなかった。


「姫君?」


 メグはもう一度、シャルルを凝視した。



なんか思い付いたので書きました。後半の技名がだんだんと適当に。。

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