8 ゆっくり沈降する
(痛えー)
思っていたより深く刺さっていた。
しかも何本も刺さってしまった。
オニヒトデのトゲには毒がある。
しかし、死ぬほどではないはずだ。
(でもけっこうたくさん刺さったな)
青年はこぼれた死骸を回収し、次のヒトデは諦めていったん船に戻ろうと思った。
海面に向かって泳ぎながら、尻に軽いシビレを感じた。
(次からは気をつけよう)
船べりに出て、籠の中身を船内にぶちまけた。
収穫は九匹だった。
船頭は特に驚いた様子もなく、たんたんと死骸を水槽に運んだ。
水槽の中はすでにヒトデだらけのようで、他のメンバーは明らかにもっともっとたくさん捕獲しているようだった。
(クソ)
青年は、再び海底に向かった。
(もっともっと捕ってやる)
尻のシビレが下半身全体に広がってきた。
(アレ、これはヤバイかも?)
脚が動かなくなり、青年は水中に漂った。
浮かぶことも潜ることもままならない。
が、じっとしていると、徐々に海底に沈んでいくのがわかった。
――せいぜい気をつけるのだぞ。
――お前のようなお調子者は、かんたんに海に飲まれるからの。
オババの憎まれ口が、走馬灯のように脳内を駆け巡った。