6 オニヒトデの殺処分
血眼になってヒトデを探した。
珊瑚礁のうえを這うように泳ぎ回り、ようよう岩陰に最初のヒトデを発見した。
(よし。すぐに挽回だ)
酢酸液を入れてある大きな注射器をヒトデにズブリと差し込んで殺処分する。
トゲに気をつけながら死んだオニヒトデを持ち上げ、腰につけた網カゴに入れる。
(一匹ゲット。さあ、次つぎ捕るよー)
ダイバーは再び、ヒトデを探して珊瑚礁のあちこちをうろついた。
透明な海の水はきれいで遠くまで見えるとはいえ、捜し物をするには、近づかないと難しい。
遠くの方に、若いダイバーの姿があった。籠にたくさんのヒトデを入れて海面に登っていくところだった。
(まずい。このままでは追いつくどころか差が開くばかり)
気ばかり焦る。
ようやく二匹目を見つけ、殺して籠に入れる。
オニヒトデは大きく、けっこう重い。
危うくトゲを手に刺すところだった。
二匹のヒトデを腰の籠にぶら下げると、泳ぐ速度が目に見えて遅くなった。
(いったん船に戻って荷物を下ろそう)
二匹程度でいちいち船まで戻っていたら効率が上がらないとも思う。
(いやいや、無理は禁物だ)
船の舷側にしがみついて、船頭さんに籠を渡す。
船頭さんはたった二匹だけのヒトデを水槽に移しながら妙な顔をした。
(鼻で笑われた!)
若者はちょっとカッとしたが、どうすることもできない。
横にベテランのダイバーが浮上してきて、籠から大量のヒトデをガサーッと船内に移した。六匹もあった。
「すごいですね」
「いや、別に。これでようやく十二匹よ」
「十二!?」
「アンタは?」
「いや、その……二匹ほど」
「二匹?」
「はい」
「二匹?」
「そうです」
ベテランは大笑いした。
「まあ、しっかりやんな」
そう言って再び海に戻った。
水槽の中のヒトデはもう三十を超えている。その収穫と若者の顔を見比べながら船頭がニヤニヤした。
若者も再び珊瑚礁を目指して潜った。