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5 最初から出遅れる
目的地に到着し、船頭が錨を下ろした。
他の四隻の船も、少し離れたところに停船していた。
すぐに捕獲作業の準備が始まった。
酸素ボンベを背負い、ヒトデを入れる籠の肩ベルトを肩に掛け、腰につけるポーチの中には、注射器と薬剤のボトルを入れた。なかなかの重装備だった。
準備が整った。
船ごとのチーム、それぞれのリーダーが無線で連絡を取り合い、一斉に捕獲作業が始まった。
青年も装備をチェックして潜水開始した。
なにしろ潜水が商売。この道のプロなのだから、潜るのはお手の物。
だが、オニヒトデを探索するとなると勝手が違う。
サンゴの群生のあちこちに目を向けてもヒトデがみつからない。
たしかに、ところどころヒトデに食われたような跡はある。
でも、ヒトデの姿はない。
駆除するまでもないんじゃ?
そんな疑問も湧く。
何も捕獲できず、いったん船にあがると、他のメンバーが捕獲したヒトデが既に5、6個は船上の水槽に入っている。
「なんだよ、収穫なしなの?」
と船頭に冷やかされた。
「いやいやこれからさ、これから!」
青年は焦って海底に戻った。