4 ヒトデの利用方法
組合長が青年に話しかけた。
「陸にあがったら、肥料会社まで運転頼むぞ」
「マジっすか」
「お前は前回もその前もサボったんだから、それぐらい引き受けるべきさ」
その石垣島の肥料会社は、捕獲したオニヒトデを無償で引き取ってくれる。
もしこの会社が引き受けてくれなければ、大量のオニヒトデの死骸は産業廃棄物として有償で廃棄しなければいけなくなる。
肥料会社の尽力によって、海の厄介者が畑にまく肥料に生まれ変わる。ありがたい話。
それにしても肥料にしかならないのはもったいない。
青年は常々そう思っていた。
ヒトデはウニと同じ棘皮動物の仲間だから、ほぼほぼ同じ味である、と仲間のダイバーに教えられ、青年は、試しにヒトデを食べてみたことがあった。
たしかに、ウニと似た味だが……なんとも言い難いエグ味があるのが玉にキズ。
このエグ味さえなくせれば、けっこう高級食材に化けるかもしれないのに。
青年は、オニヒトデ料理専門店をオープンしてボロ儲けすることをひそかに夢見て、取らぬ狸の皮算用でほくそ笑むのだった。
だが実際のところ、ヒトデの卵巣には有害金属が蓄積している場合もあり、食用には向かないのだが、それは青年のあずかり知らぬことだった。