3 環境保護と賭け事
南国の青い海と青い空。
陽光に輝く海面を船は沖合を目指して航行した。
目的地まで、およそ二十分の距離。
そこは、彼らがネイチャーガイドとして観光客を案内する定番のスポットだった。美しいサンゴ礁が浅い海底に広がって、海底ウォッチングにはもってこいの場所だ。
ちかごろ、地球が暖かくなり、このへんの海の温度も上がったためか、オニヒトデが大発生、美しいサンゴを食い荒らすという食害が発生していた。
食害から貴重なサンゴを守るため、オニヒトデを駆除するのは、ダイバー組合の大事な取り組みなのである。
それを二度もサボっていた青年は、肩身が狭かった。今日はそれを挽回すべく、しっかり活躍していいところを見せなければならない。
五隻の船は、美しい海の上をすべるように進んだ。
「二十人で五百匹かぁ」
青年の呟きにやる気の無さを聞き取ったのか、ベテランのネイチャーガイドが青年をジロリと睨んだ。
「ひとり二十五匹見当だな」
「そんなに」
「なに、あっと言う間さ」
「そんなもんですかね」
「いまから弱気でどうするか。他の船には負けられないぞ」
今回のオニヒトデ駆除隊は、船単位でチームになっていて、五つのチームが、互いにヒトデの捕獲量を競う賭けをしていた。
「一等になって祝杯をあげようぜ」
「おう」
青年よりももっと若いダイバー二人が気勢を上げる。はためにも興奮が伝わってくる。
よほど賭け事が好きなんだろう。
「そうだ。ビールを賭けようぜ。最初の一時間でたくさんヒトデを捕獲したほうが、ビール一杯ゲットで」
「のったぜ。今日はタダ酒が飲める」
「こっちのセリフさ」
結局、ベテランのガイドと青年もその賭けに加わることになった。
「じゃあ三杯はタダで飲めるな」
「俺がな!」
若者たちは陽気に笑い合っていた。