表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サンゴとオニヒトデ  作者: 青海 嶺
23/26

23 オニヒトデの涙

 大きなウミガメは静かに語りだした。

 あらゆる命が、他の命を食べ、食べられながら、命を受け継ぎ、次の命に伝えていく。

 すべては繋がっている。

 繋がっている命に、上下も、貴賎もない。

 ある生き物だけを守るのも、自然環境を「保護」するのも、しょせんは人間のエゴから出たことだ。

 動物の命をもらうことに罪悪感を感じたり、植物だけを食べれば罪の意識から逃れられると考えるのも、人間の愚かな間違いだ。

 植物も生きている。命であることにかわりはない。

 他の命を食べることに罪を感じなくていいし、恥じることもない。

 他の命によって生かされることは、命のことわりだから。


 カメの言葉を聞きながら涙が止まらなかった。

 ちなみにヒトデの涙の成分は海水とほぼ同じで、涙は出たはじから海水と混じり合うので、泣いているかどうかは本人にしかわからない。

 うっかりすると本人にもわからない。


 今こそ、青年ははっきりと気づいた。

 珊瑚礁を守るのは、自分の商売のため、観光資源を、観光産業を守るためだった。

 京都の古刹の庭師が、庭を綺麗に手入れするのと同じことだ。

 そう考えるとなんだかスッキリした。


 青年はふと思った。

「あなたはひょっとして神さまなのではないですか?」

「はてね。ワシはもう長く生きすぎて、自分が何者なのかよく分からなくなってしまったが。その昔聞いたことだが、(カミ)(カメ)の言い間違いからうまれたということだ」

 青年は目を見開いた。ちなみにオニヒトデの目とは(以下略)。

(とすると、海亀(ウミガメ)とは海神(ウミガミ)のことではないか!)

 大きなカメは目を細めた。

「冗談だよ」

「あなたの冗談は冗談に聞こえません」

 カメは声を立てずに笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ