18 笑うヒトデ
「どこだどこだ、その元人間ってのは?」
「こいつだよ。自然保護活動とやらをしていたそうだぜ」
「へえ。俺たちは別に保護してほしいと頼んだ覚えはないけどな」
青年を取り囲んだオニヒトデたちはゲラゲラ笑った。
「し、自然保護の何がおかしい?」
ヒトデたちの笑い声はさらに高まった。
「ひー」「く、苦しい」「腹が捩れる」「お腹いてえ」
「笑うな!」
笑い声がピタリと止んだ。
そしてヒトデたちが口々に喋りだした。
「じゃあ訊くけど、クジラやイルカやサンゴは大切で、どうしてヒトデは大切じゃないの?」
「その差別の根拠は何なの?」
「あるものは守り、あるものは駆除、それって人間のエゴじゃん?」
青年はうろたえた。
「で、でも、人為的に持ち込まれた外来種なんかは、やっぱり本来そこにはいるべきじゃないわけで」
「人為だろうがなんだろうが、そこに移動してきた命は、もうそこで生きているんだし、そこで新たな生存競争がはじまるのが自然の摂理なんですけど?」
「でも、そうすると外来種によって、固有種が駆逐されたり……生物多様性が損なわれて……」
青年がそう主張すると、ヒトデたちは、またゲラゲラと笑い出した。




