17 前世自慢
「おれ、実は昔、人間だったんだ」
青年は(恐れ入ったか)という気持ちで、お仲間を見下したが、相手はちっとも動じなかった。
「ほー。それはそれは。たいそうご立派な前世をお持ちですなあ。うん、まあ、俺だって人間の死骸はずいぶん食べたからね。ってことは、俺だって、身体の何割かは人間だ。つまりは、お前と同じだな」
「そ、そうかな。でも、オレはね、ただ人間だっただけじゃないんだ、おれは、自然保護活動に人生を捧げていたんだよ」
人生を捧げたとは話を盛りすぎだったが、駆除を頑張ったのは事実だ。結果的には命を掛けたことになるし。
青年は(どうだ、今度こそ恐れ入ったか!)という気持ちで、またお仲間を見下したが、逆に憐れみの目で見られた。
「あー……、あの、クジラを守れとか、サンゴ礁を守れとか騒ぐ、いかれた連中の仲間かい」
(いかれたとはなんだ、いかれたとは!)
青年は思わずお仲間を睨みつけたが、相手は、まるで憫笑するように体を膨らませてトゲをそよがせていた。
トゲをそよそよ動かしながら、そのヒトデは周囲の仲間に呼びかけた。
「おーい、こいつ、人間だったんだってよ。面白いからこっち来てみな」
忙しく食事をしていた周辺のオニヒトデたちが、食事を中断してワラワラと寄ってきた。




