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サンゴとオニヒトデ  作者: 青海 嶺
15/26

15 空腹

 このあいだまでせっせと駆除していたオニヒトデに、まさか自分がなるとは。

 青年は呆然とし、そして苦笑したが、オニヒトデになってしまったいま、苦笑とはどんな笑いだったか、分からなくなりつつあった。

(これが因果応報ってヤツか)

 人だったころには考えもしなかったことを、いまヒトデになって考えている。思えばおかしな話だった。

(あのころは人間死ねばそれまでだと思っていたが)

 まさか輪廻転生がおとぎ話ではなかったなどとは、自分で経験するまで信じられなかったのも当たり前だった。


(それにしても腹が減った)

 青年だったオニヒトデは空腹を覚えた。

(そうだ、俺は腹が減っている)

 周囲はどうやら珊瑚礁のようだが、すでに食べられるサンゴはほとんど食い尽くされているらしい。

 青年は移動して、わずかに残っている食べられるサンゴや、小動物の死骸などを食べ、また食べ物を探して移動し、食べては移動し、を繰り返した。

(野生動物の一生とは、空腹と、それを満たす食べ物を得ることで過ぎていくものなのか)

 青年は、深い自然の哲理を悟ったような気がした。

(だが、そんな悟りは腹の足しにはならない。腹が減った。腹が)

 青年はサンゴの残骸だらけの珊瑚礁を離れ、次なる珊瑚礁を求めて移動した。




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