14 食物連鎖の果てに
どれほどの数と種類の水棲生物が青年を食べたのかは誰にも分からない。
一番食べたのは、最初に青年に襲いかかったサメだったろう。
だが誰が一番たくさん食べたか、それは問題ではない。
魚やタコやカニや、その他その他の生物に食べられた青年は、やがてウンコとなって、海中に排泄された。
ウンコとなって、海に放出された元青年の成分は、植物プランクトンに食べられ、その植物プランクトンはまた他の動物に食べられ……と、目も眩むような食物連鎖の流れの中に広がっていった。
そうして、気がつくと青年はサンゴになっていた。
青年が人間としての短い生涯の最後に取り組んだのは珊瑚礁の保護活動だった。
いまサンゴになった青年は、なにか運命のようなものを感じていた。
サンゴとなった青年が今いる珊瑚礁は、かなり遠洋に位置していて、ダイバーや観光客たちが訪れることはなかった。
だが、人間だった頃に話に聞いたとおり、そしてダイバーとして実際に見たとおり、珊瑚礁には本当にたくさんの種類の生物が集まってくるのだった。
ある時、彼は直径が50センチもある大きなオニヒトデの姿を見つけた。
オニヒトデは次第に近づき、彼の上にすっぽりと覆いかぶさって、むしゃむしゃと食べ始めた。
気がかりな夢から目を覚ますと、青年は自分が一匹の大きなオニヒトデになっているのを発見した。




