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サンゴとオニヒトデ  作者: 青海 嶺
13/26

13 海底の捜索

 船上は緊張に包まれた。

 何か事故があったのは間違いない。

 あの赤い血の量はただごとではない。

 あれが青年の血だとすると事態は絶望的だ。

「潜って探しましょう」

「だが、もう酸素が」

 誰のボンベにも、青年を探し回れるだけの酸素は残っていない。予備のボンベもない。素潜りでどうにかなる深さでもなかった。海女さんなら別だろうが。

「しかたがない。捜索は明日だ」

「でも、もう少し待ちましょう。戻ってくるかも」

 若者はそう言いながらも、赤い海の色を見て絶望感に襲われていた。


 事故は無線で他の船にも知らされた。船団全体が沈鬱な空気に包まれる。

 帰途は、お通夜のようだった。

 若者たちは、楽しい賭けが台無しになって、ちょっとガッカリしていたが、人一人死んだかもしれないときに、そんなことも言ってはおれず、神妙にしていた。


 翌日から海が荒れ、出航は見合わされた。

 三日後、捜索隊がGPSを使って事故現場の位置に到着し、数十名のダイバーが珊瑚礁を捜索した。

 しばらくして、金属製の籠、酸素ボンベ、そして青年がつけていたらしいウェットスーツのぼろぼろになった断片と、足ひれが見つかった。

 青年の肉体の痕跡は何も見つからなかった。

 海は青く澄んで綺麗だった。

 赤い血の色は全然残っていなかった。





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