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1 ユウウツな朝の卵かけご飯
朝から気が重かった。
今日こそは海に潜らねば。
青年はため息をつき、布団をはいで起き上がった。
なにしろ、前回も、その前も当番をサボっていた。
さすがにもうサボれない。
青年(と言っても三十路すぎだが)は、何を言われてもヘラヘラ笑ってやりすごすタイプだったが、さすがにダイバー組合の同業者の冷たい視線が辛くなっていた。
冷蔵庫の中の残り物のパパイヤの粕漬けと卵かけご飯で朝飯を済ませると、青年は身繕いをし、荷物を軽トラに積んで港に向かった。
通りに椅子を出して、日がな一日通行人を監視しているオババが言った。
「おめえ、どこさ行く?」
「海だ」
「潜るのけ?」
「ああ。ヒトデの駆除だ」
「せいぜい気をつけるのだぞ」
「わかってる」
「お前のようなお調子者は、かんたんに海に飲まれるからの」
「ああ、分かった分かった」
「ふん、なーんも分かっとらんが」
「ふん、早う死ねクソババア」
「ひとがせっかく心配してやっとるのにこのバチ当たりモンが」
「余計なお世話じゃ」