ネタバレ海岸エリア
さて、ログイン3日目である、多少は冒険者なるモノに慣れて来たかな? そう言えば、昨日はNMには出遭わなかったな……奇妙な妖精には、装備欄に居つかれてしまったけどw
その妖精は、俺のインに気付くと嬉しそうに飛びついて来てくれた。頬にチューとかよしなさい、琴音に知られたら恐ろしい目に遭うのが確定してしまう。
あの焼き餅焼きは、加減と言うモノを知らないから。
肝心の虹色の果実の1個目は、昨日見事にゲット出来たのは良いとして。妖精の活躍は素晴らしかったが、代わりに魔法が使えない身体になってしまった。
解決案は今の所思い付かないし、あるのかさえ分からないと言う。仕方が無いので、成長の指針を肉体派に修正……その位しか、案が浮かばない。
取り敢えず、今度は短槍スキルでも伸ばすかな?
さて、今日の予定だけど残念ながら琴音によって決定済みである。とんだ興醒めと言うか、果実の取得ルートをあのお節介さんに全て報告されてしまった。
マシンガントークで自分の体験談を語り尽くし、森の西の情報がほぼ筒抜けに。事前にネタバレされると、俺的には冒険意欲が減退してしまう。そんな訳で、厳重注意しておいた。
ってか、子供の頃からの“交換条件”の言い渡しなんだけど。
ガミガミ怒るのは、自分の性格的にも向いていないので。自分はこうするから、あなたはこの約束を守ってね、と。一方的な押し付けは、相手にストレスや反感を背負わせてしまう。
子供の教育にも、恐らく宜しくは無いだろう。今回はネタバレ禁止をお願いして、その代わりこちらは全力でこの『始まりの森』を突破する約束を取り付けて。
琴音は目をぱちくりさせて、了解と返してくれたのだった。
毎度の事なので、向こうもこちらが嫌だったのだと理解してくれたのだろう。そう言う所は勘の鋭い幼馴染なので、こちらも信頼はしている。
そして向こうも、恐らくはこちらに絶大な信頼を置いているのは分かっている。つまりは、俺が本気を出したらあっという間に追い付き追い超されると。
思い込みも甚だしいが、信頼にはなるべく応えたい所存。
さて、鞄の中と自分の装備を眺めつつ、昨日の冒険を思い出してみる。蛇の皮とか蛇の牙は、最後の大物との戦闘報酬だな。皮も牙も、しばらくは保留しかないかな?
それから装備にも若干の変更が、特に兜とズボン……それから指輪とアクセサリーの妖精だなw それから投擲系も充実して来た、石斧と炎の水晶玉が鞄の中に。
琴音の話では、水晶玉は範囲攻撃武器で序盤は凄く強いらしい。
さっそくフィールドに出て、使い心地を確認してみないと。こう言う消耗品は勿体無いからとケチる人もいるけど、俺はバンバン使う派である。
それから昨日結局使えなかった、盾の使用感も確かめておきたい。まずは弱い兎を相手に……っと、その前に今日のクエスト依頼書のチェックをしよう。
おっと、ログインボーナスの確認も忘れない様にしないとね。
結果、お馴染みのポーションと毒消し薬の他に、範囲攻撃の水晶玉がさらに増えると言うハプニングが。こちらは雷属性らしい、麻痺効果も付いているらしく凄く使えそう。
これは……ひょっとして、投擲スキルをもっと伸ばせと言うお告げなのかな? このゲーム、魔法が封じられても結構やりようはあるみたいで一安心。
その代案の一つが、この投擲系の充実具合らしく。
今はまだ自作出来ないが、錬金術の合成とか覚えると割と簡単に製作可能との話。まぁ、こんな辺鄙な森では夢のまた夢。さっさと街で合流しようとの、琴音談ではあるのだが。
合成とかも割と興味があるのは本音の所、急かされるつもりは無いけど。
それは置いといて、次にクエ依頼書の確認である。昨日は結局、蝙蝠討伐のクエは達成出来なかった。それでも新しいクエは、何枚か発見出来たのは良かった。
とは言え、それ程内容は目新しく無い感じ。狼の毛皮2枚収集と、猪の肉2つ持って来るようにとのお達しである。その代わり、兎のクエ2種は消えていた。
どうやら上位互換らしい、つまりは装備と食事が貰えるのかな?
それは素直に嬉しい、猪の居場所も琴音の情報で判別してるし。狼の毛皮は既に2枚、鞄の中に入っていたので。クマの着ぐるみに依頼書と一緒に渡してみると。
意外と簡単に、粗末シリーズ以外の装備を貰えてしまった。
――質素な狼皮ベスト 耐久5、防御+5
今度は質素シリーズらしいが、断然性能が違う気がする。これは是非、全てこっちに変えないと! 狼退治に時間を掛けようかな、でもそんなに数は見掛けなかったような。
猪の肉に関しては、実は昨日のクエ報酬『料理キット』で簡単な調理が可能になったので。それ程に緊急性は無い感じだ、もっとも調理時間が若干勿体無い気がするけど。
そんな訳で、猪の肉のハントも積極的に行なうべし。
準備を整えいざフィールドへ、今日は盾を左手に、メイン装備は女王蜂の短槍で序盤は狩りに挑もうと思う。スキルが伸びれば占めたモノ、そしたら必殺技の取得も視野に入れる感じで。
もっとも、余剰のスキルPはそんなに無いんだけどね。レベルアップを待つ感じ、それともNMとの遭遇が先か……琴音に言わせれば、そんなにホイホイ遭遇しないらしいけど。
だから貴重とも言えるのだ、スキルPも大事に使えと小言を貰った次第。
回想は放っておいて、盾の使い心地なのだけれど。なかなかに快適で、いきなり被ダメージ率がグッと減ってしまった。つまりは生存率の上昇を意味していて、ひたすら有り難い。
短槍2本と棍棒のメイン武器も、まとめてクマNPCに修繕して貰っていい感じ。少なくとも今日の冒険で壊れる事は無いと思う。投擲で使う予定は、今の所無いしね。
兎と芋虫エリアは、何と被ダメ無しで抜けてしまった。
機嫌良くそのまま東方面へ、5分も歩けば狼と大蜘蛛が占めるエリアへ。樹木の並びはそんなに変わらない、初見の大蜘蛛はトリッキーな場所からの攻撃がウザい感じ。
コイツも狼と同じく、アクティブ感が満載である。こっちを完全に餌と認識して、樹の上から突然現れて糸を吐いたり噛み付いたり。もちろん罠みたいに張られた、蜘蛛の巣は脅威だ。
一度妖精のファーがこれに引っ掛かって、救出に大慌てした場面も。
割と好き勝手に収集に飛び回っているので、こんなアクシデントも当然出て来るのだろう。改めて、フィールドは何が起こるか分からない危険な場所だと認識しつつも。
全く喋らない相棒に、あまり遠くには行かない様にと釘を差すのを忘れない。妖精も失敗しちゃった的なゼスチャーで、ゴメンねと謝って来るポーズを示し。
あんまり懲りてはいない様子、まぁ委縮するよりはマシだけど。
ちなみに蜘蛛のドロップも、粘糸とか甲殻とかそっち系の様子。虫系のモンスターは、HPが低くて倒すのは楽だけど、ドロップはそんなに旨みは無い感じだ。
クエ素材の狼の毛皮をもっと集めたいんだけど、生憎そんなに数は見られなかった。そのまま進んで行くと、再びモンスター分布に変化が。
猪と大きな蛾の様なモンスターが、散見し始め。
「おっと、この辺が琴音の言ってたエリアかな……確か、大きな蛾が群れて停まっている樹があるんだっけ……?」
何となく独り言、それに反応して妖精がキョロキョロと周囲を窺い始める。同じくこのエリアの猪は、体力と攻撃力は狼以上にあって強敵だったが数は少ない感じ。
ドロップも皮と肉と、それから牙なのは動物系のテンプレ通りかも。大蛾の方は、アクティブでは無いけどリンクするのが厄介。必ず2匹以上が群れて来るので、HPが低くても戦闘が長引いてしまう。
その上、何とも特殊技が厄介な敵でもあったりして。
ドロップにもある『大蛾の鱗粉』だが、どうやら麻痺効果がある様で。普通に側で羽ばたかれても、こちらは動きを阻害されてしまう極悪仕様。
幸い、そんなに長い時間の硬直は無いものの、たかられて殴られ放題なのは勘弁して欲しい。大蛾の攻撃力が凄く低いので助かっているが、たまに猪が横槍を入れて来たりして。
そうなるとパニック、この最悪コンボは油断すると死んでしまう。
既にこのエリアで、ポーションを2本も使ってしまった。ついでに炎の水晶玉も初使用して、その威力を確かめてみた結果。凄いねコレ、大蛾程度なら瀕死にしてくれるって!
序盤だとバランスブレーカーになり得るかも、体力自慢の猪相手だと半分も削れなかったけど。妖精もその威力にはビックリ、何故か自分にも持たせてくれとせがまれてしまった。
危ないから1個だけねと、雷の水晶玉を渡す自分は甘いかな?
妹が2人もいると、こんなおねだりは日常茶飯事だったりする。特に下の妹は、甘えん坊で手が掛かると言うか。ってか、妖精はちゃんと自分の鞄を持っていてこっちがビックリ。
嬉しそうに周囲を飛んでいるが、戦闘に参加とか無理しないで欲しいと切に願う。
さて、マップを開くとまだまだほとんど埋まっていない東エリアの地図。海岸も見当たらないし、想像してたのと全然違う。まだ当分歩かないと、海には出ないのかな?
そうだとすると、この『始まりの森』は相当広いソロエリアって事になる。探索は後回しにして、虹色の果実の収集に行こうかなぁ……どちらも大変なら、早く終わる方からって事で。
何しろあのお節介娘、目的の場所をピンポイントで教えてくれたのだ。
それによると、安全地帯の真東から少し南にずれた海岸との中間地点あたりだそうで。海岸までは辿り着けていないが、感覚的にここら辺かなとの当たりはつく。
案の定の地点で、その驚きの光景に出くわした。本当にたくさんの大蛾が、1本の樹に群がって停まっている……これを始末するのは、割と骨が折れそうな?
琴音はレベル8だと、まず余裕だと言っていたけど。
こちらは未だに、半分のレベル4だったりする訳だ。もう少しで上がりそうだし、ここは念の為に周囲の敵でレベルアップしてから臨もうかな?
そんな理由で、しばし周囲を探索する事に。ファーもこちらを真似して、小枝を拾ってフェイシングの真似事みたいな仕草を繰り返している。
何とも微笑ましいが、俺より様になってるのが少しだけ悔しい。
猪肉の2個目ゲットと共に、念願のレベルアップがやって来た。ステータス画面を眺めると、どうやら短槍スキルも1P生えてくれた様子で何より。
3Pに増えたスキルPは、今回は保留する事に。短槍か投擲に振り込めば、スキル技を取得は可能なんだけど。棍棒スキルを伸ばさないと苦戦する敵が出て来たら、それはそれで大変だ。
実際、あの大蛾の大群は範囲攻撃スキル有りの棍棒で挑む予定。
レベルアップで強くなった多少の自信と共に、再び例のポイントへ向かいつつ。それでも用心は怠らず、ポーション瓶を数か所に設置を忘れない。
開幕はもちろん、水晶玉の投げ付けからに決まっている。あんなに密集してくれているのだ、使わない理由が見当たらない。寄って来たら《ブン回し》で、派手に数を減らして行く。
おおっと、目論見通りの良い調子じゃないか?
初日の教訓を忘れずに、調子に乗ったりはしないけど。棍棒の範囲スキルの定期的な使用で、大群はどんどんその数を減らして行く。そして殴る度にSPが溜まる、何とも素敵サイクル。
相変わらずの麻痺に苦労しながら、快進撃は続く。
これなら武器使いオンリーでも、不便は感じないのかな? まぁ俺が魔法剣士を目指してたのは、有利不利より割とミーハーな理由がメインだったんだけど。
範囲攻撃の水晶玉で、その雰囲気を味わうだけで満足すべきかな。そんな事を思いつつ、たかって来た敵に再び範囲攻撃の雷の水晶玉を投げつける。
新しいズボン装備には、一応小さなポッケが付いてるのだ。
これがあると無いとでは大違い、初期装備のズボンには付いてなかったから尚更である。戦闘中に鞄からアイテムを出すと言う、この行為の難しさは前にも説明したけど。
例えそれがポーションでも戦闘用の道具でも、難易度が高いのは同じ事。だから使うアイテムは、前もって鞄の外に出しておく必要もある訳で。
ちなみに雷の水晶玉、麻痺効果もあるみたいで使用感はグー。
炎の水晶玉の方は、延焼効果なのか継続ダメージが付いて攻撃力だけ見ればこっちの方が上である。そんな事を考えながら、ようやく減って来た敵影を見て一安心。
念の為にと用意しておいた、補給ポイントは無駄に終わったようで何より。妖精が目印となってくれてるので、今回は慌てて場所を失念して、瓶を探し回る心配も無い。
何気に便利で、信用出来る相棒である。
残りの敵の数が片手で数えられるようになった頃、嬉しいアナウンスが。何と本日2度目のレベルアップ、早い気もするが大蛾だけでも30匹以上倒しているし。
連続討伐ボーナスでもあるのかな? とにかくラッキー、これでレベル6だ……と思っていたら、少し離れて観戦していたファーが何やらゼスチャーで騒いでいる。
どうも大蛾が停まっていた、大きな樹の上を指し示しているっぽいけど。
さっきチラッと見たけど、蛾のモンスターがいなくなってやっと『虹色の果実』が視認出来た。それで妖精が騒いでいるのかと思ったら、どうも違った様子。
もっとヤバい大きな影、ってかシルエットは大蛾ですねぇ……大きさと翅の色が全然違うけど。ってか、鱗粉を喰らっていきなりダメージを喰らってますけど。
どうやらNMらしい、何故にこのタイミングでっ!?
幸い、雑魚はほぼ倒し終えて、周囲はスッキリしている。HPも一応は安全圏、敵はしっかりこちらをターゲットに指定してる。逃げられないのなら、闘うの一択しか無い訳で。
毎回のようになし崩し的な戦闘開始、やっぱりNMだけあってHPも攻撃力も高くて嫌な敵だ。麻痺のついでにダメージが入る、鱗粉攻撃が堪らなくウザい。
気付けばHPは半分を割っていて、堪らずヘルプと補給ポイントへダイブ。
木陰に隠れてポーションを口に含むいつものパターン。ただ問題なのは、一緒に付いて来た妖精が相変わらず慌てて指差してる方向が、大蛾NMのいる位置と違う事。
体力ゲージの回復を確認して、物凄く嫌な予感と共にそちらに目を遣ると。今度はノーマルとは、色合いも大きさも違う大猪の姿が、大きな鼻息と一緒に飛び込んで来た。
やっぱりこのパターン……俺の運の良さって、本当に当てになるのか?
素敵NM2匹を同時相手って、初なパターンに思いっ切り怯みつつ。それでも勝利を信じて、瞬時に作戦を脳内で練り上げて行く。幸い地形は樹木の生い茂る森の中、突進が得意なあの敵には、やや不利なのはこちらの強みか。
そんな事を考えていたら、案の定の突進技が来た。咄嗟に樹の影に入ってやり過ご……後ろから大蛾NMの鱗粉を、モロに喰らってしまっちゃったよ!
やはり2匹同時相手はキツい、猪は足を止めての牙の掬い上げ攻撃も存在するし。
こちらのHPは再び半分以下へ、何とか敵を1匹でも仕留めたいのだが。慌ててるのは相棒の妖精も同じで、彼女が咄嗟に取ったのは、さっきあげた水晶玉での援護だった。
それは派手に荒ぶっていた猪NMに命中、見事にピヨって動きを止める事が出来た。その隙に俺は再び近くの藪の中にダイブ、強引に大蛾NMのタゲも外す。
そして作った僅かな時間で、何とか鞄の中のポーション飲みに成功。
ファーにはマジ感謝、そしてここから反撃の始まりである。取り敢えずは幾分か体力を減らしている大蛾の方を始末したい、そう考えつつ予備武器の短槍を取り出して。
藪から飛び出して、連続しての投擲攻撃を敢行。そんなに離れていなかったせいか、幸いにも2本とも命中! 最初のは蛾の左翅に大穴を開けて、2本目は何と胴体に突き刺さった。
俺ってひょっとして、投げ槍のセンスがあるんじゃないのか?
などと自惚れながら、追撃のチャンスを逃さない様にと慌てて大蛾NMに近寄ってみたり。向こうは完全にグロッキー状態、もはや飛ぶ事も無く地面に墜落しているのだが。
その状態でも、一応は鱗粉飛ばしは出来る様子。それでも、動かない標的に手こずる俺では無い。近付きながら棍棒で一撃、これで何とか息の根を止められた。
何か色々手に入れられたみたいだが、チェックする間もなく次の闘いへ。
猪NMは、完全にヤル気を取り戻していた……と言うか、怒気で身体が倍に膨らんで見えた。ヤバい気配は伝わって来るが、勿論逃げる訳にもいかないので。
少々位置取りを工夫して、相手に対して斜に構えることに。身体の正中線は、当然だが弱点だらけである。攻撃力のある敵相手に、左手に盾装備も忘れない。
右手武器は、毒の付与を期待して女王蜂の短槍にチェンジ。
何度か武器交換をして、ちょっとだけ分かった事がある。俺が一番スキルを振ったのは『両手棍』のスキルで、片手で棍棒を振り回してもそのスキルPは反映されないのだ。
攻撃力にやけに差があるなと思っていたが、どうやらそう言う事らしい。最初は両手で振り回す分の上乗せだと思っていたが、片手での攻撃はスキルP無し状態だったと言う。
片手では、覚えた《ブン回し》も使えない事態も納得がいった。
つまりは、盾装備時には棍棒も短槍も攻撃力に大差は無いと言う事になる。ただし琴音に聞いた話だと、突と殴打と斬の効能はモンスターによって耐性が違って来るらしく。
肉厚の獣系は、殴打には強く斬や突は苦手だった筈。良くは覚えていないが、幾つも武器を所有する有利点はそれ位だと言っていた気がする。
何にせよ、突進して来るなら串刺しの返り討ちにしてやるだけだ。
実際は、足を止めての太い牙と短槍での突き合戦になってしまったけど。体力と攻撃力に物を言わせて、ガリガリとこちらのHPを削ろうと荒ぶる猪NMに対して。
こちらは必死に慣れない盾で応戦、直撃を喰らわない様に位置取りを調整しつつ、敵の隙を探る構え。お陰で大きくHPを減じる事無く、反撃の余裕も整って来た。
こちらも削らなければ始まらない、そんな訳で短槍で攻撃に掛かる。
少し調子に乗っていたかも、2割ほど削り返した場面でカウンターの突きを貰ってしまった。盾と一緒に出していた左脚の太腿に、牙で大穴を開けられて。
それ以上にHPが3割にまで急落、これは大変なピンチである。咄嗟にポーションの場所を確認しようと、周囲に視線を飛ばしてみるけど。
やっぱり大慌ての妖精が、コッチ来てとゼスチャーで示していた。
そんな訳で、痛みを我慢して再び藪の中にダイブを敢行する。何故か一緒に飛び込んだ妖精が、チョーダイのポーズで何かをおねだり。欲しいのは丸い何からしい、俺は咄嗟にポッケを探る。
再び雷の水晶玉を受け取ったファーが、猪NMを足止めに飛んで行った。俺は置いてあったポーションを掴んで、左脚の傷口にブッ掛ける。
これで幾分か余裕が出来た、しかし敵のHPはてんで削れていない現状。
ここはパバッと、スキルPを短槍に振り込むべきだろうか? 今日は既に2つレベルが上がっているので、スキルPは割と潤沢に残っている。
武器スキルが上がれば、通常攻撃もずっと強くなる筈だし。考えるより今は実行だ、そんな訳で短槍スキルを1⇒4へと上昇させてみた。
結果、新たに《落とし突き》と言う武器スキルを取得!!
これは体重を込めて突きを下方へ見舞う技らしいが、果たして威力は如何程か? 取り敢えずは体力は回復したし、色々と心配はあるが戦場に舞い戻ろう。
猪NMは前より更に荒ぶっていた、さもありなん……自分より小さな妖精相手に、散々に翻弄されたのだ。その怒りは、全て俺に向けられてるけど。
飛び出した俺と少し距離があったためか、いきなりの突進技がやって来た。これを喰らう訳には行かない、華麗にとは行かないが必死に身を躱す。
そのスピン力を活かして、初めての《落とし突き》!!
これは結構効いたみたい、相手の体力を一気に2割は削れたっぽい。これでペースは掴んだ、敵の反撃を丁寧にブロックしながら、俺は次なる機会を窺う。
大猪NMの体力が半減したからか、敵はしきりにショート突撃技を使うようになって来た。これがまた厄介で、突進前の退避行動で一度ならずこちらの攻撃をスカされてしまった。
こっちも、相手のチャージをスカし返してやったけど。
こちらも必殺技を得たと言う、心の余裕が意外と大きい。いざとなれば、多少の傷を負っても相討ち覚悟で特攻も出来る。さっきまでは、それが完全こちらの負け確定だったのだ。
その心の余裕が視野を広げたのか、妖精がまた何やら画策しているのを視界の隅でキャッチした。茂みの奥に、何やら苔むした大きな岩が鎮座していて。
そこに必死に、俺が野に放っていたポーション瓶を空中輸送している感じ。
なるほど、あの上に何とか駆け登れば、一時的にでも攻撃が届かないと言う塩梅か。大蛾NMが消えた今なら、作戦としては素晴らしいと思う。
それどころか、岩の上から一方的に攻撃……は難しいかな、弓矢とか使えるならまだしも。そんな事を考えている最中、ピーンとある作戦を閃いてしまった。
ぶっつけ本番だが、果たして上手く行くだろうか。
妖精の準備は整ったらしい、コッチ来てと必死なゼスチャーが何とも可愛らしいけど。作戦が上手く行けば、ポーション回復より先に、敵を始末出来ている計算だ。
怒り心頭モードの大猪NMは、こちらが背を向けて逃げ出すと、案の定牙をグッと懐に貯めてチャージモードに。さっきの内腿の大穴を思い出し、背中に冷や汗を掻く俺。
地響きと共に、俺の倍の体重の物体が突進して来た。
それをタイミング良く三角ジャンプで躱せたのは、本当に僥倖だった。大岩の丁度良い所に、足を乗せる出っ張りを咄嗟に見付けられたのが大きい。
哀れな敵NMは、俺の下方で自滅の大音響を立てている。俺はジャンプの勢いを利用して、真下の大猪に向けて二度目の《落とし突き》を敢行する。
体重を乗せたその必殺技は、見事に相手の皮と脂肪を突き破ったみたいで。
俺も少なくない衝突ダメージを喰らったけど、目論見通りに敵NMはそれ以上の被害を受け。って言うか、逆転勝ちのKO判定らしい……凄いな、重力って。
代わりと言ってはアレだけど、何と使ってた女王蜂の短槍が壊れてしまった。耐久値が一気に減ったらしい、真っ二つに折れてしまって修繕不可能っぽい。
まぁ、生き残れた事にはひたすら感謝と言う事で。
それよりも、何か色々と貰えたってアナウンスが煩いんですけどw