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ミックスブラッドオンライン  作者: 鳥井 雫
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レア種連戦と鯨モドキ




 今思えば、なかなか消えてくれないヒドラの死体もフラグだったのだろう。いつもなら一定時間で、粒子になって消えて行くのが定番だと言うのに。

 最初は再生持ちの敵だったから、ひょっとして蘇えりもアリなの? とか気張ってたけど、むしろそのお陰である程度離れていたのが良かったのかも。

 ソイツは突然、ヒドラの死体目掛けて天空から降って来たのだ。


 などと回想付きの今の状況は、言ってみれば最悪である。炎の神酒の副作用と言うか、アレ実はお酒だったのよね……別に意地悪な仕掛けじゃない、名前が既にお酒なのだから。

 ただし副作用は割と酷い、つまりは酔っ払い状態なのだ。


 いやはや、こんな体験は滅多に出来るモノじゃないな……前後不覚の頭クラクラ状態、そして甲高い鳴き声を発する、目の前のUMの“死肉喰らい”

 カオスである、一言で言うなら「やべっ!」ってな状況で間違い無い。


 割と破天荒な性格の田舎の祖父ちゃんも、さすがに中学生の頃の俺に晩酌の相手はさせなかった。だから今まで判明しなかったけど、実は俺ってお酒に弱い性質だったみたい。

 ってか、リアルで飲んだ事あっても無くっても、このバーチャ世界のBステータスは等しく酷い。つまりは前後不覚の酩酊状態、これが暫くの間続きそう。

 目の前にユニーク種がいるってのにね、どうしよう本当に?


 こうなった経緯をかいつまんで説明すると、問題は消えないヒドラの死骸と、その死骸からどうやっても取り離せない“呼び水”の存在だった。

 何度やっても『入手不可能です』の表示が出て、何だろうバグかなエラーかなと、ちょっと心配になって来て。色々試行錯誤していると、段々と神酒の副作用で酔いが回って来て。

 本当にいつの間にか呼び水を使用、そして出て来る新たなレア種!


 ……と言う、呼び水によって追加の敵をいつの間にか呼んじゃってました、テヘッ♪ 的な流れで、悪いのは俺じゃ無くて酔いのせいじゃね、みたいな?

 その名は“死肉喰らい”と言う、禿鷹みたいな容姿のモンスター。オレンジネームの巨体な体躯の、肉食鳥型のレア種ですな……ただしフォルムは飛行に適してる感じじゃないね、魔法生物と言うか合成キメラっぽいダーク感が溢れ出てます。

 飛んで攻撃が無いなら良いケド、纏ってる闇はかなり脅威かも?


 もっとも、今の最大の脅威は己の中のアルコール成分なんだけどねw ソイツは今、こちらを無視してお食事に夢中の様子……バリバリと食ってます、ヒドラの肉を。

 なるほど、見事に呼び水となった訳だ……あれでも死闘を繰り広げた仲、成仏してくれると良いんだけど。ってか、今のうちに戦闘準備、今度は単体の敵なので短槍に持ち替えて。

 そして酔い覚ましにマナポを一気飲み、連続戦闘は辛いデス!


 ってか、早く副作用よ消えてなくなれと、祈る様な気持ちは天には届かず。そして奴の興味は、次第に活きの良さ気なこちらへと移って来て……。

 お食事の邪魔はしませんよ、どうぞごゆっくり?


 いやいや、名前通りに死肉を喰ってれば良いジャン、俺はピチピチ生きてるよっ!? そんな言い訳は通用せず、甲高い鳴き声と共に襲い掛かるオレンジネーム。

 やっぱり飛行能力は薄いようだ、その代わり鈎爪は踵だけでなく翼にも付いている。やっぱり禿鷹ってよりキメラっぽい身体の造り、嘴もかなり凶悪だ。

 ただしその肉体は、武闘派と呼ぶには少し軟弱かも。


 思い切り闇を纏っているので、特殊能力は何かありそうだけどね。とにかく体力を削らないとどう仕様も無い、相手の接近前に何とか強化魔法を掛け終えて。

 いざ近接戦へと踏み込む、相手が巨体で助かった……酔っ払い状態でも、これなら何とか攻撃を当てられる。既に炎の神酒の効果は切れて、確か連続使用もバッテンだった筈。

 うぬぅっ、迎え酒作戦は認めて貰えずか。


 鈎爪と嘴が、バンバン身体に当たって来るのが痛い。何とか左手を上げてブロックするが、所詮は付け焼刃の修行さえしていない盾防御だったりするので。

 効果はイマイチ、補正スキルの《防御力10%up》だけでも充分有り難いんだけどね。本格的に伸ばすなら、攻撃の両手棍と防御寄りの短槍と、使い分けに意味が出て来るなぁ。

 うん、スキル振りを念頭に、盾防御の練習も雑魚戦で上達させたいね。


 現状は、とにかく必死に左手を掲げて抗うのみ。それに加えて右手の短槍での突き出しで相手の肉を抉りに掛かる。こちらの風の付与と、相手の闇防御が変に拮抗している気が。

 良く分からないが、つまりは通常ダメージはあまり思わしくない感じ。試しに《フラッシュ》を掛けてやったら、ダメージと共に表面の闇が剥がれて行った。

 そこを目掛けて《二段突き》をお見舞い、おっと高ダメージ!


 なるほど、そう言う仕掛けか……段々と酔いも覚めて来て、頭も何とか廻るようになって来た。その代わり、かなり削られていつの間にか体力が6割まで減っている。

 普通に打撃の強い敵だ、嘴と鍵爪の連撃が来ると小さな手甲ではとても支え切れない。それでも無いよりはマシ、相手の体力も7割にまで減っている。

 削り合いでは分が悪いが、逆転の目はまだある筈。


 まずは闇魔法の《Dタッチ》だけど、これは効き目が良くないな、うん。光属性が弱点なんだろうけど、それだと生憎ダメージ源は水晶玉しか無い事になる。

 《フラッシュ》を再び浴びせるが、ダメージはボチボチと言う感じでしかない。その代わり結構嫌がってる、時間稼ぎにはなりそうかな?

 そして闇の晴れた場所に、同じく《落とし突き》を喰らわせてと。


 ファーが再び、ポーション瓶の用意をしてくれてるのが視界の隅で確認出来た。本当に頼りになる相棒だ、後は駆け込むタイミングだな。

 二番煎じの戦術だが、こんなのはバラエティに富む必要など全く無い。欠点が見付からない限りは、同じやり方をひたすら踏襲すれば良いのだ。

 それで戦闘が楽になれば、プライドなどは安いモノ。


 ただし今回は、ちょっとだけ趣向を凝らす事にする。敵の弱点がこれだけ分かり易いのだ、それを突かない手は無い。本当は光系の攻撃魔法が欲しかったけど、無いモノは仕方が無い。

 その代用品が、鞄の中に入っている筈。


 《風の茨》と《フラッシュ》の連続使用は、そんな訳で完全に時間稼ぎへの布石である。それから反転、ファーの元へと猛ダッシュ。

 坂道の岩場を転げるように走り抜け、中くらいの岩の影に飛び込んで。慌てて鞄の中から“投擲セット”を取り出して、岩の影に隠すように置く。

 それからファーの用意してくれた、ポーション瓶を一気飲み!


「ファー、あいつの弱点は光だからな……この中に入ってる、頼んだぞっ!」


 相棒頼りの作戦だが、投擲セットの中から光の水晶玉を選り分けている暇が無いのだから仕方が無い。ファーはチリンと鈴でお返事、どうやら分かってくれた様子だ。

 怒り狂った死肉喰らいが、こちらへと雪崩れ込んで来る。翼を広げると、さっきの4本首ヒドラと負けない位の巨体に見える嫌な敵ではある。

 そしてその格好から、まさかの《フェザーシュート》の特殊技が!


 これは痛いっ、恐らくは範囲技なのだろうけど、威力も相当なモノである。それをモロに喰らってしまった、そのままの勢いで接近されて、更に急角度の嘴の突きがやって来た。

 それは辛うじて避けれたけど、急な斜面を5メートル位転げ落ちる破目に。既に虹色の果実の樹は、斜面の遥か上方となってしまっていた。

 それは良いけど、足場はどんどん悪くなっているのが辛い。


 下手に動けばまた転がり落ちるし、踏ん張りが利きにくいので打撃に勢いがつかない。相手が闇属性っぽいので、こちらの得意戦法の2つの闇魔法が封じられているのも地味に痛い。

 せめてアイツより斜面の上を取れればと思っていたら、それが炸裂した。相棒のアシストに違いない、ってか派手過ぎませんかファーさんっ!?

 光どころか、3種類くらいのブレンド水晶玉の炸裂音の凄まじさ。


 その勢いに押されて、やっぱり俺と同じく斜面を転がり落ちる死肉喰らいの巨体だったり。二足歩行はこんな時辛い、例え翼があってもダメージ付きの暴風には逆らえないみたい。

 これは風の水晶玉も含んでいるな、そして弱点を思い切り突かれて表面の闇が半分くらい霧散している感じ。羽ばたいて転倒を防ごうとしてるが、逆に翼にもダメージが入っている。

 悲惨だな……ってか恐ろしい娘、ファーさん!


 そこからは、終始こちらのペースで事は進んだ。目論見通りに斜面の上から勢いをつけた《落とし突き》を巨体の翼の根元に喰らわせてやって。

 これで相手は、羽ばたく事も不利を感じて逃げ出す事も不可能に。最後の《石化ブレス》にはビビったが、どうやらこの異常ステータスは万能薬で回避出来るらしい。

 マジで詰んだかと思った、万能薬の万能感は凄いですよ!


 半分横たわったままの敵のハイパー化も、全く怖くないままこちらも有利を手渡さず終盤戦へ。大技を喰らわない様に注意しつつ、何とか死肉喰らいの残りのHPを削り切り。

 そのミッションは程無く成功、今度こそ斃されて粒子となって消えて行くオレンジネームのレア種モンスター。いやいや、強敵2連戦は辛かった、スタミナも休憩分がパーだ。

 それでもドロップ報告にはニンマリ、ユニーク種だけに変なのが多いけど。


 まずはスキル2Pと闇の術書、ここら辺はまぁ普通だ。それから闇魔法《影縛り》と『闇の羽根飾り』と言う妙な装備品が1つ。

 闇魔法が拘束系だとしたら、《風の茨》と被っちゃうなぁ。ちょっと微妙だが、装備の闇の羽根飾りの方は凄かった。何と装備すれば闇耐性と闇魔法威力が上昇するみたい。

 ただし防御力とかは無いみたい、本当に飾り装備だ。


 ひょっとして素材なのかも、そして初出の『冒険者の心得:初級』ってのが1冊。それから死肉喰らいの生肉と、ヒドラの生肉が一塊ずつ……。

 食材らしいけど、あんまり食したくは無いなw そう言えば、冒険スキル『野生』の効果で、生肉を食べても平気な身体になってるんだっけ?

 料理によっては、一定時間ステupとか普通に付くって話は聞いてるけど。


 生肉にもそれがあるかは不明、そして冒険者の心得:初級はその冒険スキルの強化素材らしい。例えは『野生』の効果は生肉が平気で、ステの筋力と敏捷値が上がり易くなると言うモノ。

 その効果を、心得本で高めて行けるみたいである。悪くないね、今もステの上昇振りは普通に嬉しい訳だけど。新しい効果とかも芽生えるのかな、それだと上げて行く意味もあるのかも。

 冒険スキルも奥が深いね、これだけでもアバターに強烈な個性が付きそうな。


 どれに使うかは取り敢えず後回し、戦いで消耗した体力やスタミナを回復しないとね。虹色の果実をファーに回収して貰って、安全そうな海辺の空き地まで一時退避する。

 落ち着けそうな場所を確保して、もちろん魔除けの香炉を使用。これで安全だ、ゆっくりと寛いで体力を回復出来る。そしてスタミナ回復に、保存食を取り出して。

 ファーには果実と生野菜のミックスジュースを作ってあげる。


 野菜は師匠の畑から貰った物だが、ファーは野菜にも好き嫌いは無い様子。混ぜ合せる野菜と果実の品には、真剣に悩んでいたけど。

 出来上がったジュースには、いたく満足の様子でこちらも一安心。さっきのドロップの生肉を見せたら、思いっ切り嫌な顔をされたけど。

 アレは無いらしい、ひょっとしたらそんなレア物でも無いのかも?




 とにかくそんな感じで休憩中、マップを開いたりフレンドリストを眺めての時間潰し。マップ埋めは今日に限って言えばそこまでの進展は無い。

 せいぜい東南の端っこが、明確に表記された程度だ。


 フレンドリストに関しては、琴音の他に京悟と美樹也の名前が新たに加わって賑やかに。その内に2人の妹達も載せたいが、まぁ直接逢った時でも別に良いし。

 そんなに急ぐ案件で無いのは確か、京悟と美樹也に関してもイン時間が違うので、直接質問の類いのメール交換も出来ない。2人は割と夜中派らしい、その時間帯はPK連中もも活発になって来るそうで。

 そんなスリルを、丸ごと体感中なのだとか?


 そう言えば、誠也からも申請が来てたんだっけ……忘れない内に返しておかないと、学校で怒られてしまう。そう言う怠慢に関しては、環や奈美を含めた女性陣にも怒られる。

 一番怒られるのが、グループ内では何故か俺が圧倒的に多い。そんなに一般学生に完璧を求められても、とても無理だと言う事が分かって無いなぁ。

 その反面、妹達は俺の行動にはとても大らかではある。


 男兄弟がいないと、同学年の男子に理想を求めてしまうのかも知れないな。そんな完璧な人間なんていないと言ってるのに、琴音まで加わってとにかく口煩くて敵わない。

 そんなんじゃ、彼氏が出来た時に苦労するぞと忠告したら。揃ってムキになって、口撃されてしまった……絶対の真理だと思うんだけどな、夢見る女性陣には不評だったみたい。

 それはまぁいいや、リアル世界の事は置いといてと。


 レア種との連戦で、武器防具の消耗も結構ヤバい。さすがに今は耐久値5以下とかの貧弱装備は卒業したが、それでも装備が壊れた時のトホホ感は二度と味わいたくはない。

 だからと言って、薬品補給と修繕の為に安全地帯に寄るのもちょっとって感じ。今日のこの後の予定は、師匠に合成を習う事だけとは言え。

 南の端から中央の安全地帯まで、片道15分は掛かってしまうからなぁ。


 この後戦闘の予定も無いし、今日一日は余程の事が無い限りは持つ筈だ。明日はきっと寄ろう、忘れない様に心のメモ用紙に記入してと。

 自己修理出来る技術かアイテムがあればいいんだけど、今の所縁が無い様子。探せばありそうな気もするんだけどなぁ、本当に不便で仕方が無い。

 師匠の隠れ家にもそれ系の道具は置いて無いし、本当に困ったモノである。



そんな事を考えつつ、周囲の景色を何となく観察してみる。南に続く断崖を整備した小道は、確かに何か所かの崖崩れで通れなくなっていた。

頑張れば通れそうだが、万一海に落下したら道に戻って来るのはほぼ絶望的だろう。そこまでしてこのルートに賭ける意味は、まぁ薄い様な気もするけど。

 ましてや戦闘しながらだと、西の断崖ルート並みに危険だと思う。


 遠くの海原に、プカーっと何か黒くて大きな物体が浮いていた。どうやら鯨らしい、生の鯨なんて初めて見たよ! ってここはバーチャ世界だっけ、それでも興奮した俺は「お~い!」とか手を振りながら叫んじゃったりして。

 ファーもそれに反応、杖の鈴をチリンチリンと鳴らして鯨を呼び寄せようとしてくれる。いやいや、ただの雰囲気で呼び掛けただけで別に用事なんて無いから!w

 いやでも、背中に乗っけてくれるならそれでエリア脱出とかアリなのか?


 いや無いな、この後は師匠の合成授業と決まっているのだから。こちらの都合で連絡無くキャンセルとか、そんな無責任な真似などしたくはない。

 それより海の景色を眺めていたら、子供の頃に日帰りで遊びに行った、旅行先の海での出来事を思い出してしまった。あれは小学生だったか、確か琴音の家族も一緒だった筈。

 妹達は、多分初の海遊びだったと記憶している。


 まぁ、子供達のテンションは総じて高かった。ただし海水に浸かって泳ぐのは、割と不評だった覚えがある。その結果、夕方まで子供達で揃って磯遊びに興じて。

 俺が見付けた不思議生物(イソギンチャク)が、殊の外子供達の心にクリティカルヒット。これを掘り出して、何故か家か学校で飼育しようと言う話になって。

 掘り出している最中に、その悲劇は起きたのだった。


 既に水着から普段着に着替えてのお遊びの最中、お出掛け用の洋服に着替えていた琴音に対して。引っこ抜こうとした俺のアクションに、イソギンチャクは潮噴きで対抗して。

 大惨事である、まぁ掛かったのはただの塩水なんだけど。琴音は激オコだし母親には叱られるし、暫く俺の株は大暴落を見せたのだった。

 末妹の杏月だけは、ひたすらその不思議生物に興奮していたけど。


 小学校の高学年になると、田舎の祖父に連れられて海釣りにも良く行ったモノだ。祖父の田舎は山の中なのだが、車を飛ばせばほんの10分程度で海に出るのだ。

 農作業用のバンに子供達が乗り込んで、山を下って人気のほとんど無い絶好の釣りポイントへ。もう戻れない夏の思い出、どちらも父親と母親の生きていた頃の出来事。

 そんな感傷に浸っていると、不意に声を掛けられた。


「呼んだ?」

「……はいっ?」


 鯨だった、それはもう巨大な体躯を海面からせり出している。そうでもしないと、この断崖の小道にある空き地に視線が届かないのだろうけど。

 呆然としている俺を尻目に、ファーが陽気に挨拶をしている。鈴付きの杖を振り回し、お洒落に飾られた自分の手製の巣を自慢している様子。

 俺が作った奴だけど、今では更に進化している逸品だ。


 何せ光り物まで飾られてるからな、蛙の王冠とか色々、ファーが気に入って自分の物にしてしまってるからw 俺も特に抗議はしない、だって大切な相棒だもの。

 少々の我が儘は、鷹揚に対応してあげなくちゃ。


 ってか、鯨モドキにはそれで通用しているらしく、ちゃんと会話らしきものが成立している。見ていて面白いが、そろそろ誤解を解いておかないと不味いかも?

 俺は決してこの鯨モドキに用など無いし、ファーも自慢話しかしていない様子w ちょっとカオスだが、そもそも喋れる事からしてコイツも精霊の類いなのかも知れない。

 つまりは鴉モドキの仲間だ、あまり失礼だと何をされるか分からない。


「……えっと、済みませんけど、さっきのはノリで叫んでしまっただけでして。特に用も無いのに、わざわざお越し頂いて誠に申し訳なく……えっ、ファーさんどこに行くって?」

「うん、お嬢ちゃんの居城を自慢されたから、ボクの竜宮城も見て貰わないとね。背中に乗ってくれないかな、ちょっと海の中を進むけど心配は無用だから」

「……はいっ?」


 そこからは何が何やらな展開だった、乗り気なファーに急かされて彼女の大事な居城を鞄の中に仕舞い込んで。2人して巨大な鯨モドキの背中に移動、そして動き出す黒い影。

 凄いな俺、鯨の背中に乗ってるよ!


 恐らくは海の精霊に、竜宮城なる居城へと招待されちゃうらしい。どんな場所なのだろう、気分は浦島太郎さんだけど、心境はとっても複雑怪奇でしか無いと言うね。

 ってか、ファーの付き人扱いの方が強い気もするけど。いいのかそれで、歓迎されるなら別段行くのも悪くは無いと思うけど……海の中かぁ。

 とか考えている内に、鯨モドキは潜水を始めた模様。


「それで竜宮城なんだけど……ハードコースで良い?」





 ――はいっ?





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