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ミックスブラッドオンライン  作者: 鳥井 雫
40/73

自分の分身と戦う




 意外と減っていたスタミナを、持っていた保存食で適当に補完しつつ。敵影の無くなった水色の部屋で、簡易休憩など挟んでみたり。

 この部屋に設置された扉は、入って来たのと反対側にもう1つ出口があるのみ。水の神殿ダンジョンは、分岐無しの簡単な造りらしい。

 有り難いよね、迷う必要が無いってのは。


 こっちは時間制限があるしね、あと40分程度だろうか。弓矢の練習で1時間、フィールドから安全地帯の往復で1時間ちょっと、そしてこの水の神殿で約1時間。

 このダンジョン、めぼしい報酬こそ無いが経験値はたくさん貰えている。もうすぐレベルが上がりそう、今日2度目のアップで次は16だな。

 ……転職しないで良いのだろうか、ちょっと不安だ。


 琴音もまだ転職はしてないみたいで、その辺の相談も余りしてないかな。自由にやって良いのだろう、所詮は補正的な名目でしか無いとか言ってたしなぁ。

 この『始まりの森』にいたら、そもそも転職自体が不可能だし。虹色の果実は目標の数をクリアしたけど、弓矢の上達は未だ道半ばである。

 得難い師匠とも出逢えたし、もう少しこの地で頑張る所存。



 短い休憩で、何とか体力と魔力と、ついでにスタミナは回復してくれた。それじゃあ探索を続けよう、ファーも元気に空中を飛んでいる。

次こそボス部屋かな、心の準備をしておかないとね。


 ところが扉を開けてみると、今度は長い通路がお目見えして。神殿の形状に良く似合う、幅の広い柱が等間隔に左右対称に並んでいる。

 そして敵の姿もあちこちに散見していて、戦闘無しの通り抜けはちょっと無理そう。例の前衛カエルと魔法カエルのセットも、見える範囲で3組ほど巡回している。

 柱の側の植え込みは、変な蔦植物がウネウネと蠢いてるし。その側には水路が長く続いていて、つまりは蔦に捕まると色々と厄介なのかも。

 その水路には大イモリが潜伏中、どこもかしこも敵だらけだ。


 さっきみたいな集団戦は懲り懲り、例え今回は床の上でこちらに地形は有利と言えどもだ。扉前に陣取って、俺はおもむろに弓矢を取り出して構える。

 専門用語で“釣り”って言うらしい、師匠はもっと凄いけど。あの人は罠の設置も得意なので、釣った相手を罠に嵌めるとかお手の物!

 最終的に殴るのは、本当に止めを刺す時だけとかプロですやん!


 何のプロかはさておいて、俺のはそれ程に上手くは出来ない。単純に、一度にたくさんの敵とは戦いたくないための戦法である。

 最終的には師匠並みに知恵と策謀を駆使して戦いたいけど、今はそんな技も知識も無いので無理。とにかくまずは、近くの大イモリに攻撃を仕掛ける。

 幸先良く矢の一撃は命中、怒って水中から這い上がり向かって来るモンスター。


 アクティブじゃ無いにしても、ドロップは気になるし万一囲まれたら厄介だから倒すに限る。コイツは尻尾と噛み付き技、それから水の強化魔法のルーティン戦法かな。

 ダンジョン補正があって、そこそこに強敵ではあるけれど。しかも《粘膜》って特殊技で、突き攻撃が滑ってダメージが入らなくなると言う。

 仕方ない、さっき拾った蛙のハンマーを使ってみるか。


 ……って、凄いなコレ! ハンマーの重みで、軌道さえこっちで修正してやれば強烈な一撃が敵に吸い込まれて行く。ちょっと病み付きになりそう、ダメージも上々だし。

 動きの悪い敵には、これは良い武器を得たかも知れない。次は魔法カエルで試し……おっと、前衛ちゃんも付いて来ましたか。やっぱりセットなのね、薄々感付いてたけど。

 関係ないぜと、振り降ろしからの《撃ち上げ花火》を敢行!


 うっひょー、これは凄いかも。さっき苦戦した蛙の全後衛コンビが、雨上りのアスファルトの惨劇のよう、ペチャンコ蛙が量産されちゃってますw

 コイツ等に限っては、打撃を跳ね返す能力は持っていないみたい。大きい奴だけなのね、ってか行った先からその巨大ガマガエルが柱の影から出現。

 1匹だけか、それなら弓矢で釣って倒しちゃおうか。


 斃した結果、この通路のモンスター達はドロップがショボイ事が判明。さっきの部屋のフィーバー振りが嘘みたい、それでも木の蔦だけはとても美味しかった。

 何故ならコイツ、根を張って動けないタイプの敵らしいのだ。遠隔攻撃を使えば、ずっとこちらのターンと言うね。弓矢の練習とばかりに、一方的にこれを撃破して。

 ドロップも珍しく、初見の頑丈な木の蔦をゲット。



 半分も進むと、変な予感が脳裏を掠め始めて来た。このままではボス戦を前に、レベルが上がってしまいそう。通路の両端には、入り口でも見た椿の木が並んでいる。

 とても綺麗なんだけど、雑魚でレベルアップはあんまり美しくは無いかな。いや、椿は綺麗なんだけどね、ポトリと落ちた花が水路に浮かんでいる情景なんて特に。

 雅と言うか風流ですな、大輪の花の潔さよ。


 地域とか時代によっては、それが首切りを連想させて不吉と言うらしいけど。実用的でもあるらしく、この木の種子から油も取れるっぽいね?

 それはさておき、いよいよ通路は踏破完了っと。



 名前:ヤスケ   初心者Lv16   種族:ミックスB


筋力 31(+6) 体力 36     HP 152(+15)

器用 34(+2) 敏捷 32(+4) MP 124

知力 25     精神 24(-4) SP 109

幸運 18(+10)魅力 8(+1)  スタミナ**


職業(1):『新米冒険者』Lv16

武器(5):《ブン回し》《落とし突き》《撃ち上げ花火》《二段突き》《捻り突き》

補正(4):《投擲威力20%up》《防御力10%up》《》《》

冒険(3):『野生』『』『』

武器:弓矢2P

  :短剣1P

  :短槍12P《落とし突き》《捻り突き》《二段突き》

  :片手棍1P

  :両手棍8P《ブン回し》《撃ち上げ花火》

  :盾4P《防御力10%up》

  :投擲5P《投擲威力20%up》

魔法:『闇』8P《Dタッチ》《バグB》

  :『風』12P《風の茨》《風属性付与》《風疾り》

  :『光』4フラッシュ

  :『水』9P《清き水》《水中呼吸》

  :『炎』4P《キャノンB》

  :『雷』4スパーク

種族:『ミックスB』(幸運+2、魅力-1)

称号:『蝶舞』『猪突』

モネー:98、400

スキルP:9



 ***『新米冒険者』ヤスケ 装備一覧***


武器 :海賊の短槍(6)  攻+10

武器2:蛙のハンマー(10)  攻+12、水耐性+20%up

予備 :研ぎ直した粗末な石斧(3)  攻+4(投擲可)

盾  :甲殻の手甲(4)  防+4

頭  :質素な帽子(5)  防+4

上着 :丈夫なベスト(8)  防+7

鎧  :護衛の胸当て(6)  防+6、器用+2

下着 :クールな下着(5)  防+1、耐寒+20%up

アクセ:幸運の御守り(2)  防+1、幸運+2

指輪1:耐魔の指輪(2)  耐魔20%

指輪2:契約の指輪(-)  従者+3

腕  :野生の腕輪(4)  防+3、筋力+6、敏捷+2

ベルト:革の幅広ベルト(7)  防+5、ポーチ×4

下肢 :疾風のズボン(8)  防+7、敏捷+2

靴  :蛙のブーツ(8)  防+6、水耐性+30%up

背中 :海賊のマント(8)  防+7、敵対+2、魅力-2

従者:妖精Lv1  幸運+6、魅力+4、精神-4

鞄:魔法の鞄(初心者用)+商人の鞄

アイテム:ポーション(大)×2、ポーション(中)×7、ポーション(小)×18

:マナポ(中)×5、マナポ×12、毒消し×6、マナP×8、Sポ×7

:ポーションP×4、万能薬×2、炎の神酒×3、蜂蜜ジュース×3

    :土の術書、潤いの蜂蜜×7、闇の秘酒×3、聖水×6、薬品箱

    :虹色の果実×5、魔石(小)×9、魔石(中)×2、経験の飴玉×2

    :料理キット、冒険者セット、蟷螂の大鎌、護衛の腕輪、枝切り鋏

    :緋色の頭巾、闇の眼帯、護りの腕輪、海賊の大斧、調味料

    :魔除けの香炉、金のメダル×6、松脂1瓶、野生の手斧、蛙の王笏

    :巨大な大腿骨、幽霊の呼び水、大猪の牙の短槍、海賊のサーベル

    :闇の契約書、探索のコンパス、飛竜の血、闇蝙蝠の牙、闇蝙蝠の皮膜

    :旅人のマント、護衛の刀、庭師のエプロン、《四段突き》《秋波斬り》

    :護衛の弓、護衛の盾、『隠密』『交友』『地図形成』野生のサーベル

    :初心冒険者の服・帽子・杖セット、魔法の腐葉土、銀葉樹の苗木

    :壊れやすい鉢、魔水連の球根×8、淡い水瓶、大猪の毛皮、水のマント

    :森狼の毛皮、風の牙、時の狭間の香木×5、骨工ギルドの推薦状

    :奇妙な頭蓋骨、野蛮な大腿骨、三色珊瑚、白い甲羅、豹柄のマスク

    :『妖精使い』『精霊下請け人』『蝶舞軽戦士』『猪突戦士』『水中適正』

    :蛙の歌笛×7、翡翠の指輪、翡翠の飾り、頑丈な木の蔦

    :憩いの香木×2《マナプール》



 てへっ、上がっちゃった……とうとうレベル16ですな、感慨深いと言うか何と言うか。何かもう引き返しても良い気分、経験値的には非常に美味しかったし。

 でもまだ放置している宝箱とか、どこかにあるかも知れない訳だしねぇ。進もうかな、ボス戦を前に強くなって望めるって考え方もあるよね。

 それにしても、荷物がまた増えたな。


 スキルPも順調に増えてくれて、全く嬉しい限りである。次は何を伸ばそうかな、ってか『投擲』スキルが勝手に1P伸びてくれてます。

 そんなに使った覚えはないけど、考えたらさっきの部屋でも水晶玉をポイポイと投げてたなぁ。そのせいだとしたら、コスト的には納得出来る気もする。

 水晶玉の売値なんて、全く知らないとしてもだ。


 使い捨てだけど、それなりには高価なんだろうね。まだ無くなる気配はないから、集団の敵が出て来たら躊躇なく使うけど。

 他は取り立てて、報告するような変更点は無し。新魔法の《水中呼吸》も《スパーク》も、無いよりはあった方が嬉しいし安心出来るって感じかな。

 さて、それじゃあ扉を開けますよ?




 そこは見た目からして、最終部屋に相違なかった。半分は水の張られた水路で、もう半分は乾いた床パネルにくっきりと二分されていて。

 壁の形も凹凸が多くて、その1つが壁に隠し部屋のような窪みを作っていた。そこに宝箱が見て取れて、我知らず気分は高揚して行く。

 ただし、宝箱との間は滝の流れで遮断されていて。


 水に濡れないと取るのは不可能だな、そして部屋の高い場所にも宝箱は置かれていた。壁の凹凸を上手に登って行けば、取れる仕組みらしいんだけど。

 天井までは建物の3階分程度の高さ、落ちたら相当痛そうではある。


 ってか、この部屋に限って敵の姿が全く見当たらないのが逆に不気味なんですけど? 宝箱取り放題ですか、そしてこの部屋のどこにも次の部屋への扉は無し。

 どうやって戻るんだろうか、隈なく探しても入った扉以外は出入り口らしき場所は見当たらない。う~ん、参ったな……取り敢えずは宝箱の中身を回収して次の手を悩もうか。

 まずは滝の奥に透けて見える、扉の反対側の奴からかな。


 そのポイントの前に立って、初めて妙な点に気付いてしまった。滝の真正面の地面に、人間の両足のマークがくっきりと描かれている。

 そして何故だか突破出来ない、ただの落水の筈の滝……アレッ、何で通れないんだろう? まるで壁のように、水のバリアがこちらの行く手を邪魔してくれちゃって。

 何か仕掛けがあるとしたら、この足の裏のマークしかないよね?


 モノは試しだ、きちんと足を揃えてそのマークの上に立ってみる。てっきり滝の流れが止まってくれる仕掛けかなと、こちらの推測は大外れ。

 滝は段々と鏡のように、こちらの姿を映し込んで来た。徐々にその精度は上がって来て、いつしかもう一人の俺のアバターが目の前に出現して。

 手に持つ蛙のハンマーを、いきなり振りかぶって来た!


 その一撃を、モロに浴びてしまったのは仕方のない事。だって、両足があのマークにくっ付いたまま、動いてくれないと言う極悪仕様。

酷いなこの仕掛け、しかももう一人の俺は本当にこちらの戦闘能力をコピーしているっぽい。そら来た《ブン回し》の範囲技、ってか相手は俺一人ですけど?

 どうやらコイツ、そんなに頭は良くないらしい。


 それなら遣り様はあるかな、コイツの名前は“ドッペルゲンガー”と言うらしい。こちらは短槍にチェンジしますよ、餅つき大会などやってられるかって話だ。

 しかし追撃がしつこいな、こっちは最初の攻撃で態勢を崩したままだってのに。それなら喰らえ《フラッシュ》……あれっ、思いの外効いてらっしゃる?

 ひょっとしてコイツ、闇属性だったりするのかな?


 とは言え、こちらの光魔法は今の1発のみなので余り関係ないけどね。まずは強化魔法だ、敵の怯んだ隙に《炎テンション》と《風属性付与》を相次いで掛けて行く。

 そして体勢を整えて、いざ反撃開始っとね。


 とにかく突く、装備の薄い場所を突きまくる。何しろ自分の分身だ、薄い箇所は嫌と言う程分かっている。ダメージは上々で、形勢は一気に逆転の雰囲気の中。

 ところが敵もそんなに甘くない、ってか姿かたちはモロに俺なんだけど。いきなり見慣れないモーションから《(パワー)ハンマー》と言う両手棍の大技を繰り出して来た。

 手甲で受け損なった俺は、被害甚大の大ダメージ。


 ちょっと狡くないですか、だって俺のコピーの筈なのにこっちが持ってない技を出すなんて。いや確かに油断していたこちらも悪いけど、あんな不意打ちってアリ!?

 ってか、いきなり3割もHPを持って行かれたこちらの身にもなって下さいましっ……うわっ、強化魔法も使うんですね、よ~しこっちも今から本気出す!

 いやマジで、早目に倒さないとこの敵マジでヤバいっ!!


 とか思いつつ、今度は《Dタッチ》で体力のカツアゲを試みてみたり。あんまり効いて無い風なのは、やはりコイツが闇属性だから?

 ってか《猪突》って特殊技はナニ? いきなり突進して来ての体当たり、詠唱終わりを狙われたっぽい。派手に弾き飛ばされて、危うく水路に頭からダイブする破目に。

 敵の体力はまた7割以上、コイツ予想以上に強いな。


 再び突進して来るドッペルの足に突技、更に中腰になっての《二段突き》で巻き返しを計りつつ。《バグB》で再び属性のお伺い、駄目だやっぱりそんなに効いて無い。

 う~ん、属性付与付きの短槍でそれなりに削れているとは言え、体力自慢の敵には弱点を突かないと大変だな。一つ勉強になりました、まだ全然終わってないけどね。

 今は持ってるカードで、全力で相手をするのみだ。


 何気に長期戦になりそうな雰囲気、こちらは再び《フラッシュ》からの念の為の《水中呼吸》を掛けておいてと。今気付いたけど、ここの水路は結構深い……。

 戦場では、ちょっとしたミスや状況判断ミスが命取りとなるのだ。そして地形を甘く見ていれば、いきなり流れが変わってしまう事にもなりかねない。

 それにしてもドッペル君は、光魔法が本当に苦手っぽい。


 そんなに嫌がられては、こちらも是非とも使いたくなっちゃうなw ところがお怒りの俺の分身、いきなり闇魔法の《(バースト)タッチ》と言う大技を披露。

 これもオリジナルの持っていない魔法だ、まさに破裂(バースト)させられた俺は、呆気無く弾き飛ばされて水の中へドボン。《水中呼吸》、念の為に掛けておいて良かった。

 しかしダメージは甚大、体力は既に半減以下の有り様。


 さて、水中でも何故か一息つけると言うね……魔法って偉大だな、いや何事も使い方次第って事なのかな? ドッペル君の追撃は、水中にまで及んで来る様子は無し。

 ふむぅ、それなら回復でも挟んでみようかな? 例えば水中で、ポーション瓶を口に運ぶ事は可能なのか?w 莫迦バカし過ぎて、きっと誰もチャレンジしていない筈。

 そうっと口元で蓋を開いて、くいっと唇に瓶の飲み口を運んで。


 おおっと、ステ画面を見る限りでは、ちゃんと回復しているみたい。これは大発見だなぁ、水面では何やらドッペル君が騒がしくしてる様だけど。

 関係の無い俺は、2本目行っちゃいますか! おっと、今のはハンマーの先っぽですか。底にいる俺には、全く衝撃は届いて来ないけどね。

 さてと、そろそろ戻らないとファーが心配してしまう。


 飛び出る場所を慎重に選んで、華麗に水上へと復活……とはならなかった、なにせ水は透明でこちらの動きは丸見えだったからw

 それでも連撃は許さずに、さっき見て覚えた特殊技のモーションも見逃さず。とにかく大技は喰らわない方針、そしてこちらは短槍でチマチマと削って行って。

 時折大技の《二段突き》で、なるべく装備の薄い場所を抉ってやる。


 上空からはファーの応援が凄い、そう言えば敵のコピー野郎には妖精の付属品がいないな。それだけでも俺の勝ちだ、ってかこれから勝利に邁進して掴み取る気満々だけど。

 敵の体力はようやく半減、そしてやって来たハイパー化。やっぱり俺の完全な分身と言うより、魔物が俺のアバターの姿をパクッたと言う認識で良いみたい。

 その証拠に、ドッペル君はハイパー化からの酷い技を繰り出して来た。


 《呪い呪詛》と言う、あの死の商人も使っていたモロ闇系の呪い技だ。これを喰らって、俺はトラウマ級の悲惨な体験を背負い込む破目に。

 もちろん今回も、避ける間もなく自由を奪われる俺のアバター。これってソロで対面したら、完全に詰んでしまうパターンなんじゃ?

 だけど俺には、劣化コピー野郎と違って頼れる相棒がいる!


 それはすぐに証明された、空中からの聖水散布……って痛い、瓶まで落とさないでファーさん! いやいや、悪かった……さすがに妖精のちっちゃなナリでは、宙で瓶の固定は難しいよね。

 さらに相棒、何を思ったか2瓶目をドッペル君目掛けて振り撒きに掛かっている。そしてそれが物凄い効果、なんと火傷した様に苦しみもがく俺の分身。

 浴びた場所からは煙を発して、悪霊退散的なこのシチュエーション。


 もちろんこの好機を逃す手は無い、突進しつつの《落とし突き》を体当たり気味に見舞ってやって。さらに敵が怯んでいる隙に、こちらも手持ちの聖水をプレゼント♪

 あとはイケイケ、何だこんな分かり易い弱点があったとは。


 ファー様サマだなぁ、ってか今気付いたけど敵はNMだったみたい。無事に討伐は終了、そして貰えるスキル4P。他のドロップも秀逸、思わずファーとハイタッチの運びに。

 まずはドッペル君のドロップ報酬は、風の術書と闇の術書、両手棍スキル《Pハンマー》に闇魔法《Bタッチ》とまぁ凄い並び。更に『投擲セット』に魔石(中)に風の水晶玉×4個。

 オマケに『混血の書』と言う、良く分からない本が1冊。


 何だろうね、コレ。一応琴音に訊くとして、スクショ撮っておこうかな。投擲セットは、水晶玉が全種類1個ずつ入っていて、他にもダーツ的な投擲武器がお得にセットされていた。

 ダーツの攻撃力の平均が5とかだから、手持ちの手斧より優秀って事になる。これはもっと、投擲スキルを伸ばせってお告げかな?

 いやしかし、盾スキルとかも伸ばしたいしなぁ……。


 他にも宝箱×2の回収も、何とか無事にすませてご満悦。高台に設置されてた小さい方は、なかなかにスリリングな気分にさせてくれたけどね。

 おまけに鍵が掛かっていて、高い場所で一瞬目眩に襲われたけど。何とファーが覗き込んだかと思ったら、彼女の指導で解錠に成功すると言う快挙を達成。

 数分掛かったけどね、お陰でお宝ゲットの内容が増えました♪


 その小さな宝箱からは、『霧の呼び笛』と『皆伝の書:冒険』と『硬質な木板』と言う見慣れないアイテムばかりを回収出来た。皆伝の書:冒険は冒険スキルのスロット+1だったっけ。

 恐らくは大当たりの部類だろう、残りの2つはお助けアイテムと素材みたいだけど。霧の呼び笛は3回だけ使用可能の、霧を周囲に呼び出せる魔笛らしい。

 使い場所によっては、凄く効果的なのかも知れないね。


 硬質な木板は木材で間違いない、割と大きな木切れだから、色々と使えると思う。何が良いかな、盾とか家具とか……硬質って言うくらいだから、割と高価な素材っぽい。

 師匠に見せたら、何か知恵を貸してくれないかなぁ?


 最後に滝の向こうにあった、一番大きな宝箱の結果発表。これも凄かった、何しろ『宝珠:水魔法《Pヒール》』が入っていたのだ。使えば水魔法スキルも、余裕で10超えである。

 凄いね、他では両手剣の水切りの剣と金のメダル、水妖の呼び水と装備品の清水の指輪。両手剣は強いけど、自分にはスキル無し。指輪は毒状態緩和と、ヒール効果アップが付いていた。

 両手剣はともかく、指輪は何気に良いかも。


 あとはお金が5000モネーと、ポーション系の薬品が少々。経験値だけは良かったこのダンジョン、最後にドロップ品の帳尻も合わせてくれてニヤケ顔が止まらない。

 イン時間の限界が迫っているので、脱出の事も考えないといけないんだけど。いつの間にやら、さっき戦闘中に落っこちた水路に謎のゴンドラが浮かんでいて。

 近付くと、そこに転移用の魔方陣が。





 ――お帰りはこちららしい、至れり尽くせりの水の神殿訪問だったり。






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