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地球から追放されたけど、お土産付きで帰ってきます。  作者: 火曜日の風
2章 地球激闘編
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20話 走馬燈で夜巳がえる記憶 その2


 暗闇が晴れるが、まだ辺りは薄暗い。無数に生息している木に囲まられた地形、そこにひときわ大きな木が見える。その木の根元に和服姿をした男性が横たわっていた。

 視線が自然に拡大していき、その男子の近くまで来た。その男性は怪我をしており、胸から血を流していた。


 この顔は・・・俺だな、この場面は記憶にないが・・・・

 さらに周囲をよく見ると、男性の上に黒い塊が浮かんでいた。

 あれは・・・ガイルアだな。何故ここに?


「よう死神さん。連れて行くなら急いでもらえないか? 痛くてかなわん」

 (‥‥…お主は、なぜ戦う? 同族同士で殺しあっても楽しくなかろう? )


「人にしか分からない答えがあるんだよ。まぁ、死神には解らんだろうな」

 (‥‥…人にしか分からないのか? お主を吸収しても答えが得られぬと? )


「何言っていってやがる、ところで俺は地獄行きなのか? そうだろうな・・・」


 俺らしき男性は、閉じかけの目で黒い塊を見ながら、ゆっくりと目を閉じた。


 (‥‥…お主の体、頂こう。お主の答え、人にしか分からぬ答えを見てやろう)


 重く響く声と共に、黒い塊は揺らめきながら、男性の口からゆっくりと入っていく。全てが体に入っていったとき、閉じていた目がゆっくり開いた。体が浮き上がり立ち上がると、つま先から地面にゆっくりと降り立った。


「これが、体か・・・純粋に人の生活になじむには・・・・そうだな…

 我が記憶を封じ、我が気配も隠そう。

 何時までにするか? この体を死なせる事が出来る者が現れるまで、意識を閉じるとしよう」


 心地いいな・・・自分が何であるか、思い出してきた。


 落ち葉を踏みしめ歩く音が聞こえた、足音の方を振り向く。そこには着物姿の女性が立っていた。身長は低いが、この時代なら標準的だ。身なりもかなり上質の着物で、帯には花の模様が施されている。


 ここから先は・・・思い出した、たしか・・・


「人ならざる気配を感じましたが、貴方がそれを退治したのですか?」

「なぜかな、何も思い出せん」


 男は膝の力が抜けたのか、膝が折れ地面に大きな音を立てて突き刺さる。首が曲がり地面に倒れる様だ、しかし側の女性が男の方に飛びつき支える。


「目を覚まして! 立てますか?」

「ああ・・・すまない」

「私の家まで来てください。手当をします」


 俺の意識は、2人が歩いている後姿を見ていた。追いかけようと動き出したが、2人に追いつくどころか、徐々に離れていき辺りは暗くなった。


 ……

 …


 完全な暗闇から話し声が聞こえた、声のする方に意識を向ける。

 辺りが明るくなり、俺の姿と先程の女性が会話をしていた。


「兼次、私は・・・」

「それ以上は言うな、来月に婿が来るんだろ? 白井家の子はお前一人、武家の娘なら相手を選べないのは当然だ。それに、相手は平家の筋の者だろ? 安泰だな、夜巳」


「でも私は、それでも貴方を・・・」


 そう言いかけた夜巳を、俺の姿をした男が人差し指を夜巳の口に当てた。


「半年も世話になったな、記憶は戻らなかったが、楽しく過ごせたよ。

 感謝の気持ちだ・・・」


 もし俺の事を、死しても尚、思い続ける事が出来たのなら、会いに来るがいい。

 予見と転生の力を授けよう、俺の記憶が戻った時、今言えない言葉を言おう」


 俺の姿をした男は、夜巳に近づくと抱きしめ、オデコに口づけをした。

 上から見る俺の姿、セリフも含めて恥ずかしいな・・・


 やっと全て思い出した。夜巳に転生の力を与えたのは俺だ、すると走馬燈に出てきた男は夜巳か? と言う事は、今のセクハラ夜巳は俺の影響を受けた? のか・・・・


 意識だけのはずなのに、現実ではないはずの記憶の断片なのに、背中に温かみを感じた。

 ・・・背中に砂の熱気を感じる、息を吸うと口の中を通る空気を感じる、目を開けると雲一つない空が飛び込んできた。


 視線を移動し周辺を確認する、空にはガイルアが浮かんでいる。後方を見ると麻衣が倒れておる、腹部から血を流し、その場所を左手で押さえている。胸部の上下で呼吸しているのが確認できた、気を失っている様だが生きている。


 記憶が戻った、死にかけた事によって、自分自身で封じていた記憶が甦った。

 正確にはこの体の中にいる、本体の記憶とこの体で生きた千年の記憶が重なり合った。

 俺は体を宙に浮かし、立ち上がる。同時に右手を上げて、ガイルアに向けた。


「同士よ、この惑星は俺の縄張りだ。引き下がってもらおう」

 (‥‥…根拠はあるのか? 確かに我と同じ力を持っておるが)


 気絶する前に聞いた、頭に響く重い念話だが、今は重く感じない。念話の使える能力者と、話している時と同じ感覚だ、つまり、あれと同格になったと言う訳だな。


 俺の体に宿る、本物の俺。上げている手から、陰影の無い黒いエネルギーが飛び出す。


「俺の記録に触れるがいい。俺がこの惑星に3万年前から居る事実が、分かるはずだ」


 空に浮かぶガイルアから、一筋の黒い線が下りてきた、それは俺の本体に接触する。

 時間にして1秒もない、しかし我々にとっては十分な時間だ、一瞬で情報を読み取れる。


 (‥‥…確かに、お主が先にこの地に降り立っているな。占有権は、お主にあるな。

 わかった、引き下がろう。同士と交流するのは、久方ぶりだった、面白かったぞ。)


 空の黒い塊は徐々に小さくなっていく、ひとつの点になると気配と共に消えていった。


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