訪ねてきた幸せ ②
訪ねてきた幸せのシオンSidの話です。①の話を読まなくても分かります。
お母さんが死んだ。
共同墓地の片隅に埋められた。
横には三年前に死んだお父さんのお墓。
「可哀想に……」
「あんなに若いのに……」
「噂じゃ貴族のお姫様だって……」
「別嬪さんだったよね……」
「駆け落ちしたらしいよ……」
「旦那が死んで酒浸りになって……」
「旦那は三年前に亡くなったんだろ……」
「でも……旦那……なんか可笑しかったよね……」
「十年前にカルメンに手紙を頼んで……荒れてたよな……」
「それから……狂ったようにダンジョンに潜って……」
「ほとんどソロだったよな……ダンジョンでソロなんて自殺行為もいいところさ」
「でも……稼ぎは……家に入れてたよ……」
「ほとんど家に寄り付かず、金だけ入れてたよな……」
「子供を残して……」
「あの子どうするの?」
「やっと九歳になったばっかりだろ」
「親戚は?」
「王都に旦那の兄弟が居るはずだ……」
「王都?」
「随分遠いな……」
近所の人達がぼそぼそと話している。
「シオン……」
ボレアス神官がそっと僕の肩に触れる。
この人は近所の精霊教会の人で何かと気を使ってくれた。
信頼できる人だ。
「君の親戚が王都にいるらしい。丁度私も王都に帰る事になった。一緒に王都に行こう」
「はい……よろしく……お願いします……」
かすれた声で僕はそう答えた。
「旅の準備をしょう」
ボレアス神官と僕は町の外れに在る家に向かった。
「あれ……ドアが開いてる?」
僕は駆け出した。
「待ちなさい!! シオン!!」
神官様の制止を振り切りドアを開ける。
家の中に入ると室内は荒らされて、男たちがバタバタと目ぼしい物を漁っていた。
「止めて!! お母さんのドレスをどうするんだ!! かえせ!! 泥棒!!」
僕はドレスを持った男に掴み掛かった。
「五月蠅い!!」
男は僕を蹴飛ばした。
「ううっ……」
僕は床に転がり呻いた。
「お前の母親が私達に借金をしていたんだ!! 全く碌なもんがないな!! ここに来たときは金目の物をたんまり持っていたのに。酒に変えて皆飲んじまったか!!」
「旦那~子供部屋も碌なもんが無いですぜ」
「くっ……仕方ない……ん?……お前なかなか可愛い顔をしているじゃないか。変体貴族が喜びそうだな」
男は僕の腕を掴んだ。
「近頃の金貸しは奴隷商人も兼ねているのか? 因みに子供の奴隷は違法だぞ!!」
ボレアス神官はギリギリと凄い力で金貸しの男の手首を掴む。
ボレアス神官が男から僕を引き剝がしてくれた。
「つぅ……なんて力だ……冗談だよ神官様」
男は唸り手下に引き上げるように言う。
「たく、大損だ」
お母さんの部屋は何もなく床に日記と手紙が二・三散らばっているだけだった。
僕はそれを拾い自分の部屋に向かう。
子供部屋も荒らされていた。
調べたって碌なものが無いのに。
僕はわずかな衣服と日記と手紙を壊れた鞄に仕舞い、鞄を紐で縛る。
「支度が出来ました」
「もういいのかい?」
「はい」
ボレアス神官と家を出る。
家を出る時、僕はぺこりとお辞儀をした。
さようなら。
僕が生まれ育った小さな家。
台所とお母さんと僕の部屋しかなく雨漏りするけど大好きだった。
白い壁に赤い屋根の家。
お母さんは赤い色が嫌いだったけど。
僕は好きだった。
だって食べられて美味しい実は大抵赤い色をしているから。
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「ああ……お父さんが死んだのも秋だった」
誰もいない部屋でポツリと言葉が零れる。
ここは教会の神官見習が使う、ベットしかない狭い部屋だ。
多分神官様が気を利かせてくれたんだ。
一人で泣いてもいいように。
お父さんはダンジョンで死んだ。
三年前だ。
お母さんと二人でお父さんのお墓の前に佇んでいた。
「なんで? なんで? こんな事になったのよ……」
「お母さん?」
「いつかは私の事を振り向いてくれると思ったのに……駄目なの……私じゃお姉様の代わりに成れないの? お父様もお母様も……お姉様の事ばかり……」
泣きながら泣きながらお父さんのお墓の前でそう呟いていた。
「お母さん風が出てきたよ。寒くなってきたよ。もう帰ろう」
僕はお母さんの手を引いて家に帰る。
辺りは暗く。門の所には墓守のおじいさんが居て、僕らが出るのを待っていた。
共同墓地の門は、僕らが出ていくと直ぐに閉ざされた。
まるでお父さんと僕たちの関係みたいだ。
テーブルの上には数本の空になったお酒の瓶。
酔いつぶれているお母さんを揺する。
「お母さん。お酒あんまり飲んじゃ駄目だよ。ほらパンを買って来たんだ。これを食べて」
僕が近所の人のお手伝いや子守や手紙の配達のお駄賃で買ったパンだ。
「五月蠅い!! お前が居るから私はあの人を追って自殺出来ない!! お前が生まれてきたから、あの人に疎まれた!! お前さえ……お前さえ産まれてこなければ……」
お母さんは泣き出した。
「罪の証!! たった一度……たった一度の過ちなのに!! 何処まで苦しめるの?」
「お母さん?」
「いつまで苦しめばいいの? お姉様は私の事を何でも持っていると言ったけど……私には何もない……お姉様みたいに一目見ただけで全部記憶出来る頭も、手芸の腕も……演算能力も……あたしは厄介払いで侯爵家に嫁に出されるのに、出来のいいお姉様は手元に置かれ。お姉様には見目麗しく優しいベルツ様が宛がわれるのに……私にはイボガエル!! おまけに性格悪いし。王の愛人。直ぐに飽きられて公衆便所じゃない!! 社交界でまともに相手にされなくなる」
お母様は空の酒瓶を掴むと壁に投げつけた。
「ははは……結局娼婦になるのが運命だったのね……」
高笑いしながら泣き崩れるお母さんをただただ抱きしめるしかなかった。
「僕がいるよ。お母さんの側にずっといるよ。お父さんの代わりにずっと側にいるよ」
「お母さん。森でワイルド・ストロベリーを積んできたよ。甘くて美味しいよ」
僕は籠に摘んだワイルド・ストロベリーを置いた。
「ワイルド・ストロベリー……シロバナへビイチゴ……」
「赤くて綺麗だよ」
バシイィィ!!
お母さんはテーブルからストロベリーを叩き落した。
「大嫌い!! お姉様の瞳ような赤い色!! 大嫌い!! 大嫌い!!」
お母さんは狂ったようにストロベリーを泣きながら踏み潰す。
僕はお母さんを見ているしかなかった。
お父さんはどんな人だったろう……
あまり覚えていない。
遊んでもらった記憶も無いし。
頭を撫でてもらった記憶も無い。
僕と同じ黒い髪だということは覚えている。
ただ時々ダンジョンから帰るとお金を置いて帰っていく。
僕が産まれる前は一緒に暮らしていたと近所のおばさんが言っていた。
「お父さん……どうして一緒に暮らさないの?」
僕がそう尋ねるとまるで焼いた鉄の棒を押し付けられた様に顔を歪めた。
なぜ?そんな顔をするの?
どうして笑ってくれないの?
お父さんは僕にお金を渡すと直ぐに出ていった。
まるで罪から逃れるように。
「シオン」
「あ……カルメンおばさんこんにちは」
「こんにちは。いい子だねシオンは。所であんたのお父さんは相変わらずダンジョンかい?」
「う……うん」
「そうかい。仕方が無い。冒険者ギルドに行ってみるか」
「お父さんに用事なの?」
「ああ。お父さんのお友達に手紙を頼まれてね」
「僕も行っていい?」
「ああ。いいよ。一緒に行こう」
カルメンおばさんと僕は手を繋いで冒険者ギルドに向かう。
カルメンおばさんは【ワイルド・ウオーキング】のリーダーで靴屋のトミーさんと結婚している。
ギルドは丁度ダンジョンから帰った人でごった返していた。
食事やお酒を飲んでいる人達。今が一番賑やかな時間帯だ。
僕が大人になったらこの人達と一緒にダンジョンを攻略しているんだろうか?
それとも別の仕事に就いているのかな?
「居ないね~暫く待ってみるかい。来ないようなら受付嬢に渡しておこうかね~」
ギルドの酒場のテーブルに座りお父さんを待つ。
「これでも飲んでな」
カルメンおばさんは僕にミルクを渡し自分はビールを飲む。
ありがとうと僕はお礼を言う。
「仕事終わりの一杯は最高だね~シオンが大人になったら一緒に飲もうね~」
「オイオイ。カルメンおばさん何年先の話をしているんだ?」
隣の席で酒を飲んでいた髭ずらの男が笑いながらカルメンおばさんに言う。
「五月蠅いね~髭は黙ってな。せっかく可愛い男の子と飲んでいるのに酒が不味くなるだろ!!」
「浮気かい? 旦那のトミーが泣くぞ!!」
「五月蠅い!! 黙らないとその髭引っこ抜くよ!!」
髭の冒険者とカルメンおばさんのやり取りを聞いて皆やんややんやと囃し立てる。
口は悪いが皆いい人だ。
人込みの中に見知った顔を見つける。
「あっ!! お父さん!!」
「シオン……?」
「ベルツこの前王都に行った時にあんたの友達に会ってね。手紙を頼まれたんだよ」
「友人? 誰だろう? すまない」
お父さんはカルメンおばさんから手紙を受け取った。
直ぐに懐に手紙を仕舞う。
「シオン。家まで送っていこう」
「うん」
お父さんに声をかけてもらって僕は嬉しかった。
例えカルメンおばさんや皆が居るから普通の親子の様に振舞っただけだとしても。
カルメンおばさんみたいに手は繋がなかった。
繋いでもらえなかった。
家が見える所まできたよ。
「シオン。さあお帰り」
「家に入らないの?」
お父さんは首を振る。
「お父さんは僕のことが嫌いなの?」
お父さんの顔がまた歪む。
ああ……僕はそんな顔をさせたい訳じゃない。
笑って欲しいだけなのに。
「お前が悪い訳じゃない」
じゃ誰が悪いの?
お父さんは帰って行った。
それが……お父さんを見た最後の姿だった。
お父さんが死んだ。
お母さんも死んだ。
僕は一人ぼっちだ。
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三日後
精霊教会の馬車が来た。
僕とボレアス神官様が乗り込んだ。
後に王都の本部に帰る絵描きさんが乗り込んできた。
「へ~王都の親戚の家に行くのかい?」
「はい。絵描きさんはどうして王都に行くの?」
「ああ。ここの絵の修復を頼まれたんだが、カビが酷くてね。王都に帰り特殊な液体を作らなくてはならなくなったんだ」
「魔法で直せないの? 絵描きさんも大変だね」
「ははは。魔法は万能じゃないよ。絵描きは割と肉体労働なんだよ」
「坊主は大人になったら何になるんだい?」
「ん~お父さんみたいに冒険者になるか。それとも……門番になるか……やっぱりまだ分からないや」
「この子はまだ九歳ですからね」
ボレアス神官が言う。
「随分と大人びてるからもう少し上かと思ったよ。手も足も大きいから背も伸びるだろう」
「僕大きくなれる? 誰かを守れるぐらい?」
「ああ。大きくなるよ。ボレアス神官さんを追い抜くぐらい」
「へへ……」
僕は嬉しくて笑った。
ボレアス神官は綺麗な顔をしているが、背も高く細マッチョだ。
僕的にはもう少し筋肉が欲しいな。
その笑顔を見てモデルを頼みたいなと絵描きは思った。
ボレアス神官が赴任する教会の場所を知っているし、後で尋ねてみよう。
後に彼はその時代の代表的な画家となり。
彼が描いた聖母子像が貴族の間でもてはやされるのは数年後の事である。
その絵のモデルが下町の親子であることは余り知られていない。
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「ここが王都」
「凄い人出だろう。私も王都に来たときは祭りでもあるのかと思ったよ」
「凄い……人ごみに酔いそうだ」
「取り敢えず私が務める教会に行こう」
「はい。ボレアス神官様」
ボレアス神官に連れられて僕はその教会に行った。
王都の外れにあるその教会は少々古ぼけていて。
孤児院も兼ねていて子供が幾人か中庭で遊んでいた。
一人の老神官が僕たちを出迎えた。
「お帰り。ボレアス神官。旅はどうだったね」
「只今帰りましたモリス神官長。雨も無く。順調でした。精霊のお導きですね」
「ふぉほほ。それは良かった。所でこの子は?」
「こんにちは」
僕はぺこりと頭を下げた。
「ダンジョン都市で孤児になりまして。親戚が王都にいるそうなんで連れてきました」
「王都にかね? 王都は広いよ。手掛かりはあるのかね?」
「父親の名前はベルツ・フォーレンと言うそうです」
「ベルツ・フォーレンじゃと!! 母親の名前は分かるか」
「エレクトラと言って何でも貴族の娘だとか……」
「何と言うことじゃ……」
「知っておられるのですか?」
「まあ、色々と……」
モリス神官はベルを鳴らすと若い女の子を呼んだ。
「ミミこの子にみんなと一緒に食事を取らせなさい」
「はい。モリス神官様。おいで。お腹が空いたでしょう。あっちでみんなと一緒にご飯にしましょうね」
僕はこくりと頷いた。
下女のミミさんは僕を食堂に連れて行ってくれた
「取り敢えずあの子の親戚に連れて行こうと思います」
「ふむ。そうじゃな。ダメだったらここで引き取ろう」
「? 何かあるんですか?」
「色々とな~。しかし十年経っている。怒りも収まっているかもしれん」
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次の日 僕はボレアス神官に連れられて親戚の家を尋ねた。
伯爵家は思っていたよりも大きいが何処か寂れた感じがした。
ベルを鳴らすとメイドが現れ。
僕たちは応接間に通された。
暫く待っていると。
「ベルツとエレクトラが死んだって!!」
ドアを開け厳めしい男が部屋に入ってきた。
僕とボレアス神官は挨拶をしようと立ち上がった。
黒髪で、目鼻立ちがお父さんに似ていた。
ああ。この人がお父さんのお兄さんなんだな。
シオンは血の繋がりを感じた。
だが……
「どこまで迷惑をかければ気がすむんだ!!」
ヨゼフは叫んだ。
「なんでその餓鬼をここに連れて来た!!」
投げつけられる言葉は否定。
「迷惑なんだよ!!」
ヨゼフは怒鳴りつける。
「貴族の結婚なんて政略結婚だ!! 真実の愛を見つけた!! 結構なことだな!!」
心が凍り付きそうだった。
ボレアス神官も呆然とヨゼフを見ている。
はっと気付きシオンを後ろに隠す。
「尻拭いをこっちに押し付けて!!」
溜息と共に言葉を吐き出す。
「ああ。そうだ。まだあの女が生きているはずだ。エレクトラの姉だ。メリッサ・ダナウェンの所に連れて行けばいい!! お人好しの馬鹿女なら引き取ってくれるさ」
もうこれ以上シオンをこの男の側に置いてはいけない!!
ボレアス神官はそのまま頭を下げた。
「分かりました。失礼します」
シオンはカバンを持つ。
「ああ。あの女なら下町の【ワイルド・ストロベリー】って言う店をやっている」
「そうですか。シオン。行くよ」
シオンは泣かなかった。
普通の子供なら泣き出しているだろう。
何処か諦めた眼差しでボレアス神官を見て謝る。
「すみません。嫌な思いをさせてしまって……」
痛いよ。痛いよ。
心が痛いよ。
ここでも僕は必要とされなかった。
ここでも僕は愛され無かった。
泣いちゃあ駄目だ。
泣いたら神官様を困らせる。
シオンはニッコリ笑う。
「メリッサ・ダナウェンさんの所に行きましょう」
冷たくなったシオンの手をボレアス神官がそっと握る。
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【ワイルド・ストロベリー】は割と有名な店で直ぐに見つかった。
だがもう店は閉められていた。
辺りはすっかり暗くなっている。
二階が居住区みたいだ階段を上がってベルを鳴らす。
「ハーイ」
鈴を鳴らすような若い女の人の声がしてドアが開く。
白い髪に赤い瞳。
お母さんが言っていた色だ。
でもお母さんはお姉さんが妖精みたいに綺麗な人だとは言ってなかった。
黒い服に赤いショールを纏っただけなのに彼女の美貌を引き立てる。
「ベルツ」
僕を見てメリッサさんは呟いた。
「あの……メリッサ・ダナウェンさんですか? 私はボレアスと言います」
妖精の様な彼女は僕たちを家の中に招き入れてくれた。
そして紅茶とミルクとクッキーを出してくれた。
「いただきなさい」
ボレアス神官に言われて僕はミルクとクッキーを食べる。
暖かい部屋。小さいが趣味のいい家具。可愛いクッション。
まるでお伽話に出てくる妖精の部屋みたいだ。
迂闊にも僕はウトウトしてしまった。
だってこんなにも居心地の良い部屋は初めてだから。
気が付いたら知らない部屋で眠っていた。
ここどこだろう?
起き上がりそっとドアを開け居間に向かう。
居間の暖炉の前に彼女はいた。じっと暖炉の炎を見ている。
手に薄い布を持っている。
なんだろう?
ああ……分かった。
花嫁のベールだ。
古い物で所々シミになっている。
彼女はベールを暖炉の中に放り込んだ。
炎が燃え上がりたちまちベールを灰にする。
それを見ていた彼女は美しく。
まるで教会のステンドグラスの聖女様の様に気高く。
僕は見惚れていた。
暫くして、僕はそっとその場を離れてベットにもぐりこんだ。
気が付いたら朝だった。
しまった!!
寝過ごしてしまった。
「おはようごはん出来ているわ」
白い髪が朝日を受けてキラキラ光る。
小さなテーブルの上に野菜スープとパンがホカホカと湯気を立てている。
僕はごくりと唾を飲み込む。
そう言えば昨日は晩御飯を食べずに眠ってしまった。
「ところで名前を聞いていなかったわね。私はメリッサ。君の名は?」
「シオン……です」
「そう。シオン。ご飯を食べたら教会に行くわね」
「は……い」
僕は精霊に感謝のお祈りをして食べた。
ああ……ご飯はとても温かくて美味しかった。
でも……
ここでも僕は要らない子供なんだ……
食事を終え皿を流しまで運ぶ。
メリッサが皿を洗って僕が皿を拭く。
食器棚に皿を仕舞い。
メリッサは手提げ袋を持ち、ショールを纏う。
お店の店員さんにメリッサは出かけると言って、三時までに帰ってこなかったら店を閉めてと言い残した。
僕たちは孤児院に着いた。
「ボレアス神官様はいらっしゃいますか?」
「ああ。メリッサよく来たね」
モリス神官が出てきた。メリッサを待っていたようだ。
「ご無沙汰しております。モリス神官様」
二人は知り合いのようだ。
「シオン、メリッサと話があるからそこの庭で子供達と遊んでいなさい」
僕は頷き子供達が遊んでいる方に行く。
今日から孤児院で暮らすのか。
そう思って歩いていると、子供達がやって来る。
「お前メリッサおばちゃんの甥なんだろ」
僕より少し小さい子供が尋ねた。
「ねぇねぇ。メリッサおばちゃんの子供になるの?」
お下げにした五歳ぐらいの女の子も尋ねる。
「馬鹿!! おばちゃんって言ったらダメだぞ。おばさんも禁句だ。お姉さんと言わないとダメだ」
「え~。おばちゃんはおばちゃんでしょ~」
「乙女心におばちゃんは突き刺さるそうだ。機嫌をそこねてクッキーの差し入れが無くなったらどうする!! ここは事実を捻じ曲げても媚を売るのが賢いやり方だ。お姉さんと言うんだぞ。処世術と言う奴だ」
ソバカスだらけの僕と同じぐらいの少年が偉そうに言う。
「難しい言葉を知っているんだね」
「俺絵本が読めるんだぜ。どうだ。凄いだろ」
「凄いね。僕は簡単な文字しか分からない」
「ふふん。今度読んでやるよ」
僕と彼は友達になった。
暫くみんなと一緒に遊んだ。
話が済んだのかメリッサがやって来た。
きっとサヨナラを言いに来たんだろ。
「シオンお話はすんだわ。帰るわよ」
「えっ?」
「僕は……孤児院に置いて行かれるんじゃないの?」
「いいえ。荷物は家に置いて来たでしょう」
メリッサは苦笑する。
「僕居てもいいの? 邪魔じゃないの?」
「私に貴方は必要だわ」
「ぼ……僕は……僕は……えっ……うえぇぇ……」
メリッサは優しく僕を抱きしめてくれる。
「さぁ帰りましょう」
何度も何度もシオンは頷いた。
「帰りにシオンの靴を買って帰りましょう。もうじき冬将軍が来るから、帽子とマフラーと手袋を編まなくっちゃ。服はお店の物でいいわね。シオン何色が好き?」
「メリッサの瞳の色の赤がいい。ワイルド・ストロベリーみたいに赤くて甘い。僕大好きなんだ」
僕の涙をメリッサは拭いて微笑んでくれた。
「良かったね。メリッサさんと暮らせて」
苦笑している皆にサヨナラを言って帰途につく。
僕たちは手を繋いで帰った。
ブーツを買って貰って宝物の様に大事そうに抱える。
玄関のドアを開け。
「ただいま~」
と元気に言う。
「お帰りなさい」
メリッサが答えてくれた。
笑いながら僕たちはドアを閉めた。
もう直ぐ冬将軍がやって来る。
でも大丈夫僕達の心は温かい。
どんな冬将軍にも負けない。
~ Fin ~
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登場人物紹介
★ シオン (9歳)
父親にも母親にも伯父さんにも愛されない子供。
彼が歪まなかったのは周りにいい大人がいたため。
★ メリッサ (27歳)
没落貴族。でも商才がありそこそこ儲けている。
シオンの伯母さん。
★ エレクトラ (享年26歳)
シオンの母親。アル中。三年前にベルツが死んでやけを起こし娼婦になり早死する。
美人なだけで他に取柄が無い為、姉にコンプレックスを持つ。
家計簿は付けない派。
★ ベルツ・フォーレン (享年27歳)
メリッサの婚約者。ダンジョンで死亡。
★ イサク・フォーレン (33歳)
ベルツの兄。シオンの伯父さん。
ベルツが駆け落ちしたせいで弟二人を失う。
★ カルメン (歳は乙女の秘密)
【ワイルド・ウオーキング】のリーダー。靴屋のトミーと結婚している。
世話焼きおばさんでエレクトラは口うるさいこの人が嫌いだった。
★ ボレアス神官 (30歳)
シオンを王都に連れて来た人。美形。細マッチョ。
★ モリス神官 (56歳)
メリッサを昔助けてくれた人。
★ 絵描きさん (?)
吾輩は絵描きである。名前はまだない。
作者は何も考えていない。
突然出てきたキャラクター。
うん。どうしょう。
後でメリッサ争奪戦に参加する。
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2018/6/1 『小説家になろう』 どんC
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最後までお読みいただきありがとうございます。




