某日、某所にて。
CoCセッションの“これは酷い”というシーン。
「では、コンビニです」
友人は、とあるTRPG内で、コンビニに立ち寄ると言い出した。
特に問題もないだろう。如月はそう考え、許可を出す。買い物は必須だから、という思考が次の瞬間には瓦解するとは彼自身想像だにしていなかった。
「幼女は居るか?」
「──ファッ!?」
「幼女は居るのか、と聞いているんだ」
「……え、えぇ?」
何をにやついているのか。如月は心の中で罵倒した。
かといって、目の前の友人──もとい性的倒錯者にそれが届くはずもない。
半ば強引に処理することにした。
「幸運で振ってみて」
「もう振った」
「話聞けよ! …………で、判定は?」
「1d100で、幸運12。スペシャルだ」
絶句するしかない。
サイコロを弄ったのではないかと思う出目の走りっぷりに如月は、開いた口が塞がらなかった。
──待て、このサイコロは私が用意したものだ。つまり、こいつが東京からナニかを連れてきているに違いない。
「……容姿16ぐらいの、美幼女がいるね。(スペシャルだし)お母さんは、ちょっと目を離してるかな。好きなアイドルのタペストリーがキャンペーンで置いてあって、穴が開くくらい見てる感じで」
「よし、順調」
「お前は何を言っているんだ……」
「では、『俺に着いてくるように』話し掛ける」
私はこの瞬間を忘れはしない。
五秒もの硬直。そして、友人の声で我に返る。
更に十秒悩み抜いた末に、私が出した処理がこれだった。
「あ~、えぇと……じゃあ信用に-10で振ってくれ」
「初期値で15もあったが、5%……ワンチャンあるな」
「お前実はバカなの? もういいよ、どや顔してないでさっさと振れ!」
「あ、1クリティカルだわ」
嘘だろお前……。
思わず素で漏らした言葉に、大笑する性的倒錯者。
逮捕エンドは避けさせようとした私の気配りも、最早バカ丸出しの所業にしか思えなかった。
「お、お前ぇええええ! なんで寄りにもよって誘拐しようとしてんの!? お前、キャラメイクの時なんて言った!?」
「下着泥やって留置所に居たと言ったな」
「アホかお前。本当に何と戦ってるんだ──いちいちイイ笑顔してんじゃねえよ!? ……どうして俺の周りは犯罪者を探索者にする奴ばかりなんだ」
こんなノリを引っ提げたまま、屋敷に突貫し、黒幕を打ち倒す彼だったが幼女の連絡先を知って酷くご満悦だったのは言うまでもない。
殺意を上げて尚、道中で傷ひとつ付けられず、クライマックスではファンブル連発するKP。
お助けNPCも大活躍し、特に苦もなくこのシナリオはエンディングを向かえるのだった。
後に彼はこう語る。
私の配慮と労力を返してほしい、と──。