無事に迎えた祝言と初夜
私と藤堂様の祝言は媒酌人を引き受けてくださったお館様の到着を待って執り行われました。祝言には丹羽様、木島様も来て下さり、酒などの祝いの品を頂きました。
「これでお前達は夫婦となった。清雅には約束通り、大崎の城をやる。あの辺りの領地の分配も変える事にした。この清野浜から大崎までをまとめてお前達の物にするから、ユーリアはその土地を使って砂糖の生産に励め、良いな」
「ありがとうございます。必ずご期待に沿えるよう精一杯努力致します」
いつもの事ですが、宴は深夜まで続きました。お館様は早々に城へ戻られ、丹羽様、木島様は城までの警護のため一緒に出て行かれました。お二人は私達の結婚を心から祝福してくださり、丹羽様にいたっては並んで座る私達を見て感無量といった感じで涙ぐんでおられました。
「清雅様とユーリア様は今夜は離れでお休み下さいませ。部屋にお酒の用意もしておりますから、お二人でお召し上がり下さい」
「そうか、では休ませてもらおう。ユーリア、来なさい」
「は、はい……」
寝衣に着替えた私達を置いて、ナタリーは襖を閉めて母屋に行ってしまいました。
離れには一組の布団が敷かれ、お酒も用意されていました。私は急に緊張し始め、何か話さなければと、目に入ったお酒を藤堂様に勧めます。
「あの、藤堂さま、お酒をどうぞ」
「ユーリア、いつまで私を藤堂様と呼ぶつもりだ」
少し不機嫌そうに言われ、夫婦になったのだし確かに藤堂様ではおかしいと思い、私は名前を呼んでみました。
「き……清雅様?」
「うむ、良いな、弟の事は名で呼ぶくせに、私の事はいつまで待っても名で呼ばぬから、少々気に食わなかった」
「それは初めてお会いした時からそう呼んでいましたし、どちらも藤堂様なのですもの。雅高様の方を名で呼ぶのは仕方がありません」
藤堂様……いえ、清雅様はまた不機嫌になってしまいました。
「今夜は私以外の男の名は口にするな」
「男って、雅高様は弟で……ひゃっ」
お酒は床にこぼれ、私は清雅様に押し倒されていました。
「今言ったばかりだ、弟だろうと今夜だけはその口からは聞きたくない。こんな事を言うと、嫉妬深くて嫌いになるか?」
「いいえ」
燭台の明かりが揺らめく薄暗い室内に、しばらく沈黙が流れました。
お互い見つめ合い、私はピクリとも動けずに藤堂様の纏う空気が変わるのを黙って見ていました。まるで獲物を見つけた飢えた獣のように、私を上から見下ろします。
「そんなに怯えなくても、取って食いはしない。と言いたいところだが、すまない、優しく出来そうにない」
そう言って清雅様は食らい付く様に私の唇を奪い、腰紐に手をかけあっという間に解いてしまうと自分の腰紐も解き、寝衣を脱ぎました。着物の上からでは分からなかった引き締まった筋肉質な体には無数の切り傷があり、私は無意識に手を伸ばしその傷に触れ、なぞりました。清雅様はピクリと体を震わせ、私の寝衣を剥ぎ取ると息を呑みました。
「ユーリア、お前を愛している」
清雅様はそう呟いて唇を重ね、この夜激しく私を愛して下さいました。触れ合った肌から彼のぬくもりを感じ、私は今までに味わった事の無い幸福感に満たされました。
物語の終わりも近付きました。もう少しお付き合い下さい。




